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【岐阜地区】藍染めから生まれる自然への愛
ろうきん森の学校岐阜地区は、NPO法人グリーンウッドワーク協会が事務局となり、生木を加工する木工=グリーンウッドワークの普及に取り組んでいる。
今回は、生木ではなく、生草(せいそう)=生藍を使った草木染め(藍染め)の体験が行われると聞き、どのような様子か取材した。
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講師を務めるのはグリーンウッドワーク協会スタッフの、椿由加理さん。
「ののはな草木染アカデミー」で草木染めを学び、2023年にはののはな草木アカデミーでインストラクターの資格を取得。これまでろうきん森の学校の活動で、桜やどんぐりを使った草木染め講座を行っている。
参加者は岐阜県内にとどまらず、千葉県や長野県などから10名が参加した。
最初に椿さんから草木染めについてのミニレクチャーが行われた。
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・草木染めは植物などを煮出した天然の染料で染める染色技法。
・日本に合成染料が海外から導入されたのは150年ほど前。
・現在使われている「草木染」という言葉は今から90年ほど前に文学者の山崎斌(あきら)氏が命名した。
・色素には水に溶ける「染料」と、水に溶けない「顔料」がある。
・生地には植物繊維(綿・麻・レーヨン)と、動物繊維(シルク・ウール)がある。
・動物繊維はタンパク質でできており、デリケートで熱に弱い。
確かにウール素材は洗濯の際に気を遣うが、こうした科学的な理由があるのだ。歴史や化学の授業のようで、ちょっと懐かしい感じだ。
草木染めの基本的な仕組みを理解した上で、いよいよ藍染め体験がスタートした。午前中は「藍の生葉染め」と呼ばれる、蓼藍(タデアイ)の葉を使った藍染めを体験した。まず、グリーンウッドワーク協会で栽培しているタデアイをプランターから採取し、以下の工程で作業を行った。
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①予め染める素材(シルク)をぬるま湯で洗い不純物を取っておく。
②葉だけを摘み取り50℃くらいのぬるま湯と共にミキサーで粉砕して染液を作る。
③生地を染液に浸し、2-3分揉み込んで染める。
④生地が青く染まったら軽く絞り引き上げて空気にさらし酸化させる。
⑤③と④の行程を繰り返し、好みの濃さになったら水でよく洗う。
⑥陰干しをして完成。光に当たらないように保管する。
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緑色だった染液にシルクの生地を浸し、引き上げるうちに徐々に生地が白色から青色に変わっていく様子に、参加者から驚きの声が上がった。また、敢えて染めない白地を残すことで、白から青へのグラデーションを表現することも。
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午後からはインド藍(市販の天然藍濃縮液)を使った藍染めを体験した。
酸化還元反応で染まるため、還元剤を入れた水に天然藍濃縮液を入れ染液を用意し、そこにぬるま湯で洗って不純物を除いた生地を浸して染めた。持参したシャツやマイバッグを染めようとする参加者も多く、染め上がりを楽しみにしているようだ。布を重ねたり、部分染めをするなどして、染め上がりに模様をつける試みにチャレンジした。
生藍染めと違って、よりクッキリと藍色に染まっていく実演の様子を目の当たりにして、参加者の染め上がりへの期待が高まっていった。
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ここでグリーンウッドワーク協会理事長の小野さんが、ちょっとした実験を。以前キハダ材で作ったククサ(木製のカップ)を染めてみようと、染液に浸したところ、なんと緑色に染まり「まるでメロンのようだ!」と思わずニッコリ。生木の加工と藍染めを組み合わせたプログラムの可能性が見えてきたかもしれない。
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次から次へと染め上がっていく作品と共に、参加者の満足げで充実した笑顔が印象的だった。
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最後に椿さんから、
「日本の藍染めの特徴は、藍を発酵させることで不純物が混ざりやすく、それがかえって深みがある複雑な色を生みだすと言われています。草木染めの大家である、山崎青樹さんは『草木染の色は生きている。藍は空気の中での酸化によって定着する。何年も何十年も息をしつづけている』と言っています。今日染めた藍も生きているので長く大切に使っていってほしい。」と、藍染めへの愛が語られた。
参加者からは
・生藍染めは初めてで、やさしい色だと感じた。藍(愛)に染まり幸せだった。
・藍染めはハードルが高いと思っていたが、自分の想像以上に簡単にできて楽しかった。
・これまでドングリ、サクラと草木染め講座に参加してきた。今回、緑の生藍葉から青色が染まり、自然の恵みはすごいなと感動した。
といった感想が聞かれた。
終了後、参加者の勝島直美さんに感想を伺った。
勝島さんは2023年3月に行われたろうきん森の学校での桜の草木染め講座に参加しており、藍染めも以前体験したことがあるという。藍の色が大好きで、今回も藍染めのTシャツを着て参加している。
「同じ染液を使っても、みんな染め上がりが違うのが面白いですね。『みんな違って、みんないい』かな(笑)。ばきちゃん(椿さん)が、こうしたらいいよと丁寧に教えてくれて、自分が思っている以上の作品が完成できてうれしいです。」
自分の手で染めたシルクのストールを首にかけ、嬉しそうに話す勝島さん。
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「生藍染めは自然の素材だけ、薬品を使わずにあんなにやさしい色に染まるのがいいな。もっと難しいと思っていたけど、自分でもタデアイを育てているので、生藍染めをやってみようと思いました。葉っぱをお茶にしたりもしているんですよ。今日は乾燥させた葉を入れたシフォンケーキを差し入れで持ってきました。」
「藍染めとの出会いは『藍染めってなんだろう』という素朴な疑問があり、郡上市の石徹白(いとしろ)洋品店で藍染の作品に出会ったのが最初で、今から3年くらい前かな。だんだんわかってきたようで、でも新たな発見もたくさんあります。また、薬を飲むことを『内服』と言いますよね。これは体の中に薬効成分を入れることを指しますが、反対に『外服』という言葉もあるんです。この言葉には、藍などに含まれている薬効成分が服を着ることで得られるという意味があるそうです。藍染めって奥深いですよね。藍を着ていると怪我の治りが早いそうですよ。」
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藍にまつわる話は尽きない。
「草木染めは不思議だし、奥深い。そこが魅力的ですね。」
草木染めは体験して終わるのではなく、体験してその魅力に気づき、自ら取り組みやすい活動だ。緑の藍の葉からは想像できない鮮やかな青色が、目の前で染め上がっていく様子は、参加者を藍の虜に染め上げていった。
暮らしの中に手作りのものを取り入れるグリーンウッドワーク。大がかりな機械を使わず、森にあるものから必要最小限いただいて人力で加工するのが特徴だ。今回の草木染めは意外に手軽にでき、衣服だけでなく木製品も染められることがわかった。
グリーンウッドワーク協会の小野さん、椿さんの『森にあるものを楽しみながら、その恵みをいただいて暮らしに活かす』姿勢が、今回の藍染めの参加者の中にも少しずつ、でも着実に広がっているのを実感した。
「衣食住」を暮らしの基本とするなら、今回の「衣」に続いて、森の恵みを活かした「食」や「住」の新しいプログラムが楽しみだ。
報告者:大武圭介(NPO法人ホールアース自然学校)