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多様化する書店のかたち
近年目にするようになったのが「独立系書店」、「シェア型書店」と呼ばれる新しい書店の形態。
いわゆる「街の本屋さん」が次々と姿を消し、紙の本の電子書籍化も進む中、大型書店やチェーン展開している書店とは一線を画した、規模は小さくとも店主のこだわりを反映した個性的な書店が増えつつある。
そして、とうとう自治体が書店を始めたというから驚いた。
図書館ではなく、利益が発生する書店なのだから面白い。
自治体としては書店に情報インフラとしての役割を期待し、都会と地方の文化環境の格差を小さくすることを目的にしている。
利益を追求しない分、選書にはこだわっている。
既存の書店の売れ筋をあえて置かず、逆に売上が出にくいが市民にぜひ読んでほしい本を選ぶ、新刊は小さな書店の分も確保するなど、他の書店にも配慮された選書となっている。
お役所的でないようでいて、お役所らしい生真面目さもあり、これからの自治体の在り方を模索するうえで一つのヒントとなりそうだ。
移住を検討している人に対しても有効なアピールポイントとなるだろう。
税金を使うものなので、市民や議会の理解を求める必要はある。ただ、人口減少が止まらない中、ハコモノ行政には限界が見えてきており、図書館を新築する際は単体ではなく、他の施設との複合型が地方自治体では目につく。
それに比べると書店なら小さい規模で済み、例えばシャッター通りと化した商店街の一画を買い上げ再利用するというような方法も考えられる。
どんなコンセプトにするか、どんな本を選ぶか、かなり高度なセンスと自治体の覚悟が必要な施策ではある。
むしろ、評判がいいからじゃあうちも、といい加減な気持で手を出せばすぐに失敗することも考えられる。
とは言っても、日本各地にこんな書店があったら旅行ついでに寄ろうかな、自治体書店めぐりしようかな、と私なら計画を練りそうなので、自治体直営の書店が増えることは大歓迎だ。
あちこちに自治体書店ができて、自治体書店同士や民間書店とも連携したら、さらには出版界も巻き込んで新しい流れが作れるんじゃないだろうか?などと妄想したりもしている。