薔薇の魂
《薔薇の魂》と『MAUD』
上記の記事の見出し画像は、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(John William Waterhouse, 1849-1917)の《薔薇の魂》(The Soul of the Rose)(1903)という絵画です。
中庭らしき場所で薔薇の花の香りを嗅いでいる女性を描いたこの絵画は、アルフレッド・テニスン(Alfred Tennyson, 1809-1892)の『MAUD』(モード)(1)という詩の一節に由来するものと言われています。(2)
「And the soul of the rose went into my blood,」という部分から由来しているようです。
この詩は、MAUDという女性とMAUDと恋に落ちた語り手を巡る物語であり、情熱、愛、喪失、深い憧れ、をテーマにしています。(2)
「薔薇はその鮮やかな色彩と香しさという視覚と嗅覚にうったえる相乗的効果のゆえに、「麗しい女性」「恋愛」「愛」との連想が特に強い。」(3)と言われていますが、『MAUD』はこうした要素のある詞であり、詩の中でもrose(薔薇)という単語が何度も使われています。
MAUD
本記事の見出し画像は、テニスンの『MAUD』が掲載されている『Idylls of the King and Other Poems』の挿絵の元となった写真で、MAUDという女性をイメージしたものです。
モデルはMary Ann Hillierで、撮影はイギリスの写真家Julia Margaret Cameron(1815-1879)です。甘く、幻想的な雰囲気から詩の世界観を表現している写真です。
『MAUD』の挿絵そのものは以下になります。
この挿絵は、Engraving(エングレービング:銅版印刷)によるもののようです。
エングレービング(銅版印刷)とは、「銅板に彫刻を施し、彫った箇所にインキを詰め、プレスしてインキを紙に転写させるという印刷技法。細い線が際立って見え、インキの濃度が高く、色に深みがある。」(3)というものです。
元の写真の陰影を上手く表現しています。
まとめ
絵画《薔薇の魂》は、詩『MAUD』の一節に由来すると言われています。『MAUD』は、薔薇の象徴でもある「麗しい女性」や「恋愛」に関連する詞です。
薔薇は、その象徴性が多様で普遍的であるため、様々な芸術や表現に広く使うことができると考えられます。
薔薇の象徴性こそが薔薇の魂なのかもしれません。
参考文献
(1) Alfred Tennyson Baron Tennyson. Maud and Other Poems. Boston, Ticknor and Fields, 1855, 160p. https://books.google.co.jp/books?id=1hDwSQKrYggC&hl=ja&source=gbs_navlinks_s.
(2) artincontext. “『The Soul of the Rose』 by John William Waterhouse – A Detailed Analysis”. ART IN CONTEXT. https://artincontext.org/the-soul-of-the-rose-by-john-william-waterhouse/.
(3) 濱本秀樹. 薔薇の象徴空間. 渾沌 : 近畿大学大学院総合文化研究科紀要(Chaos). 2020, no. 17, p. 83–102.
(4) 一般社団法人日本銅センター. 銅板に品格を刻むもっとも高級でフォーマルな印刷 銅版印刷. 銅=Copper&Brass. 2019, no. 188, p. 10.
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