名優たちの仮名手本忠臣蔵

BSで放送された1986年の国立劇場公演「仮名手本忠臣蔵」を視聴。
歌舞伎公演データベースで調べたら、1986年の10月〜12月の3ヶ月で大序〜十一段目まで本当の本当に(上演されてない段が無い)全て通しで上演されていることにまず驚く。これを当時の歌舞伎界を背負っていた名優たちが演ったって言うんだからそりゃ最高峰だわな。

ただ、放送されたのは三段目の松の間〜四段目の扇ヶ谷塩冶館の場、七段目の祗園一力茶屋の場だけ。大序、討入の場はダイジェストって言えないくらいのただ映像が流れただけ。
他の段は一切放送されず。

「戦後歌舞伎の集大成」と銘打っているんだから、大序〜十一段目まできっちり放送してほしいんだよなー
放送日程上無理なのは分かるんだけど、歌舞伎の三大名作の一つだし、今後全編通しで上演されるかなんて分からないから仮名手本忠臣蔵という長〜い話の流れをちゃんと理解したいという気持ちもあるわけ。記録として残しておきたいわけ。

以下放送されなかった場面で特に見たかった段の配役を記載しておく。

四段目後の道行旅路の花聟
勘平→十二代目團十郎
お軽→当時勘九郎だった十八代目勘三郎

五·六段目
勘平→十七代目勘三郎、お軽→七代目梅幸
斧定九郎→初代辰之助、母おかや→二代目又五郎
この配役見たすぎるじゃん!!
それに三段目で師直やってた勘三郎と判官やってた梅幸が恋人の役にガラッと役どころが変わるっていうのも見たいポイントの一つ。

八段目道行旅路の嫁入
戸無瀬→六代目歌右衛門、小浪→中村松江(現·魁春)

十段目 天川屋義平→富十郎

九段目〜十一段目の由良之助が十七代目羽左衛門。
これも三·四段目の十三代目仁左衛門の由良之助と見比べてみたい。

でもおそらく今回の放送で終わりなんでしょうねえ…


文句ばかりじゃアレなので良かったところも。
昔の役者は声が良いなあと。
梅幸の判官が切腹する前の張り詰めた空気の中で発する「力弥、力弥、由良之助は」というセリフにグッと引き込まれる。
七段目で平右衛門を演った羽左衛門、恥ずかしながら世代的に羽左衛門という名前は知っていてもどういう役者なのかは存じ上げていなかったので、今回が初見。
低音で腹の奥から発せられる声が良くて本当に引き込まれる。孫である現·彦三郎、坂東亀蔵兄弟の美声はお祖父様ゆずりなのね。

あと、物語の世界を演じてるじゃなく、完全に生きてる感じがする。
役を生き切ってるなと感じることは申し訳ないが今の役者には感じることが出来ていない。
でも今の役者にはここまでのことはできないから上演しない。のではなく、何度も何度も上演を重ね、年齢を重ねていくうちに身についていくものだろうから、やっぱり新作ばかりでなく古典を今の若手にどんどん演ってほしいなと思う。
果たして私が生きている間に「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」を見ることは出来るのだろうか。

最後に国立劇場公演の映像まだまだ見たいのがあるから(特に吉右衛門さん)、どんどん放送して下さいね、NHKさん。