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アサカツ 実践編

2010年12月5日発行 ロウドウジンVol.1 所収

トップ画像はWhite House Flickr Feedより、ディスプレイの中で繰り広げられる痴態の祭典を固唾を飲んで見つめる反社会人たち(イメージ)


――某日朝六時、都内某所にて。

@noir_k(以下、大文字小文字は気にせずに「N」)「おはようございます。本日はこんな早い時間から『アサカツ』の実践のためにお集まりいただき、ありがとうございます」

@Nerd_Arthur(以下、当然のように頭文字をとって「N」)「おはようございます。ぼくは普段から朝早いのでそんなにですが」

@2tar(以下、はてなIDは「nitar」なので「N」)「……この時間だったら築地市場にでも行った方が有益なんじゃない? まあいいや」

N「ごめんなさいね。自分も眠いです(笑)。Nズのみなさん、あらためまして、おはようございます。というわけで、本日は『アサカツ』と称しまして、いわゆる読書会のようなものを開催させていただきます。とはいっても、取り上げる作品は文章ではなくて映像になるのですが」

N「『アサカツ』? 『朝カル』(朝日カルチャーセンターの略)のダジャレ?」

N「違う違う。朝の活動の略みたい。そこからのダジャレで朝に座禅を組んで渇を入れてもらうという二つの意味での『アサカツ』なあんてのもあるらしいけど」

N「まあわかりました。では具体的に今から何を?」

N「今日取り上げる題材は、二〇一〇年で最も売れた書籍である岩崎夏海さんの『もしドラ』、そのパロディAVである『もし高校野球の女子マネージャーがみんな健気な『ヤリマン』だったら』です」

N「AVかよ(笑)。いやいや、表記としては『AV(笑)かよ(笑)』」

N「どうでも良いけど、岩崎夏海ってかわいい名前でごまかされてるけど、おっさんだよね」

N「放送作家のひとだっけ?」

N「そうそう。秋元康の系列の。だから『もしドラ』の表紙だったり主人公のモデルがAKB48の峯岸みなみなんじゃないの?」

N「正確には放送作家『だった』らしいですね。現在は作家みたいです。だからAKB48については確証はないんじゃないかな。ちなみにはてなダイアラーで、『もしドラ』もはてなダイアリーで書いていた内容を編集者が発掘して書籍につながったとか」

N「へえ。じゃぼくたちと一緒ですね」

N「はてなダイアラーってとこだけですけど(笑)」

――まずはジャケット画像をお披露目。

画像1

(左)原作 (右)AV版

N「……ジャケットの再現度は高いですね」

N「確かに。女の子の再現度もだけど、背景の再現度すごいね。特徴的な水門も『完全に一致』てな具合だけど、いわゆる『聖地巡礼』なのかな?」

N「そもそも『もしドラ』の表紙ってモデルがあるのかな?」

N「これだけ巨大で観音開き(?)の真っ赤な水門なんて珍しいですよね。モデルありそう」

N「少し調べてみただけなので信憑性はわからないのですが、どうやら多摩川らしいです」

N「かなりボカシた加工されてるからなぁ。AVの方はCGなのかな?」

N「こっちもぼけてるからなんとも言えませんが。……最近のAV業界事情ってあんまり分からないのですが、そんなに簡単にCGとか使える時代なんですかね?」

N「普通のテレビドラマとか、子ども向けの特撮とかみてるとかなり使われてるよね」

N「でもあれは映画とかのポスプロ(ポストプロダクション)会社の範疇が増えたからで、やっぱりAV業界にはどうなのかわからないな」

N「まソフトも安価になってきているし、ここまでぼかしてあるのなら素人でも作れそうではありますけどね」

N「……女の子も結構かわいいね(笑)」

N「それはPhotoShopのおかげだよ(即答)」

――タイトルについて。

N「それにしてもヒドイタイトルですね」

N「直球すぎるだろ、なんて思いつつ。そもそも『健気な『ヤリマン』』って矛盾してない?」

N「そんなこともないと思うな。『清純派AV女優』なんかよりは全然大丈夫でしょう(笑)」

N「……『健気』ってのは良い概念だと思うな。あんまり取り上げられないと思うし」

N「うーん、AVのトレンドとか全然わからないから迂闊なことは言えないな。迂闊は悪ですよ」

N「もうちょっとネタ元をひねって欲しかったですね。このタイトルだと『もし高校野球の女子マネージャー』までのところで完全にテンション振り切っちゃってるのがよく分かる(笑)。なんというか、おっさんの発想だよね」

