【HADESⅡ】またしてもギリシア神話オタクが産み出した神ゲー
インザネイモヴヘイディース! ドーモ、マーズです。
君たち、ギリシア神話をモチーフにしたローグライトアクションゲーム『HADES』はもうプレイしただろうか。今年5月に続編『HADESⅡ』がアーリーアクセスでリリースされているので、この記事ではその紹介をしよう。
さて前作では主人公がザグレウスというめっちゃマイナーなハデスの息子だったわけだが(前作の記事:【HADES】ギリシア神話オタクが産み出した神ゲー)、今回もまたマイナー主人公、女神にして魔女のメリノエである。ザグレウスと同じくメリノエもまたオルペウス教に関する神である。
オルペウス教とは、ギリシアの密儀宗教であり、冥界ハーデースへ行って戻ってきた詩人オルペウスがその開祖とされている。ギリシアの信仰世界観では、死者は冥界へ行き、戻っては来ないのだが、オルペウス教ではオルペウスにならい、人は死んだ後転生するとされている。そして彼女はオルペウス賛歌と呼ばれる賛歌に名前が登場する。彼女はハデスに化けたゼウスが、ハデスの妻ペルセポネーと交わって生まれた女神であり、またヘカテーと同一視もされているらしい。
さて、ゲームにおけるメリノエは、前作主人公ザグレウスの奮闘により母ペルセポネーを地上で見つけた後、ハデスとペルセポネーとの間に生まれた娘だ。彼女はハデスと同じく冥府の女神であるヘカテーの庇護のもと、「辻の郷」と呼ばれる影の地で魔女として育てられ来た。この辻の郷はゲームにおける拠点でもある。オルペウス教の神話に基づいた設定は前作に続きさすがである。このシリーズは毎回オルペウス教をフィーチャーしているが、やはりローグライトというシステムと死からの復活という教義の親和性が高いからだろうか。
そして彼女がなぜ本来の居場所であるハデスの王宮にいないのかというと、なんとゼウスらの父であるティターン族(巨人族)クロノスが復活し、ハデスらに反旗を翻して冥界を占領してしまったからなのだ。
クロノスは、運命の三女神(モイライ)の予言により、自らの子が自分を殺し、その地位を奪うと知り、産まれた子を次々に飲み込んだ(「我が子を喰らうサトゥルヌス」の絵で有名な逸話)。しかし末子ゼウスによって兄姉らは助けられ、反乱によってクロノスたちティターン族は倒され、地下のタルタロスに幽閉された。
復活したクロノスは前回の二の轍を踏むまいと、大胆にも運命の三女神をさらって手中に収め、運命の糸を紡ぐことができないようにしてしまった。その上で閉じられた冥界から溢れ出した亡霊の軍団をオリュンポスに差し向け、地上をも支配しようともくろんでいるのだ。
いや何このダイナミックなストーリー! ギリシア神話の二次創作として完璧すぎるだろ! 今作の一番すごいところはここだと思う。冥府の神が冥府を逐われ、クロノスが反乱を起こし、地上にまで神々の争いが広がる。この展開にはとても衝撃を受けた。しかもクロノスの反乱によってハデス、ペルセポネー、ザグレウスは行方不明なのだ。なんてこった。
本作の推しポイントは他にもあって、例えばクロノスは農耕神だが、同名で時の神であるクロノスもいて、今作では両者が同一の存在となっている。つまりクロノスは時間を操る能力を使うし、倒しても時間を巻き戻して復活する。雑魚敵にもステージの装飾にも時計などのモチーフがふんだんに使われている。ローグライトというゲームのギミックと設定が上手く絡んでいて素晴らしい。
また前作では最初のステージがタルタロスだったが、今回は辻の郷から冥府の王宮を目指すので、最終ステージがタルタロスになっているという点も細かいが好きなポイントだ。このタルタロスは単に名前が前作と同じだというだけではなく、前作で登場したシシュポスの部屋が出てきたり、また前作でザグレウスが毎回冒険に出発するときの最初のエリアと同じ地形がクロノス戦前の部屋にそのまま使われていたりと、前作プレイヤーをニヤリとさせる小ネタである。他にも、前作では武器として使用できたアダマント電磁砲を敵が使ってきたりもする(なんで古代ギリシャに電磁砲があるんですか?)。
ゲームシステムとしては前作から変わった部分もあり、正統進化した部分もあるが、全体的なプレイフィールは向上しており、アクションゲームとして安心して楽しめる。今作の追加要素として一つ敢えて紹介するならば、好感度を上げるとNPCとお風呂に入れます。お風呂に入れます。メリノエもお風呂に入れます。
『HADESⅡ』は9月現在アーリーアクセス段階であるにもかかわらず、既に完成度がかなり高いので問題なく遊べる。前作プレイ者や興味のある人はsteamから購入だ!3400円!買え!
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