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アーモンド・スウィート 勉強は修行と思え

 彩葉は自分の部屋を持っている。女の子らしく、白とピンクと淡いブルーの家具や絨毯、カーテン、ベッドに囲まれた彩葉のお気に入りの場所だ。本棚にはひらがなを覚えた五歳の頃買ってもらった絵本が三十冊以上したの段にあり、中段二段には小学校上がる前から買ってもらった、岩波少年文庫、青い鳥文庫、偕成社文庫が並んでいる。ニンテンドーDSとニンテンドースイッチも持っているが現在は使って遊んでない。遊ぶとしたらもっぱらスマホでオンラインゲームを少し息抜きにする程度だ。SNSは、学校で禁止されているので大々的にはやってないが、クラスの女子や五年生三組の女子たちの中で横断的にLINEのグループが有ったりするので、仲間はずれに成らない程度に、また距離が空きすぎない程度に返信したり話題を振ったりしている。塾で知り合った男女の仲間とも、受験について情報交換に使っている。
 彩葉の今の生活全てを、勉強と受験への備えにつぎ込んでいる。もともと知識を得、考えを深め、好奇心の赴くままに勉強することは嫌いではなかった。本は物語りでも、科学雑誌での、ファッション雑誌でも、大人が読む週刊誌(新潮、文春など)でも読むのが好きだった。知らないことを知ることに嬉しさを感じてた。ゆくゆくは何か研究者になっても良いかなと思っていた。理系リケジョと呼ばれるのも悪くないと思っていた。

 いま、彩葉は勉強は修行のような物と考えている。教科書を丸暗記する。天野先生の授業を丸暗記する。塾での授業を丸暗記する。過去問の模範解答を丸暗記する。塾のテキスト、問題集の設問から回答までを丸暗記する。
 勉強が出来ないとか、テストの点数が良くないとか、成績表の評価が良くないとか嘆いている人たちは、努力、修行が足りないのだ。圧倒的に頑張りが足りないのだ。嘆いて時間があるなら、泣き言を言っている時間があるなら、教科書でも、授業内容を写したノートでも、塾のプリントでも丸々覚えれば良い。
 彩葉は、まだ十一歳なのに二日に一遍は頭が痛くなる。首筋と肩はコンクリートで出来ているかのように固い。生理が小四からあるが、生理痛も酷く期間中はお腹も凄く痛くなり、吐き気まであり苦しい。それでも頑張っている。熱湯がグラグラ湧く鍋の中のように、極寒の山の中で三十メートルの落差がある滝に打たれているように、喉の渇く砂漠を炎天下に軽くように、身体と心を酷使して修行をしているようだと思う。
 頑張って、頑張って、頑張って、頑張って、まだまだ頑張って、中学校、高校、大学、足りなければ大学院、アメリカを含む外国に留学して勉強して自分の夢を叶えるんだと歯を食いしばっている。

 遊海秀嗣、お前は全然甘いんだよ。泣き言を聞かせてくるんじゃない。
 貴方の泣き言に返す言葉もないから、「頑張って!」としかない。
 わたしと一緒に進みたいなら、(学生の立場)状況を受け入れて、勉強「試験」、勉強「受験」を嘆くな。みんな、お父さん、お母さんの時代、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんの時代、ご先祖様の時代から、上の学校に進むためには、受験と猛勉強は避けられない、逃げられないんだよぉ。

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