【エッセイ】うそをつくたびに

 嘘っておもしろい。
 僕は、誰かのために嘘をつく。
 その人を傷つけないように。
 その人が不快にならないように。
 そのために自分が傷つくのもいとわない。
 本音を隠してでもその人の都合に合わせる。
 そのたびに自分が死んでいく気がした。

 でもそれすらも嘘だった。

 僕は誰かを傷つけるのが嫌だったわけじゃない。
 いい人だと思われたかっただけ。
 誰かから善人だと思われたかっただけ。
 相手の怒りが自分に向かうのを恐れただけ。
 本音を殺してでも安全を確保したい、ただの臆病者。

 きっと僕は、生きるために、嘘をついている。

 それなのに生き苦しい。
 それなのに息苦しい。
 ソレナノニイキグルシイ。


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