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アーモンド・スウィート

 自分の部屋で考え事をしている秀嗣。今日の午後に行われた、校外学習の班分けのことを思い出して頭の中はいっぱいになっていた。
 渡辺珠恵の横に立ち、ときどき珠恵に顔を見ながら、クラスを様子を見ていた。はっきり言えば、珠恵の顔と彩葉の顔を交互に、見ていた時間の方が長かった。彩葉は班分けの流れを見ているのに集中して感じで、秀嗣のことを観察している様子は薄かった。珠恵は教台に両腕を伸ばして置きどうどうと班分けの進行をしていた。秀嗣はサポートの仕事をするように担任の天野先生から言われていたけれど、珠恵がどうどうとしていたので逆に邪魔にならないように、無駄に口を挟まないようにしていた。
 自分が途中でしゃべろうが珠恵が進行しようが、班分けという一大事だったのから、クラスのみんなは思い思いにしゃべり教室はうるさかったと感じたので、責任者失格とはならないだろう。
 彩葉が矢崎芙巳子に声をかけたのは意外だった。しかし、金里グループ、米山グループと合流するとは思えなかったので、自然と秋元、佐久間と一緒になるか、W渡辺と一緒になるかだろうとは想像できる。
 永井苺の欠落が想像以上に大きい物らしい。山崎三保子は永井の不在を嘆いていたし、永井が不登校になる前は彩葉と永井が休み時間にしゃべっていたのよく見た気がする。もし永井が居たならば矢崎ではなく、彼女のを中心に三保子と彩葉の三人がグループを作っていたような気がする。
 すると田中千鶴が最後まで残っていただろう。山崎は藤巻グループから声をかけられたと思うから。そうなると田中がW渡辺と秀嗣と一緒に班になったわけだろう。

「忠夫と染谷が嫌がりそうだな。じゃあ…三保子はウチの班に引っ張ってこないとな」
 藤巻のところに田中が入ったら、一騒動だろうな。藤巻はクラスの中でも相当にプライドが高い。米山英瑠に腕力で勝てなかったが、口と勢いではあの米山をのけぞらせたのを見た。その時に教室にいて目撃た誰もが背筋が寒くなったはず。大型犬とボスメス猿の戦い、まさに犬の猿の喧嘩上等。
 金里穂乃佳とも口でやり合った姿も見た。金里の機関銃のような言葉の銃弾を浴びて泣きながら口を返していた。金里に三日連続で口撃されても毎日学校に来た。気が強いと、クラスみんなで尊敬する気持ちになった。しかし、金里が笑顔で(笑いながら)口撃するようになって、ついに藤巻の心も折れてしまった。しかたがない、金里の笑顔は悪魔の微笑みと同じくらい怖かっただろう。夜寝るときに夢にまで見て、眠ることも出来なかったんじゃないかなと思う。
 
 今日のことを思い出し、いろいろと想像してたら秀嗣は気が沈んでいまった。W渡辺と一緒の班になれたうれしさも半分になってしまった。

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