Wikipediaこれ読んどけ 第04回「ピアソン夫妻」
第3回では「人物伝に出身地とか親の名前なんてイラネー」と毒を吐いたが、今回は出身地と親の情報を見事に活かして書ききっている人物伝をご紹介。言ってること、真逆? いやいや、そんなことありません。
米国出身の「ピアソン夫妻」は北海道に渡ってキリスト教の布教に尽力した宣教師。第3回で紹介した「ココ・シャネル」は、導入節が長めでガッツリ書かれているが、こっちの「ピアソン夫妻」は軽め。導入節のすぐ後に、夫ジョージの生い立ちから始まる。
おっ、私の嫌いな執筆パターンか??と思いきや、すぐに度肝を抜かされた。
” ジョージ・ペック・ピアソンは、1861年にアメリカのニュージャージー州エリザベスで誕生した。エリザベスは教育水準が高い上に信仰に篤く、ジョージは家庭でも大学教授である祖父から学者の資質、牧師である父から指導者及び伝道者としての心を受け継いでおり、幼少時より熱心なキリスト教徒であった。 ” (oldid=75833831 から抜粋)
この1段落、実はよく出来ているのだ。
えっ、どこが?とお思いのアナタ。よーーーく読んでご覧なさい。
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(答え)
日本語版Wikipedia読者の殆どは、ニュージャージー州エリザベスなんて都市を知らない。ニュージャージー? それ、美味しいの? なのでジョージの出身地名なんて、一般人には記号にしか見えないのだ。
↑ニュージャージー州エリザベス近郊を描いたGignouxの作品
ところがその直後に、エリザベスという都市がキリスト教を基盤とした高教育都市だ、という情報が出てくる。この瞬間、読者の脳裏にエリザベスの街並みや人々の様子が急に浮かび上がってくるだろう (勝手に想像したくなる)。そして、なぜジョージが宣教師の道を選んだのか、その動機や外部要因がガッツリ伝わってくる。
こういう書き方は「立体的」なんだと思う。文脈を一つ一つ重ねていく筆力。読んでいてリズム感も良いので、スルっと読めてしまうのだ。
この「ピアソン夫妻」記事を執筆したのは、逃亡者さんというベテラン執筆者。特に人物伝は多く手掛けているが、どれも「立体的」な書き方をするので、読んでいてすぐに誰の作品だか分かってしまう。
逃亡者さんの執筆記事一覧は「こちら」。他にもいろいろあるので、是非読んでみて。
人物伝以外でも「スタッフが美味しくいただきました」(テレビのテロップでよく見かけるやつ)、「なんちゃっておじさん」(昭和の都市伝説) みたいなカジュアルな記事も執筆しているので、注目の一人であーる。
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