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アーモンド・スウィート

 中嶋彩葉は怒っていた。自分に対して、そして遊海秀嗣に対して怒っていた。
「ばッかじゃない」
 秀嗣が渡辺珠恵、渡辺理加と一緒の班になったときに、一瞬嬉しそうな顔をしたのを彩葉は見逃さなかった。
 なんであんなバカに自分が好かれているなんて勘違いして、バカに告白させようと今日一日悶々していたんだろう。昨日まで口だってまともに利いたこともないのに。朝の一瞬に魔が差さなければ勘違いもしなかったろうに。
 勘違いだったで済まない。だけど「好きかもしれない」とバカは言っていた。彩葉がもう一押ししたら「好き」とはっきり言っていたかもしれない。あんなバカに好きと言われても迷惑なだけだけど、「好き」と言わせるのは気持ちいい。好きだと言わせてから振るのはもっと気持ちイイだろう。
 私のことを好きと言わせたい。W渡辺のことを好きだとしても、私に好きと告白させて、そしてみんなが見ている前で「バカじゃない」「顔見て言えよ」「頭も悪い、運動も出来ない、性格も悪い、どこを好きになって貰えると思って告白してきたわけぇ」と言って、ドンと突き放すように振りたい。
「ばか…」
 もしわたしが、渡辺さんたちと一緒の班になるように動いていたら、あのバカはどうしただろう。ハーレムと思って今ごろ鼻の下が伸びていたんじゃないのか。それとも困った顔をして、わたしに助けを求める視線を送ってきたか。
 矢崎さん、田中さんと全然仲も良くないのに同じ班になった。だったら渡辺さんたちを誘って同じ班になれば良かった。菅原、染谷のことは何とも思っていなかったんだから。なんで一緒に班になるように動かなかったのかな、わたし…。
 川和田くんのことは少し良いなと思っていたから、何となく川和田くんと一緒の班になるように動いてしまった。川和田くんとバカが普段仲が良かったこともあるし、一緒になるじゃないないかと予想してもいた。菅原とも仲が良かったのは知らなかった訳じゃないけど、川和田くんはバカに声を掛けると思ってた。まさか山田、柳瀬が川和田くんに声を掛けて、そのまま一緒の班に決まってしまうなんて。
 じゃあ悪いのは山田、柳瀬じゃない。いやバカも同罪です。早く川和田くんと一緒に成ろうぜと言えば、山田と柳瀬も川和田くんに声を掛けなかったはずだから。
「あーっ! バカ、バカ、バカ…明日の朝、なんて言ってやろう」
                             (つづく)

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