東京2020オリンピックSideAを観た私(風民)の感想


風さんが音楽に携わった映画。
気にならないハズないが、五輪公式ということで最初どうも抵抗があった。

なぜなら、ほとんどの人と同じく『日本でオリンピックやったよ!すごいでしょ!バンザーイ!』
という2時間なのだろうと思ったからである。

私は0歳を育児中なので映画を観に行くのは容易な事ではなく、当初はサントラが手に入ったらいいな程度に思っていた。
しかし、いろいろな方の感想を見ていると、どうやらそういう作品ではない様子...。

気になり始めて、推しが同じ時代を生きていて活動しているからこそ上映しているのに、
観ないのは勿体無いという結論になり、色々頑張って行ってしまいました。笑
以下、感想を残します。(ネタバレあります)

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話題の冒頭部分で流れる「君が代」の歌唱だが、風民である私でも音の入り方にゾワッとしてしまった。
前触れもなく耳元で歌われる感じ...。
しかし、ここでグッと映画の中に引き込まれる。
今から始まるよ。何があったかちゃんと聞いてねと言われているかのように。

そんな「日本」を象徴する歌を流しながら一部現れる「反オリンピック」デモのプラカード
これが「東京2020には反対した人がいた」という事を無視していない証だったと思う。
IOC公式の作品で、あえて「アンチ」がいたというメッセージ。

この時点で「フラット」な表現を目指している事が感じられて好印象だった。
監督が「藤井風」に依頼したのもわかる気がする。
どこかの立場に固執してこの2021年に実施した五輪を残したら間違った記録になってしまう。
風さんの姿勢の1つである「固執せず・真っ平らに」の精神を拝借したかったのかもしれない。
(それか、監督が風さんの事が大好きで、逆に影響されてフラットな視点で書かれたかとかでしょうか。風民としては大いに共感できますけれどmore)

そこから様々な選手のオリンピックへのストーリーが語られる。
自国発祥の竸技としてのプライド。守りたい誇り。
国を離れ、家族と離れ、祖国に阻止されながらも貫いた出場。
妊娠出産を経てアスリートとして続けた人。辞めた人。
などなど...。
良いと思ったのは彼らのパーソナリティがナレーションで情報提供されるのではなく、
彼等自身の発言や会話で入ってくるという事。
よくあるドキュメンタリー番組のように「何年生まれ・どこでどのように育った・現在はこんな事をしている」という履歴書を読むような時間はなく、「私には10代の息子がいるの」という発言でこの人には子供がいるんだとわかる感じ。
過剰な情報提供をしない事で、この人はどんな人なんだろうと考える余白ができて心地よかった。

また、その人を写す時、多くは顔のアップ(主に目)が多かった。
最初は「近っ!!」という感想だったが、これは試合中、引きで撮影される事の多い選手たちの普段見えない表情を収めておくためなのだと私は感じた。
目つき、シワ、汗...人間らしい息遣いを感じる事ができる。

選手エピソードから感じた事は「2020年のオリンピックの多様性」でしょうか。
スポーツというと私は若く逞しい男性がイメージが出てきがちだが、経産婦でも代表選手をやるよ。授乳中の子だって連れて行くよ。
もちろん辞めたって良いんだよ。
自分が近いライフステージにいるから、どうしても女性・母のストーリーが印象に残ってしまうが、きっと監督もここに焦点を当てたかったのだと思う。
前回の1964年東京オリンピックと大きく異なる部分だと推測されるので。


そしてどなたかの発言に
「アスリートってだけで超人に見られがちだけど、僕らだって人間だ。みんなにも続きがある」
で旅路を思い出してしまうし、
難民ボートのシーンや、苦難を回顧するシーンで水中の映像があった。
海→生命の起源→みんな変わらないよ。同じだよ。
さらに上空からでなく、水中から空を見上げるような視点。「息苦しい・もがいている」という印象を受けた。
ロンリーラプソディというか、また旅路というか...完全に沼の中の人の感性だが、そのあたりを想起してしまう。
でも辛いシーンをドラマチックに誇張して描くのではなく、こんな調子で音楽も少なく穏やかに表現していた。
このような描写の映画だと思ってなかったから、意外でもあり観やすかった。

音の面で言うと各竸技よくこんなに音を拾っていたなと驚くほど実際の動く「音」で表されている。
(後から当てているのかな?詳しくはないが)
BGMらしく音楽が入る競技は「スケボーとサーフィン」のみだった。ピアノメインの音楽が入る。
それぞれ会場BGMも、声援も若者らしい音がガンガンに入った方がリアルな感じがしそうだが、他競技から浮きすぎるためにピアノになったのだろうか??
風さんはどんな風にこのシーンの依頼を受けたのだろうか。
MUSICAで作曲には自信があると言っていたしその辺のエピソードも聞いてみたい。

エンディングでは予想外に子供のコーラスが入る部分があり驚いた。
風さんの歌唱に子供の声がミックスされるのが新しすぎて。
いい意味で、更に大衆向けな部分に足を踏み入れた感じがして良かった。
前から思ってたけど、風さんがそのベクトルで作る音楽はどんな作品が楽しみです!
(米津さんのパプリカ的な方向性のこと)

全体を通して赤ちゃんや子供が予想以上に登場した。
オリンピックって何なの?何のためにやったの?の問いに対して「未来に何を見せるか」と言う言葉があったと思う。
(多分。記憶なので正確ではない...)
ここも五輪万歳じゃなかった点。
「日本の開催だから〜」「こんな努力をして我々は頑張ったから成功したのである〜」
みたいな発言はちっとも無かった。

でも最終的に私が感じたのは「みんな自分の立場でやりたいと思ったことやってる」ってことだった。
大会委員・反対デモ・選手・自宅待機する人・会場周辺に集まる人・ルール通りやる人・ルールを変えてでもやる人...
いろんな人が登場したが、結局自分と他人は別の生き物。立場も違うし見えている世界も違う。
だから同じ物を見ても受け止め方が違ってくるし、それにより発言や行動も異なる。

 その事は変わらない

『ーWhat’s the difference There's no difference』 The sun and the moonより

 あなたも私も違わないねって

そしてこの事を感じた時、私の頭の中で鳴っていたのは主題歌よりも今の所「まつり」だった。
「比べるものは何もない 勝ちや負けとか一切ない 好きにしてください」
毎日愛しき何かの祭り。生きているだけで尊い旅路だし、各々それでいい。

風さんが音楽を担当して、内容に落胆してしまう類いの映画では無かったと思うし、
非常に大衆向け且つ記録映画として観やすい作品だったと思う。
Side Bはどんな作品なのか、観た後にSide Aの感想が変わるのか。
ちょっと興味深くなりました。

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