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【ショート ショート】 猫耳おやじの随想

俺には友人と呼べる奴は、一人もいない。
だからといって不幸かと問われたら、全くもってそんなことはない。
むしろ俺に関わらずにいてくれて『ありがとう』とお礼を言いたいぐらいだ。
俺の人生を誰にも邪魔されたくないし、もちろん俺も、誰かの人生を邪魔したりなどしない。
そもそも、他人に興味なんてないからね。

わかってるよ、自分が異質だってことくらい。
きっと、何かが欠落しているんだろう。
協調性?優しさ?
それは、俺が一番苦手とする分野だ。
感情か愛情か、それは…無いに等しいな。
涙は…玉ねぎを刻んだ時には出たよ。
一応、体は人間なんでね。
心がどうかは分からないけれど。
俺のことをサイコパスだという奴もいたっけ。
いいよ、何とでも呼んでくれたまえ。
可哀想な奴に見えるかもしれないけど、
俺は俺のルールで生きてきたし、これからもその
スタイルを貫くつもりだ。

だけど、人生って分からないものだね。
ある日の朝、頭から耳が生えていた。
何で?
何の耳かわかるかい?
猫の耳さ、角ではなく猫の耳だ。
これが巷で流行っている猫耳ってヤツか?
JKたちのは飾り物だろ、俺のは本物だ。

神さま、これは何の罰ですか。
確かに他人の気持ちは分からないし、酷い言葉も言ったよ。
俺ルールだし、サイコかもしれないけどさ、
そんな奴、他にいっぱいいるだろう?
何で俺?
オジサンと呼ばれる歳になってからの、猫耳は
キツイわ〜。
俺のこれから先の人生は、この猫耳と一緒に
過ごさなければならないのか…💧

外出する時、帽子は必須アイテムだ。
誰にもバレてはいけない。
もしも見られたら、猫耳おやじで有名になるかもしれないな。
いや、変人猫耳おやじ?
いやいや、変態猫耳おやじ…… 考えまい。

最近では顔も何だか猫っぽくなってきた気がする。
最終形態は、たぶん化け猫だな。
でも何か、それはそれで面白いぞ。
まず、近所の猫の集会には顔を出さないとな。
ボスはもちろん俺様だ。
若い頃は、アメフトに空手にボクシングやってたし
野良猫なんかに負ける気がしないからね。
問題は、猫語だな。
それは、明日考えよう。
その前に、腹ごしらえだ。
さあ、高級サーモンでも食べようっと。




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