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言葉の積み木 (六)

51.

僕が最後にあなたを見たのは
陽炎の中
それでもあなたは 微笑んでいた

いいよね
きっと月が燃えて 太陽になった日に
僕らは きっと きっと また出会える

人を動かすものは 何だったのだろう
この世界を動かすものは 何だったのだろう
見えない何かが地球を包み
僕らを僕らでなくしてしまった

陽炎の中で微笑むあなた
僕はあなたのかけらを握りしめ
こんな形で僕はあなたを手に入れた

あれは いつの頃だったろう
草笛くらいで
有頂天になれた 夕暮れの道

いいよね
きっと月が燃えて 太陽になった日に
僕らは きっと きっと また出会える

誰もが“笑う”っていう最強の武器を持っているのに
忘れてしまったんだね
思い出す事など もう何もないよ
全てが白い光に溶けていく

陽炎の中で微笑むあなた
僕はあなたのかけらを握りしめ
こんな形で僕はあなたと一つになった

52.

ここは温かい水の中

ゆるゆるとして心地良い

流れもない

淀みもない

明るくもなく

暗くもない

ただ ゆるゆると心地良い

羊水は私を包み 私は羊水を抱いた

ここにいて どれ位になるだろう

夢は沢山見た

優しい歌も もう覚えた

さぁ そろそろ生まれ出ようか

ゆらりと体を起こす

出られない

私は私の姿に 愕然とした

その腕には 扉を押し開く筋肉はなかった

叫びを上げる声帯もなかった

壁を蹴りつける程の脚も持ち合わせていなかった

何かが違う 何かが違う!

昨日見た 外の世界は幻だったのか!

“何かが違う”という気持ちは

苛立ちを呼び起こし

私を焦燥に駆り立てる

しかし あがけばあがく程に

柔らかいな粘膜がへばりつき からみつき

苛立ちを増幅させていく

なぜ 出してくれない

なぜ 出させてくれない

このまま 私に

ずるずるに腐って 溶けてしまえというのか

外の世界も見ずに

私は 生まれたいんだ

53.

私たちは何だったのですか

私たちは何をしたのですか

私たちは記憶を拒んではいけない

54.

HAPPY BIRTHDAY

あなたへ

潮の香りの中の

あなたに

春には春の 海の色があることを

秋には秋の 海の色があることを

あなたが私に教えてくれた

私は忘れない

一生忘れることはない

HAPPY BIRTHDAY

あなたは

街のざわめきの中で

あなたが

誰でも未来を夢見る資格があることを

愛が生きる苦痛を忘れさせてくれることを

あなたは無言で教えてくれた

私は忘れない

一生 あなたを忘れることはない

55.

あの街に

夜空の星は数える程

幼い頃から 見上げた空の

赤い星

楽しいこと 悲しいことを

語りかけてた 赤い星

この町は

満天の中に無数の輝き

だけど

私の大切な星が

みつからない

あまりに多くの星たちで

私の星がわからない

願いをかけた

あの星の下に帰ろう

幼い日 見上げた

あの空の下に

幸せをみつけに┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

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