小説『ハケンさん/下』
「今いい?」彼女はいつもと変わらぬ声のトーンでこちらを気遣う言葉から話し始めた。駅前に着いたバスを降りて交差点で電話を受けた私は当然快諾して聞き返した。
「どうしたの。体の具合でも悪いの?」侑大のこともあって、彼女の体調が気になったのだ。
「体は元気なんだけどさ、仕事切られたのよ」
「どうして?安西さん真面目で仕事も早いのに」
「あんたんとこの西野って子、知ってる?あの子がまた遅刻してきてさ」話によると、西野という女性は私と同じ派遣会社の所属で、私が入っていない日はその人が派