桃の唇

気怠い朝がやってくる
眠気の中で未だに残る
一夜限りの夢灯籠

行き当たりばったりの唇の
瑞々しさが忘れられない

あの夜、酔った勢いで君が言った
「僕とキスをしてほしい」
アホな事言うなぁって思ったよ
でも、ホントは嬉しかった

初めて交わしたキスの味は
アルコール混じりで甘酸っぱい
ねじ込まれる舌が絡めば
体の芯まで蕩けてしまう

溢れる果汁は淫らに濡れて
湧き出す液はピンクのオアシス

「好きだよ、好き……」
ペラッペラの愛言葉は
女を口説く決まり文句

それでも別に構わない
お遊びだって割り切っているから

君の気持ちが嘘でもいい
キスの快楽は本物だから
行きずり恋でもいい
君のことは愛していない

だけど、狂おしいほど欲しくなる
君と交わしたキスの味
あの瑞々しさと甘さはもう
二度とあたしを離さないだろう 

気怠い朝がやってくる
眠気の中で未だに消えない
お遊戯部屋の桃の唇

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