アルミロードでPBPは完走できるのか?~準備編~
ブルベの師匠に導かれてあこがれの国フランスで開催される世界最大のアマチュア自転車イベントParis Brest Parisに参加することになった経験を私もぼちぼちとまとめてみます。
大学時代にファッショナブルなので、という理由だけで履修したフランス語をこんな形で再び使うことができるとは、想像だにしていませんでした。
沿道から聞こえた応援の言葉。
Bravo!
Courage!
Bon jour!
Bon soir!
Allez! Allez! Allez!
装備
自転車
CAAD12 2016年モデル(リムブレーキ)
変速系コンポはDi2に換装
ブレーキはリムのDuraAce古いやつ
ハンドルはカーボン製エアロハンドルに換装
サドル:Selle SMP DRAKONに換装
Shimano Ultegra で前は50-34t, 後ろは11-34tに換装。
ホイールはZonda
2016年にミャンマー赴任中に心優しい友人がScottのカーボンロードバイクを貸してくれて乗り始めたらそのスピードと距離に感激して、2017年に帰任してすぐに買ったのがカーボンキラーのアルミロードバイク、キャノンデールのCAAD12です。
ブルベは2019年から始め、2021年から毎年SRを獲得できるようになりましたが、すべてこのバイクです。コンポ類はほとんど換装したもののフレームはCAAD12。飛行機輪行でも圧力がかかっても安心です。
実は、私もいいバイクがほしくなり今年初めにFACTOR O2+Ultegra12速コンポを買ったのですが、ブルベ参加はついつい走行実績があり輪行で運びやすいCAAD12に乗ってしまっていました。気付いたらFACTORを本格的に使ったのは富士ヒルのみで、ブルベはすべてCAAD12で参加してしまいました。
PBPをどのバイクで参加するかとなると、やはり見映えより、実績のあるCAAD12ということになりました。CAAD12では師匠から譲り受けたDi2などのコンポ類をすべて自分で換装したり、チェーン、ケーブル、ブレーキシュー交換などのメンテナンスも全て自分でやったことがあるので、トラブル対応も応急処置する自信もありました。一方、ディスクロードは自分で触わったことが一度もないのと運搬中のトラブルが怖かったというのもあります。
このようにしてCAAD12でPBPの完走を目指すことになりました。
周辺機器
サイコン:Garmin Edge 840 Solar (発売してすぐ購入)
ライト:Cat Eye VOLT800 Neo X 2本
ライトバッテリー予備:Cat Eye VOLT800用 X 2本
ナビ:Pixel 6a でRide with GPSを起動。主に音声で使用。Amazonで買ったOrangeの旅行者用SIMを搭乗中に入れ替えました。
スマホ:iPhone 13 mini。主に写真撮影用、直前にiPhone 12 Proから片手で操作しやすいiPhone 13 miniに買い換えました。
携帯キャリア:Ahamoなので、フランスでも追加料金なしですぐ使えました。
2017年にロードバイクを乗り始めてから6年もの間、中華ライトや旧型のGarmin Edgeでお金をかけずに乗っていたので、PBPに出るにあたり最新のものを一通り揃えました。
ナビは2019年に初めて200kmブルベに出たときにサイコンの小さな画面のナビを見過ぎて事故りそうになったこと、友人がナビを見ていて立ちごけしたのを見たりして、リスクを下げるには音声しかない、ということで私はずっとRide with GPSです。この4年ほどで機能がかなり高度化、ナビの精度もずいぶんと上がり、最高のブルベナビになりました。課題はスマホベースなので、バッテリー消費で、600km以上を一度も走らずにPBP本番を迎えたので、そこが一番心配でしたが、PBPは昼間はナビがなくても走れることが最初の昼間(21日)にわかったので、22,23日は昼間はナビ用スマホのスイッチを切りバッテリーを節約したら、全く問題なかったのは良い誤算でした。
ライトのバッテリーは実はPBP出発の前の週末に師匠に直前対策の相談をしたら足りないことを指摘され、急遽調達したのですが、VOLT800 Neoのバッテリーは店で注文しないと入手できず、オンラインで買えるVOLT800旧モデルのバッテリーを2本注文。翌日には入手できました。本番で24日の未明に走行中にライトが2本とも無くなってしまい、1本サドルバックにこの予備を入れていたので、スマホのライトを照らしながら落ち着いて交換できました。予備は復路のルデアックまでドロップバッグに入れておき、その後、携行しました。そこで携行を忘れていたら危なかったです。
でも、同じような時間にライトが切れて集団について走っている兵もいました。厳密にはアウトですが、集団にいる限りはとても明るいのでそれくらいで完走をあきらめてはいけないのかもしれません。車が来たのかと思うくらい明るいライトで走っているアジア人もいましたが、その人達はバッテリーマネジメントをどうやっているのだろうと思いました。
上述のPixelに入れたOrangeの旅行者用SIMですが、iPhone 13 mini では挿しただけで通信が始まりませんでした。Pixelではすぐに動きましたが、原因追及は時間がかかるのでやっていません。
