息子が自転車で公園へ行った日
息子の5歳の誕生日に、自転車をプレゼントした。
コロナ渦にストライダーの腕をめきめき上げ、近所のお友達の自転車を借りて練習に余念がなかった息子、補助輪なしですぐ乗れるようになった。
しばらくは家の近くの小道を走るのみだったが、休日に遠出をすることにした。家族でよく行く大きな公園だ。
電動自転車のフロントシートに娘をのせて、いつも息子がのっていたリアシートには荷物を。なんだか後ろが心もとない。私、息子、夫の順に並んで、公園へ向かうことにした。
楽しみ半面、緊張した面持ちの息子。背筋をぴんと伸ばして、まっすぐ前を見て、「なぜそこで?」と思う場所でブレーキをかけながら、慎重に自転車を走らせていく。
少し離れた場所からその姿を見たとき、胸がつまった。
この公園へは何度も足を運んだ。最初はベビーカーで、そのうち自転車で行くようになった。
息子はいつも、いつも、ただのせられていただけだったのに。
自分の力で、自分の意志で、前へ進んでいく姿。今は私たちと一緒でなければどこへも行けないけれど、もう少し時が流れたら一人でどこかへ行くようになるだろう。さらに時が流れたら、もう彼がどこへ行くのか、把握さえできないようになるだろう。
今はまだ、息子にとって家と保育園が世界のすべて。一人でどこへも行けない。でもそれもあと数年のこと。まだ想像すらできないけれど、いつか必ず私たちから離れていく。
そんなことを思ったコロナ渦の3連休。時とともに忘れてしまうだろう寂しさ、切なさを書き留めておく。
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