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いつか終わる恋


これはいつか終わる関係だ。

始まった時からそれはわかっていた。
関係性を深めていくあいだ、
寝ても醒めても相手のことを考えて、
時に涙を流し、
時に思い浮かべては笑顔になり、
どれだけ真剣にその感情に向き合っても、
ふたりのあいだに「未来」だけはない。

目が覚めてまずLINEを確認する。
夜更かしな君からのLINEはいつも私が寝静まった後に返ってくる。
もう何ヶ月も途切れず、なんてことないやりとりが続く。
「おはよう」のスタンプは何もう何種類使ったことだろう。
今日は昼休みに返事をくれるだろうか。
今日はどうやら残業してるようだ。
LINEの返信時間で相手の繁忙度がわかる程度には、関係は熟していた。

桜の散る頃に出逢い、お花見ができなかったことを嘆き、でもまた来年、とは言えなかったあの頃。
こんな関係が年単位で続くことは奇跡に近いのを、それなりに積んだ経験でわかっていた。

夏、初めて「好き」という言葉を口にした。
口にすればするほどに、想いは重さを増した。
逆に、言葉に出して伝えられないと不安だったのが、行動で伝わる感情もあることを知った。

遠回りしてまで、一緒の電車に乗って送ってくれる時間。
毎回ホームで電車が発車するまで手を振ってくれる姿。
分かれて数分後のLINEに「もう寂しい」と送ってくれること。

相手が嫌がったらどうしようと思い、自分からは繋ぐことの出来なかった手を、今は自ら絡めとる。
重いと思われたらどうしようと思い、聞けなかった来月のスケジュールをLINEで催促する。
困った顔をされたらどうしようと思い、言えなかった「好き」を真っ直ぐ伝える。

少し前の自分では考えられなかった行動に自分でも少し驚く。
これほどに、好かれているという安心感は自分を変えられるものなのか。

最中、耳元で囁かれた愛の言葉は、陳腐だけれど多分一生忘れることはない。
泣いてしまいそうなほどに嬉しかったなんて、君にでも言えそうにないけれど。

ただ、どれだけふたりが真剣で、
お互いを想い合う時間があっても、
きっと終わる瞬間は突然訪れる。
どちらかが飽きるのかもしれない。
お互いの努力など関係ない、どうしようもない状況になるのかもしれない。
または、関係ない人が聞いたら呆れるくらい些細なことかもしれない。
これはいつか終わる恋だ。
いつか終わる恋、なのに。

もう少しだけ、そして願わくばその少しが出来るだけ永くありますようにと、祈らずにはいられないのだ。

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