おもちゃ箱を手放した理由
お店を飾るのはとても楽しいことでした。
その中で施術するのも、お客様に店内を楽しんでもらうのも。
そんなに楽しい場所を手放した理由は、例のウイルス騒ぎです。
騒ぎの始まったばかりの時は、免疫を上げておくためと思う方が多かったのか、たくさんの方が御来店いただいたのですが、緊急事態宣言が出た途端、閑古鳥が鳴きました。
待てど暮らせどお客様は来ない。
朝から晩まで客待ちをしていたら、少しづつ気持ちが壊れてきました。
先が見えなくなり、何をどうしたら良いのか途方に暮れる毎日。
せっかく台湾まで修行に行き、家族との時間も取れなくとも頑張ってやり抜いてきて、やっと手に入れたおもちゃ箱の様な楽しいお店。
何年続くかわからないウイルス騒動を乗り越えるだけの資金力もなく、強いメンタルがあるわけでもないので、
みんなが好きでいてくれた場所だけど、手放すしかないのか?と思っていたところに、閉店せざるを得ない出来事がいくつも起こり、結局手放すことになりました。
しばらくおかしくなっていましたが、後から思えば、きつい出来事がなければ、20年以上頑張ってきた仕事を手放そうとはしなかったと思います。
たぶん誰しも、人生の流れや導きという観点から自分の軌道を見ると、いろいろな事が納得いくのではないでしょうか?
渦の中にいると、ただ嘆いたり慌てたりしているものですが、視点を高く持つと、その渦でグルグルしている自分が滑稽に見え、その時立っている場所の確認ができるというものです。
その時の私を見ていた人達は、そんなに冷静じゃなかったじゃないよ!と言うと思いますが、後から考えると、全てがベストタイミングなのでびっくりします。
そして、頑固で不器用な私は、100年に一度のウイルス騒ぎぐらいの事がなければ、追い求めてきた仕事の場を手放すなんてことはしなかったな、と納得しました。
仕事自体は辞めているわけではないのですが、店という、お客様と接する場所が無くなると、圧倒的に施術する機会が少なくなるわけで、それを手放すと言うのはとても大きなことでした。
これを転機に今までしたくともできなかったものづくりをし始めました。
まだ半世紀しか生きていない若輩者ですが、人生って面白いなと思いました。