詰み人

 人は人らしくあらねば、バケモノになる。

 たとえば人付き合いをしなければバケモノになる。
 他人からあーだ、こーだ、と言われている間は人間でいられる。

 周りに誰もいなくなったらバケモノ化のはじまり。

 人は自分を客観的に見ることが苦手だから、

「あなたってこうだよね」

 とか言ってくれる人がいなければ、自然にバケモノと化していく。

 他人からの意見や、耳が痛くなる話。
 それらはその時は心地悪くとも、

「あのとき言われたことは的を射ていた」

 と反省させられることもある。

 だからきっと、嫌われることをいとわずに伝えてくれる人というのは貴重だ。
 そういった人と過ごした時間を覚えていられるだろうか。
 そういった人の教えを自分の中にいくつ持っていられるだろうか。

 年をとっても、僕は僕のままで居られるだろうか。

 でもきっと、僕らは自分の中に潜むバケモノを切り離せない。
 ひょんなことでバケモノに飲まれてしまうこともあるだろう。

 僕は一人でいたい。
 僕は人付き合いが苦手だ。

 こんな調子で僕は、人間のままで居られるだろうか。

 今日もニュースで、罪人に石が投げられる。
 元は人間だった、彼らに。
 まるで人権が奪われたみたいに。

 僕は、怖い。

 罪人への怒りや憎しみよりも、罪人になって石を投げつけられる恐怖に震えている。

 そんな自分が、怖い。


 そんな僕はもうすでに。

 人として、詰んでいるのかもしれない。


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こばなし
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