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らんち

ランチに行ってきました。
前々から気になってたスーパーの近くにある居酒屋。そこがランチやってるみたいだから、彼女と食べに行く。

普段一緒に生活してても、たまの休みとかお互い重なった時は、外出してもいいかなという気分になる。
経済的には相変わらず厳しい(ほぼヒモ)のだが、彼女が美味しいもの食べにいきたい。

って言い出したら、まあ彼女もちだろうから。車を走らせるのである。

そこは和風の居酒屋
ビールのポスターとか黒っぽい内装。
カウンターは一本の木から切り出したような板で、木目が美しく、くねくねと曲がった感じ。
どこかからか、探してきたのだろうが、エライ高そうだ。そこへ床に直に座る感じ。

従業員は、お店のマスターと1人のウエイター?しかいない。どちらも中年のおっちゃんである。

まあ、かくいう私もおっちゃんなわけだが、
同年代から上のゴツイ系オヤジはあんまりお近づきになりたくない。

カウンター先の目の前は壁になっており、
その上に皿などが置かれ、その向こうに調理場がある感じ。
目線をあげれば、ギリギリおっちゃんたちの顔が見える。

私は極力目線を上げないように、カウンターの下に携帯を隠しながら、ゲームをしつつ
注文の品が来るのを待っていた。

しかし、最初に来たサラダはよかったのだが、問題のランチが注文した唐揚げ定食ではなく、日替わり定食ののサワラの煮物を持ってきた。

彼女と注文が違うよねえ、と目線で合図しながら。

一旦、まあこれでもいいかなーと逃げ腰の心が現れて、しばらく沈黙。

でもまあ値段が少し高いし、黙って泣き寝入りするのを彼女に見せるのもなんかやだし、
といって正直に違うというと、せっかく作っていただいた料理を廃棄することにもなりかねない。
つまりは店側の損害である。
まあ注文を聞き間違えたわけだから、責任はあっちにあるのだろうけど、その後、ゴツいマスターがキレ始めたら、料理を美味しく頂けたとしても、痛々しい空気の中で食事しなければならない。

そんな葛藤をしているとは全く思っていないだろう彼女は、ずっと黙っている。
基本この人、私が喋らないと口を開かない。

私は意を決して「すみませーん、唐揚げ定食注文したんですけど」と指摘すると、
すぐにサワラの煮物や味噌汁は片付けられた。

しばらく、厨房の方の雰囲気にアンテナを向けながら目は携帯の方は落とす。

すぐには来ないだろうなーと思っていたが、
注文してから作り始めるのだろう。結構待たされた。お腹の方も限界になった頃、

ゴツいマスターが小さな皿を出してくれた。

なんと!
そこにはブリの刺身が2切。

「もう少しかかりますから、これ食べてて下さい」
ぶっきらぼうな声だったが、
怒らせたかなーと警戒していた矢先、
まさかサービスを頂けるとは思っていなかったので、びっくりしつつ感動した。

これは、なかなかやりおるなあ、亭主よ。

マイナスの印象で評価を下げておきながら、
プラスのサービスで挽回しつつ、いいイメージを受け付ける。
それはただサービスを受けるよりも、
深いエピソードとして、心に刻まれる。

そのブリの刺身の破壊力ときたら、計り知れないものがあった。

そして、刺身自体もうまい。

しばらくして運ばれてきた唐揚げ定食は、

しじみの味噌汁は薄味で、塩分を気にせず飲み干せるし、肝臓にも良さそう。
唐揚げは大きいのが4つ。しかし臭みのない、いい鳥を選んでいるのがわかる。

この前、何十年前からメニューが凍りついたように変わっていない、古い道の駅のレストランで唐揚げを食べたが、そこのブロイラー臭い、油まみれの唐揚げとは、全く別物であった。

そして、巻貝(ツブ貝?)が乗っていた。
久しぶりに食べるそれも、出汁が染みていて、全く生臭くないし、潮臭くもない。

昔、父がよく食べていた巻貝は、貝料理が嫌いになるくらい塩臭く、不味い代物だった。

なのであまり牡蠣とか鮑とかも苦手である。

その私が美味しく頂ける貝料理なのだから、よっぽど調理テクが上手いのだろう。

ごはんもこの物価高の中、大盛りでしっとり優しい味であった。

大満足の中、最後に運ばれてきた珈琲も、濃い目で美味い。
コーヒー好きな私にとってはこの店は押さえておきたい。
これだけついて、千円ちょいなのはかなりお得である。
彼女はブリの刺身が美味しかったようで、また夜も来たいと言っていた。
夜の居酒屋は、酒飲みが来るからうるさいだろうし、あんまり気は進まないが、
2人とも高評価だったのは間違いない。

おっちゃんは怖いけどまた行くかもなー。


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