ウェア類
ジャージ:Rapha メリノウールの長袖ジャージ
ビブ:Rapha ウィンタービブタイツ(冬用)(往路のルデアックまで)
ビブ:Rapha Pro Team ビブショーツ+アーム/レッグカバー (往路のルデアックから)
レインウェア(上):モンベル サイクルドライシェル
レインウェア(下):モンベル スーパーストレッチサイクルレインパンツ
ベースレイヤ:モンベル長袖、Finetrack ドライレイヤー半袖、ミレーのドライナミック メッシュ ボクサー
グラブ:Intro Stinger4
雨用グラブ:Finetrackのドライレイヤーのグラブ、Workmanで買ったイナレムレイングローブ。
フェイスカバー:Raphaウィンターカラー
反射ベスト:PEKOさん「お手軽輪行袋サイト」で購入したオールメッシュポケット付反射ベスト。反射材ましましバージョン。PBPスタート検査時に特に問題なかったです。(念のためPBPで配布されたものも持っていました。)(2023/9/24追記)
2019年のPBPのように気温が1桁前半まで落ちるときの練習が十分にできていなかったのですが、私が他の人よりも発汗量が多く瘦せ型なので、とにかく通気性がないと汗冷えで体が冷えて耐えられなくなるので、その点を最重要視しています。今回の気温は上記が一番ぴったりでした。
グラブは温度が下がるとまずFinetrackのドライレイヤーを指切りグラブの下にはき、さらに下がるとイナレムレイングローブをはくことにしていました。これらはいずれもスマホを脱がずに操作でき、雨の7度まではブルベで体験済みでした。
今回は私のGarminによると、23日の朝に9度くらいまで下がっていたようです。
バッグ類
(2023/9/24追記)
サドルバッグ:Apidura Expedition Saddle Pack 14L
衣類、モバイルバッテリー(予備)、Cateyeバッテリー(予備)、レインジャケット、レインパンツ等トップチューブバッグ:Apidura Racing Top Tube Pack (1L)
モバイルバッテリー、スマホ、充電用ケーブル(Garmin Edge, Pixel 6a用にType C, iPhone用にLightning、いずれも短いもの)フレームバッグ: Apidura Racing Frame Pack (2.4L)
工具、チューブ、電池予備、補給食等すぐ使うものを入れていました。
私のフレーム(CAAD12の2016年50inchモデル)では、このフレームバッグにキャメルバックの長いボトルとTHERMOSの真空断熱ボトルがぴったり収まるので、2022年夏から利用しています。干渉するのでぶら下げているだけで前後のフレーム用ベルトは使っていません。フードパウチ:Apiduda Backcoungry Food Pouch (1.2L)
3本目のドリンクを入れたり、PCや道端で買った補給食を入れていました。私が買った2022年6月の後に外側にメッシュポケットのついたPLUSというのも発売されていますね。エナジージェル等を入れられるので便利そうです。
Apiduraは私の自宅最寄りのモンベル南町田グランベリーパーク店にも置いており、サドルバッグは出発1週間前に急遽購入しました。同じシリーズの17Lでは大き過ぎで重く、当初持って行く予定だったRACING SADDLE PACK 7Lでは小さ過ぎたからです。過去のブルベの経験では防水性と軽量性はRACING SADDLE PACKが優れているように思いました。
後で記載するPEKOさんの反射ベストをどうしても着たかった理由のもう一つは収納ポケットです。補給食の小さなものは前ポケットに入れていました。今回はほとんどの時間にクロワッサンかパンが入っていたと思います。
ブルベとトレーニング
マラソン中心が2016年からマラソン+ロードの二刀流に
私はもともと2012年からずっとランニングが主でした。毎年フルマラソンに2,3本エントリーしそのために練習するというスタイル。2014年から赴任したベトナムではマラソンをしていたところ、2015年に突然、椎間板ヘルニアを患いマラソンも完全にストップしたことがあるのですが、数多くのプロ選手を診ているアスリート専門の整形外科に相談したところ、痛みと相談しながらむしろスポーツはした方がよいというアドバイスを受け、マラソンを再開。みるみる回復しました。
次に赴任したミャンマーで日本人仲間からロードバイクに誘われ、すっかりその魅力にはまりました。
マラソンとロードバイクの二刀流で行くことに。トータルの運動量は増え、ロードバイクで体幹や体の後ろ側の筋力がかなり上がり、マラソンもそれまでは4時間切るのがやっとだったのが、自己ベストの3:33を出すという好循環が生まれました。
ブルベ参加のきっかけとその後
そういう中、2019年のPBPを完走した大学の先輩のFacebook記事には衝撃を受けました。私の憧れの国フランスでそんなすごい自転車イベントで完走というのは一体何なのか?私も出てみたいという衝動にかられ、すぐに連絡したところ、快くPBPを目指す会にお誘い頂き、2019年のAJたまがわの定峰200kmが私の初ブルベとなります。これ以降、ブルベのいろはを教えてくださるので師匠と呼ぶようになりました。
実績:2019年シーズン SRなし
