アーモンド・スウィート
ぞくぞく登校 凜々花と瑠衣
秋元凜々花(りりか)は今日も朝から佐久間瑠衣ジェンキンス(るい)に腕を回して一緒に登校している。凜々花が寂しがり屋で甘えん坊な性格だということは五年一組の中はもちろん、学年中に知られていた。その甘えん坊の性格は小学校の前の保育園に通っていたときから、同い年の子たちは誰もが承知してるいる凜々花は思っている。だから気を許した人にはベタベタしても良いと勝手に思っていた。とにかく嫌われたくない。嫌われないためにはキスだって積極的に自分からするし。女の子同士で手をつないだり、腕を組んだり、キスをしたりは何とも思わない。口さがない人達は「凜々花はレズだ」とか、「身体目当てに近づいてくる怖い女」だとか陰口してるのを知っている。以前は耳にして沢山泣いたが、いまは全然気にしない。当時より凜々花は強くなった。
「重いよ。真っ直ぐに歩こ」瑠衣は凜々花に絡まれた腕を抜くようにしながら言った。
「瑠衣ちゃん。昨日、解禁されたWestDragon(西龍)の新曲のPV、見た?」逃すまいと、凜々花は脇を締めてさら瑠衣に絡みついた。
「わたし、別にWestDragonのファンじゃないよ。Theseus(テセウス)は好き、ては言った気がするけど」
「じゃあEXOは? BTSは?」
凜々花はキラキラした瞳で瑠衣を見上げた。凜々花の自慢は大きな瞳と睫毛。その瞳はしろ目に濁りが無く澄んだ真っ白で、睫毛は艶があり長い。この目には目力がある、魅力があると感じていた。ついでに言えば鼻も高からず低からずで形もほどよく、目から鼻までは自分でも自信を持っていた。あとは狭い額も、少し薄めの唇も、頬の高さも不満いっぱいで、毎日鏡を見るのも嫌だったが。
「韓流のグループはそんなに詳しくないんだ。どれも一緒って言わないけど、秋元さんは詳しいの?」
瑠衣の父はスコットランド系アメリカ人で、母は日本人。瑠衣は身長が160センチ以上あって、肌が白く、髪はハリウッド・スターのニコール・キッドマンの元々髪色で知られているレディッシュで少しウェーブしている。
凜々花は白い肌、赤い髪で背の高い美少女の瑠衣と友達になりたくてしかたがない。目立たないブスな子より、目立つ美少女の隣。注目のされ方が違う。よくそこそこの可愛い子は自分を引き立てる為の凡庸な子を友達として連れていると、雑誌やテレビでいわれるけど、瑠衣のような美少女はその範疇には入らない。一緒に居るだけで、隣の友達も特別な存在に見せる力があると思っていた。
「わたしもぜんぜん詳しくないけど。でもYouTubeで見つけるととりあえず一回は先入観を持たずに見てるかな」
「そうなんだ」
「ねえ瑠衣ちゃん。今度いつ、瑠衣ちゃんが載ってる雑誌出るの?」
瑠衣が原宿、渋谷、新宿を歩けば誰もが振り向く。そして小学校に上がる前から、モデルとして瑠衣自身は仕事をしていた。今はティーン向けのファッション雑誌をメインに仕事をしているが、父も身長が190センチあり、自分も175センチ以上になると思っているから、ゆくゆくは世界のファッションショーのステージに立つことを夢みている。瑠衣にとってファッションモデルは夢ではなく人生計画の一部。仕事でお世話になっているカメラマンさんやスタイリストさんなど周りの人には、世界を飛び回るモデルなる、と公言していた。
「まだ分からないけど…、たぶん二ヶ月後には出ると思う。今度は表紙もやらせてもらったから、学校のみんなにも分かるよ」
「凄いなぁ。じゃあいつか雑誌の企画かテレビに出演して、EXOやBTSの誰かと、一緒に成ったりしたら教えて」
「向こうはアーティストだから、年齢も十歳以上も違うし、一緒に何かすることは無いんじゃんかな。わたしより、それこそ十歳上のモデルさんや女性タレントさん方と一緒に仕事をすると思うよ」
「瑠衣ちゃん大人っぽいから、十歳の年の壁なんて一気に無効化できるよ。それに瑠衣ちゃんの隣には誰だって立ちたいと思うよ」
凜々花ははっきり言いった。しかし瑠衣は、11歳の自分が老けて見ると言われたようで非常に傷ついた。
瑠衣の気持ちも知らず、凜々花は「ねっ」と満足そうに笑い、そしてギューッと瑠衣の腕を抱きしめた。
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