
おやじパンクス、恋をする。#188
俺は聞いた。何にせよ、確かめたいのはそこだ。
「ええ、大丈夫よ。お通夜でもしっかりしてたし」
彼女はあっさりと言った。何も心配してない、そんな顔だった。俺はホッとした。
大丈夫なら、いいんだ。そうか、よかった。
「けど、じゃああいつ、何でこっちこねえんだよ」
俺らの会話を聞いてたカズが言って、「そうだよなあ」とボンが同意する。
「つうかよ、あいつら梶商事の社員だろ。随分のんびりしたご登場じゃねえか」
さっきもそんなこと言ってた涼介がしつこく言う。
「仕事してきたんじゃねえのかな。今日、平日だし」とタカが言って、いやまあ確かに平日だけどよ、社長の葬式くれえ遅れず来るだろ、つうか会社休みにするだろ。
「バカなこと言ってんじゃねえよ」って俺は笑ったんだが、あれ? 彼女はなんでか真顔で俺を見つめると、小さくため息をついた。
「え? マジでそうなの?」
カズが驚いた顔で聞くと、彼女は頷いた。
「まあ、新事業の大事な時期だからね、数時間でも外出許可が出たのに驚くくらいよ」
「おいおい、どんだけ仕事好きなんだよ、あいつら」カズが呆れたように言う。
「そういえば、あの出目金野郎もいねえな」涼介が言う。
「出目金野郎って誰だよ」とタカ。
「嵯峨野だよ」
この小説について
千葉市でBARを経営する40代でモヒカン頭の「俺」と、20年来のつきあいであるおっさんパンクバンドのメンバーたちが織りなす、ゆるゆるパンクス小説です。目次はコチラ。