N「そういう意味ではひねりが少ないから、あまりツッコムところもないな。中ではさんざん『ツッコンで』いるのでしょうが……なんてオヤジギャグでお茶を濁して、さくさく先に進みましょう」

――公式サイトのサンプルフォトをみて。

N「なんというか、こういう学生ドラマAVって女優さんよりも男優さん集めるのが大変なんだろうね……」

N「うん……。どうみても学生じゃないよね、このおっさん」

N「AVファンのひとはそこで萎えちゃわないのかな?」

N「ドラマ部分は早送りしちゃうんじゃない? よくあるあるネタでインタビューを早送りするってあるじゃん」

N「一般的なフォーマットとしてはインタビューがあるってこと? この作品はドラマものっぽいから、インタビューはないんだろうね」

N「おそらく、ちょっと古い考え方で言うと、AVってのはその女優さんの自己実現なんでしょ。それを搾取するのがAV屋さんだから、女優さんにとってはインタビューに価値はあるはずだし、AVを観ることで女優さんの人生を消費すると考えると一番アツいシーンとも言えるかも」

N「まAVに造詣があきらかに浅い我々ですので、多少間違ったことを言っていてもご勘弁くださいまし」

N「……肌色成分が思ったより少ないのが好感もてますね(マジレス)」

――まずは一回鑑賞しましょう。

N「それでは再生します」

(鑑賞開始)

N「意外と演技が上手そうですね、この女優さん」

N「これロケなのかな?グラウンド貸切ってお金かかってるね。というか一般的なAVの予算ってどのくらいなんだろ」

N「なんか青空の下でいたしているのが多いね(笑)。きっと『健気』のイメージなんだろうね。『奔放』と言い換えても良いかも」

N「あれ? 女優さん変わった?」

N「なんかオムニバス三本立てみたいですよ」

N「おニャン子商法的なというか、マルチヒロインものってことですね(笑)」

N「ダイジェスト映像だとストーリーが分からないなあ」

N「ストーリー必要かな? だってAVでしょ」

N「思ってたよりも映像のクオリティ高そうですね。なんとなくのイメージでAVは映像的な質の悪さがあると思ってた」

N「大手メーカだからかもね。たくさん作るのなら、それなりの機材も用意できるだろうし」

(鑑賞終了)

N「うん。なかなか面白そうですね」

N「個人的には演技がしっかりしてそうで良かったですね。ドラマシーンがある程度多ければ観てみたいかも」

N「正直、いたしてるシーンは……というか撮り方の問題だと思うけど、性に対する貧困なというか固定化したまなざしを感じなくもないですが」

N「確かに。フェティシズムは奥深いというか、一方的な映像になっている気がする。カメラの目線の問題じゃない?」

N「かなりドラマ仕立てというか演技っぽいしね。そもそも性行為には『義務と演技』を引っ張ってくるまでもなく、演技的な要素があるわけじゃん。そこにあえてイメクラ的な演技の要素が入ってきているし、そもそもが演技を演技している。どこまで女優さんとかが意識しているのかわからないけれど、その多層性は面白い。AVってあまり観たことないけど」

N「それはただのエクスキューズのようにしか聞こえないな。それって『安全に痛い』パフォーマンスに過ぎないんじゃないの? 本当はただ単に女優さんの性を消費しているだけなのに」

N「ふたりともそゆこと言いたいだけでしょ(笑)。ぼくはモザイクが嫌いだな。なんかチラチラしてそこばっかり気になっちゃう。モザイクって基本的に不必要だと思うんだけど」

N「それはわたしも完全に同意ですね。モザイクって百害あって一利なし。よっぽどお見せできないモノがその下に隠れているのならば、ぜひとも隠して欲しいものですが(笑)」

N「じゃ結論としてはモザイク不要論ということで」

――まとめ。

N「そもそも論になるけど、ダイジェスト映像だけみても何も始まらないよね」

N「それ言うか(笑)。だけど本編だと一四〇分もあるんだよ! そんな長いの観てる暇があったら文学フリマの原稿書きなよ!」

N「確かに。今の状況をお伝えしたら、百人中九十九人はそう言うだろうね」

N「言っちゃう? 時事ネタとか言っちゃう?(笑)」

N「ヒ素生命体の話とかしようか(笑)」

N「やめときなさい!」

N「……では、気を取りなおして。アサカツはいかがでしたか?」

N「眠い」

N「意外とエロくて良かった」

N「……というわけで、本日はこんなにも早朝から始発電車でお集まりいただきありがとうございました。今後のみなさんのますますの反社会人的ご繁栄をお祈りして、本アサカツを閉めさせていただきたいと思います。本日は本当にありがzzz……」

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