アパートでの国際会議が、夢の始まりだった。
「イェス!俺の勝ちだ!全員、飲め〜〜!」
【第一幕】 宴会
それは、もう30数年前のこと。
当時大学2年生だったGenZeeは、長屋のような平屋のアパートに暮らしていた。(家賃1万円のぼろアパートの前)
その隣の部屋には引っ越してきたばかりのアメリカからの留学生、ブライアンが住んでいた。GenZeeよりも2つ年上だ。
その彼の部屋に集まった留学生らとゲームで遊んでいた。
時間はもう深夜過ぎ。何だったか忘れたが、簡単なゲームをして、勝った者以外が全員飲む、という、学生にありがちな、要は酒の強さを競う飲み会。
勝ったブライアンが、既にベロベロになってる皆に、ビールを飲ませる。
ゲームが延々と続き、部屋は足の踏み場が無くなる程、ビール瓶で埋まっていた。そんな部屋に集まっていたのは、6ヵ国から7人。狭い部屋にぎゅう詰め。その面々は正にその国を代表する個性派揃い。
🇺🇸アメリカ代表
底抜けに陽気、何でも一番になりたがり屋
🇵🇱ポーランド代表
普段は物静かな美女だが、ウォッカで豹変
🇬🇧イギリス代表
すぐに政治の話に持ち込む、気取り屋コンビ
🇫🇷フランス代表
冗談が通じないが、たまにくすっとウケる
🇩🇰デンマーク代表
ビール最高!お国のビールの話を延々とする
🇯🇵日本代表のGenZee
シラフだとシャイだが、酒が入るとよく喋る
ロクに英語が話せないGenZeeも、隣人だからという理由で、半ば強制的にその輪の中に加わっていた。
その頃のGenZeeは、一般的な日本人と同じで、英語の文法や発音を気にして、当初はなかなか自分からは話せなかった。
が、深夜の飲み会、羞恥心などとっくに無くなっている。その晩は、最後まで狂ったように楽しい宴会に、日本代表として宴会を大いに盛り上げたのだった。。
それを機に、ブランアンの部屋には、毎週のように、入れ替わり立ち替わり、色んな国から留学生が訪れ、国際会議=飲み会が開かれる。そこにはGenZeeも日本人一人、招かれる。そんな週末の宴の雰囲気に、どんどん染まっていったのだった。
「Gen!、お前は酒を飲むと、オレらと話せるな!もっと飲め〜!」と、ブランアンにはよく茶化されたものだ。
あ〜、なんて楽しいんだ。
色んな国の友人ができるって、楽しい!♪
そう思ったものだ。
楽しい留学生たちとの交流は、その後半年続いたが、その大学で受講していた半年間の日本語研修が終わると、皆、日本各地の大学に留学していってしまった。
ブライアンも引っ越してしまったが、その後も定期的にお互い行き来して近況報告する、二人っきりの会だけは続けた。
【第二幕】 別れ
「またどこかで会おうな!」
それから数年後のある日。
既にブライアンはとあるコンサル企業でバリバリ働いていた。GenZeeは社会人2年目。とあるプロジェクトにハマっている頃だった。
彼から呼び出され、東京のとあるバーで、ウィスキーを飲んでいた。
その彼が言う、
「Gen、オレ、バルセロナオリンピック見たいから、スペインに行くよ!会社辞めるよ!」
「えぇぇ!?そんなんで会社辞めちゃうの?」
「そういうことだから、また世界のどこかで会おうな!」
ところが。
スペインの後はどこに行ったのか?携帯電話などないあの時代。結局それ以来、連絡先が分からず、ブランアンとは連絡が途絶えてしまった・・。
【第三幕】 再会
「久しぶり〜〜!!」
それから20年程経っていた。GenZeeは、某世界最大手のIT企業でバリバリにグローバルのリーダーをしていた。
ある日、ふと思い出した。そういえば、ブライアン、どぉしてるんだろう?今の時代、もしや、SNSで見つけれるかな?
そう思って、検索してみると、、同姓同名が30人ほどはいただろうか。
・・・それぞれのプロフィールを読んでみる・・・
「いた!」
それらしいプロフィールですぐに分かった。
昔と違い、すぐにメッセンジャーで連絡を取り、スカイプを始めた。
「マジ〜!ゲ~ン!どぉしてた!」
「ブライアン〜!元気だぞ〜〜!」
「ゲンは今どこにいる〜?」
「オレはまだ日本だ〜。お前はどこだ?」
「オレはニューヨークだ〜。サンパウロとロンドンに家があるぞ〜。今度日本にも行くぞ〜!」
その後すぐ、20年ぶりに日本で再会し、六本木のイタリアンレストランで、ワインで20年ぶりの再会を乾杯した。
聞けば、彼は事業家として成功し、いくつもの会社の役員を務め、世界中を飛び回っていた。
その日を機に、お互いネット上でしっかりと繋がったので、定期的に連絡を取り合い、彼のハワイのマンションに訪れるなど、家族ぐるみで付き合うようになった。
【第四幕】 祝い
「おめでとう!!」
彼の50歳の誕生日。青山の広いパーティールームで、彼の日本の友人たちが大勢集まり、めでたい日を盛大にシャンパンで祝っていた。
そこにGenZeeも呼ばれており、ブライアンがその場の皆に紹介する。
「Genは、この部屋の中でイチバーン古い、日本で最初のトモダチだぞ〜!」
今、どんな仕事をしているか、じゃなく、最初のトモダチ、として紹介してくれたことが嬉しかった♪
【第五幕】 独り
コロナのせいで、もうしばらく、ブライアンとは飲めていない。
ふと思った。
そういえば、もしや、あの楽しいアパートでの宴会が、大学4年生の頃のぼんやりした夢、「世界を飛び回るビジネスパーソンになりたい」、の原点だったのでは?
その後、必死で英語を勉強し、外資系でも務まるくらいになった。
ある時から、ビジネスの国際会議に、日本代表として参加していた。
現在も、コロナ前まで、世界中を仕事の出張で飛び回ってきた。
あの時以来、世界中の様々な人と交流したい、世界の中の日本を感じたい、架け橋になりたい、そう思って走ってきたのかも。
あ〜、あの時の ”アパートでの国際会議” が、夢の始まりだったんだな。。
今は、あの頃とは違う、広々とした高層マンション自宅の一室。
独りで、あの日と同じビールを味わう。
う〜ん、美味い!♪
ブライアンとは、またいつか、世界のどこかの国で、きっと会える。
・・・おわり・・・
以上、老兵の『実戦!キャリアアップ ノート』 "回顧録" でした。
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