BRM1006たまがわ200km定峰 12時間47分で完走、初ブルベ認定
実績:2020年シーズン SRなし
BRM919東京200kmいってこい伊豆網代 完走、認定
BRM1010東京400kmいってこい信濃追分 完走、認定
BRM1019(328)あおば300km本栖みち 215kmでDNF
実績:2021年シーズン SR初獲得
BRM1107東京300km甲斐 完走
BRM111東京200kmはとばす 完走
BRM724札幌600km弁慶岬 完走
BRM703東京400kmいってこい信濃追分 完走
BRM1023西東京200kmしおかつお松崎 完走
実績:2022年シーズン SR獲得
BRM110東京200kmはとばす 完走
BRM521たまがわ400km石廊崎 完走
BRM604西東京600km諏訪湖 191kmでハムストリングスを傷めDNF
BRM709(312)東京300km金太郎ライン 完走
BRM723北海道600km宗谷岬 完走
実績:2023年シーズン 早々にSR獲得したものの…
BRM1112東京300朝霧高原 18時間20分で完走 21.3km/h
BRM218西東京200km伊東 11時間39分で完走 22.6km/h
BRM325広島600ゆめしまなみ 完走 39時間余りで完走 21.8km/h
BRM422 東京400銚子しおさい 22時間43分で完走 22.4km/h (SR確定)
ゴールデンウィークは600kmを少なくとも2本は練習したく3つエントリーしていましたが、いずれも体調不良でDNS
BRM513西東京400km富士大回り 177kmでDNF 20.8km/h
BRM520東京600kmぐるっと安曇野 207kmで膝痛でDNF 21.0km/h
6月4日富士ヒル出場 1時間42分で完走。
BRM610東京400kmぐるっと伊豆イチ 235kmで膝痛でDNF 22.0km/h
BRM714北海道1000km摩周湖 →PBPのリハーサルのつもりが体調不良でDNS
BRM729千葉200km上越妙高 完走 21.0km/h
BRM805東京200km金太郎(夏) 72kmで膝痛でDNF 22.6km/h
PBPシーズンの2022、2023年は、私はいつものように冬はマラソンに専念するので、2022年10月に東京レガシーハーフマラソン、金沢マラソン、2023年1月に勝田マラソン、3月東京マラソンに出場するまでロードバイクにはほとんど乗っていません。今年だけ特別だったのはSRを早く確定させるため、11月中旬と2月中旬のマラソンのはざまを狙って300kmと200kmは走りました。マラソンは1月、3月になんとかサブ4の記録を出してシーズンを終えました。
マラソンの疲労が抜ける3月中旬からの遅めのスタートでいきなり広島の600kmに出ました。踏み過ぎで足を傷めるのだけは注意しながら、なんとか完走。
そして、キューシートが細かいけどとても大好きになった銚子400kmを無事完走し、SRを確定させ、ゴールデンウィークは、いろいろなコンディションで練習ブルベをするつもりが、いずれも体調不良でDNSとなってしまいます。
その後も出場するブルベはどれも足に違和感や痛みを感じ、けがが怖かったので、大事を取ってDNFばかりしていました。私は一度故障すると治るのがかなり時間がかかるので、これは正解だったと思います。
ただ、一番不安になったのは、摩周湖1000kmが走れなかったこと。600km超えのブルベはなかなかスケジュールが合わずここが唯一の参加機会だったのですが今年一番体調が悪くDNSでした。コロナの検査を3回もやったのにいずれも陰性でしたが、後の症状の経過を見ると高確率で偽陰性。テレワークで人に迷惑はかけませんでしたが、精神的に一番不安を覚えました。
しかし、結果的にはこれくらいの練習量や完走率が私にはPBP完走には最適解だったように思います。実際、PBPの直前まで内側広筋が痛かったですし、本番は2日目で、今まで経験したことのないアキレス腱炎が発生してしまいました。3月からのロード本格スタートでは筋力が十分ついておらず、練習し過ぎではスタートから故障が発生していた可能性が高かったからです。
今年のブルベ参加で最も本番の準備になったもの、それは7月29日に開催されたAJ千葉さんの上越妙高200kmでした。摩周湖1000kmに参加できずフランスの気候に似た北海道で練習できなかったので、少しでも涼しいところを求めて長野を選んだわけですが、ここ長野なの?と思うくらいの酷暑、炎天下の坂だらけのブルベでした。完走後のチェックのときに直前の坂練習になったという意味で「PBPのいい練習になりました」と言ったら、こんな暑いブルベはPBPの寒さ対策にならないよ、と笑いを誘ったのですが、実はこれが今年のPBPの暑さにとても役立ったのです。特に戸隠神社を目指す長い坂はちょうど正午前後、猛烈に暑くなる中、延々と無風の中でしたので、ずいぶんと暑さ慣れさせて頂きました。その暑さに適切な水分量も体で覚えましたし、休むべきタイミングもわかりました。このおかげで、今回のPBP参加者を苦しめたルデアック以降の暑い坂がずいぶんと楽に感じました。開催されたAJ千葉さんに感謝感激ですし、それを選んだ自分も褒めてあげたいです。
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