映画:『コピーキャット(Copycat)』
1996年日本公開/ジョン・アミエル監督
サイコパスの犯す連続殺人についての物語。きのう『ゾディアック』を観たばかりなので、まるでこの手の作品ばかり観ているようだが、これは私が利用している映画配信サービスの「あなたにオススメ」欄に誘導されたせいなので(前回観たのと似たようなのを並べてくる)、そこは気にしたくないし、気にしてほしくもない。
「サイコパス」という存在は、現状、人間存在についての興趣的な話題であり、かつ人類保存に関して大きな課題ともなっているようだが、「映画」という大衆向けの啓発ジャンルにおいて(娯楽と啓発は性格の違う同じ顔の姉妹だ)、ヒッチコックの時代からしばしば描かれ続けてきた。
それがあらためて「科学的事象」っぽく採り上げられ映画化されたのは、おそらく『羊たちの沈黙』(1991年日本公開)の頃からだろう。当時はFBI(アメリカ連邦捜査局)の心理捜査がどうのこうのと持ち上げられていたが、その三十年後の現在にそれは活かされているのだろうか。
本作は、その『羊たちの沈黙』の5年後に日本公開された作品である。『羊たちの沈黙』の興行的成功によって「ちょっとヘンな映画を撮る人」から「時代が生んだ鬼才」へと称号が変わったジョナサン・デミ監督と比して、それほど注目されていなかった同世代の監督による「佳作」だった。
描かれている「サイコパス」の存在的な相貌は当時の感覚でもすでに古かったし、極論すればゾンビ映画に出てくるゾンビと大差なかったと思える。
物語は、異常性欲者 vs 犯罪心理学者+刑法の執行者の戦いが、善悪という明瞭な対立構造のもとに語られてゆく。
連続殺人鬼に正面から対抗するのはふたりの女性、著名な犯罪心理学者(演:シガニー・ウィーバー)と向こうっ気の強い殺人課の刑事(演:ホリー・ハンター)。
とりあえず、ホリー・ハンターが“ちっちゃ可愛い”。
年齢的にいえば私より一回りぐらい年上の彼女だが、これはズルいぐらいに可愛いし、カッコいい。本作はアカデミーやらカンヌやらで主演女優賞を総なめにした『ピアノ・レッスン』の2年後の公開作だが、ダイアローグでチラ見せするちょっとした仕草だけを取っても、あの受賞は伊達じゃなかったと思える。とくに対話中で相手の出方を待つ姿勢になったときのリアクションは独特のものなので、カメラワークと編集でもっと拾ってほしかった。
シガニー・ウィーバーは『エイリアン』公開当時小学生だった私にとって、長らく「ゴリラっぽい、こわい感じのおばさん」だった(実際にゴリラと共演した映画もあった)。以降「女性」として見たことはついぞなかったが、本作の公開から三十年が経ち、年齢差が逆転してひと回りぐらい年下の人として再会したいまは「こんなキレイな人だったんだ…」という思い。我ながら勝手なものである。
絵面は90年代のハリウッド・フィルム作品そのもので、キーもタッチも照明ガチ当てですべてが白っぽい。妙齢を過ぎた大物女優の共演作だからそのあたりの諸事情は理解できるが、作品のジャンル的にもうすこしハイキーで挑戦的な画面でもよかったと思う。TVドラマのようなそつのない演出もすこし退屈に感じるが、おそらく当時のホリー・ハンターとシガニー・ウィーバーのスケジュールなんてほんの数日しかクロスしないだろうから、きっちり撮り切ってる(と思える)のはたいしたものだと言いたい。
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