アーモンド・スウィート 雨漏り
雨が降り続いている。最近の雨は異常だと思う。
秀嗣の近所に住むおじさんの家が、1時間に50㍉も降ったの集中豪雨で雨漏りをするようになったらしい。可哀想に。
ばあちゃんといっしょにおじさんの家へ、秀嗣は見に行ってきた。おじさんはばあちゃんの弟で、ブリキや鉄で屋根を外壁を作ったり、トヨを作ったりする仕事をしている。とても身軽な人だ。背はそれほど高くないが、手足は長い。本当に猿のような人だと、小さい頃秀嗣は思っていた。高い場所に上るのも平気、高い場所を移動するのも平気。それでも二度ほど、三階くらい高さから落ちたことがある。入院するほどの大怪我だったが、後遺症は残らなかった。一度だけ、秀嗣もばあちゃんの後ろに付いてお見舞いに行った。しかし三ヶ月、四ヶ月もすると退院してきて、半年後にはまた三階以上の、十階くらい上の壁によじ登って換気用ダクトを取り付けていたり、屋根を付けていたりしている。高いところは怖くないが好きでもない、仕事だから上がっているとおじさんは言っていた。
そのおじさんの家の屋根から雨漏りをするようになったそうだ。天気が良くなったら、自分で屋根を葺き替えるつもりだと話した。
まだ雨水が、完全に家の中から抜けきっていないから、ポッタン、ポッタンと天井からの雨のしずくが絶え間なく壁を伝って落ちてきていた。
興味本位で付いていった秀嗣だが、ポッタン、ポッタンと滴が落ちる、生ぐさいホコリくさいい臭いが充満する部屋に座っていると、何だか段々惨めな感じがしてきた。鬱々した感情が体に染みてきて、逃げ出したくなった。
「神さま、ボクの家が雨漏りしませんように」と心の中でずっと呟いていた。
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