逢坂剛 「百舌シリーズ」
第三回目
「百舌の叫ぶ夜」「幻の翼」「砕かれた鍵」「よみがえる百舌」「鵟の巣」「裏切りの日日」「墓標なき街」「百舌落とし」と、30年に渡って続いたこのシリーズ、一昨年の「百舌落とし」で完結しました。ここまで続くと段々とパワーが落ちてトーンダウンするものですが、最後まで面白かった。このシリーズだけは、断捨離で古書店に引き渡さないで取っておけばよかったと思います。
特に最初から4作目は、飽きさせず迫力があり一気読みでした。登場人物のそれぞれがとても魅力的。主人公の警視庁公安部の倉木警部、その妻(のちに爆破事件で命を失う)、後に2番目の妻になる元部下の明星美希警部、所轄の刑事で後に私立探偵の大杉。テロリスト「百舌」も謎に満ちていて引き込まれます。そして主役の倉木警部は何作目かで殉職します。もうびっくりですよ。主役がいなくなるなんて。その後の巨悪と戦うのは公安部所属で偉くなった美人の倉木美希警部とむさ苦しい大杉探偵です。さてこの2人の関係は?世の中のむさいおじさん達に朗報ですよ。
「百舌」といい、倉木の周りの人間といい、キャラが際立っています。百舌ですら生い立ちが凄くて同情してしまいます。これは作者の圧倒的な筆力ですね。テンポの良さ、魅力的な登場人物、多彩な表現力、官能シーンも素敵ですよ。
2014年にMOZUシリーズとして、「百舌の叫ぶ夜」(TBS)と「幻の翼」(WOWOW)が映像化された時に、古い本を引っ張り出して再度読んでみました。倉木は西島秀俊、大杉は香川照之、この2人はイメージ通りで好演していました。明星美希役の某女優が棒演技で残念な結果になりました。やはり本の方がイメージが膨らんで面白いです。作者の卓越した文章力の勝ちと言ったところですね。
逢坂作品では初期にスペインに題材を取ったものが数多くあります。卓越したストーリーテラーであるだけに面白い。おかげで「スペイン内戦」に詳しくなりました。この百舌シリーズでは警察組織図に強くなりました。実際には余り役に立ちませんけれどもね。笑。
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