まなさんの「もの作り」と「ひと」をつなぎ、大きく循環していく物語【インタビュー】
今回は鞄職人をしているまなさんにインタビューさせて頂きました。
ゲストプロフィール
久田 学さん 鞄職人
群馬県前橋市出身、草加市在住 37歳
インタビュアー:リオ
Roots社員でねっこっこ〇〇のファシリテーター/インタビュアー
始まる前に、、、
まなさんとほぼ初めまして状態でインタビューしたが、いつもと違う緊張感が、、。というのもまなさんは、どこか近寄りがたい雰囲気があり、正直インタビューしにくいなと思ってしまった、けど終えた今は話せて本当に良かったし、学びがあったので書かせてもらいます。
(インタビュー時間は丸4時間。タイタニック1本分!、、贅沢)
「もの作り」の世界にどっぷりだった青春時代
まなさんの人生は群馬県でスタートする。
父親が大手インフラ企業の技術職で、現場から帰ってくるたびに持ち帰ってきた配線を貰っては電池と配線をつなげて光らせることをして楽しんでいたという。
さらに母方の祖父は板前の職人さんで、昭和天皇が群馬に来た際に料理を作ったこともあるとのことで、まなさんは誇りに思っていた。祖母は畑もやっていて野菜作りにも小さい頃から触れていた。父方の家は車の修理工場をしていて、もの作りに囲まれた環境で育っていた。
小さいときから身近にある「もの」に興味を持ってたんですね。
うん。そうだね。
小さい頃はよく絵も描いてたし、配線つなげて遊んでたし、、
小学生のときは家にあったwindos95でチャットして遊んでたし、
「技術家庭科」の授業ではナップサック作るの好きだったな。
中学も同じ感じですか。
中学は技術家庭科の先生がとても良い人で、作るってことに対してなんでも答えてくれたんだよね。木工とかベルトサンダーの使い方からスイカ植えたいって言ったら植えさせてくれたし。最高におもしろかった。
その先生に薦められて出たピンポン玉を飛ばすロボットコンテストでは全国大会までいったよ(サラッ)
えええええ?!?!
プログラミングとかじゃなくて、パーツを組み立てるタイプのやつだよ。
まぁ最後は負けて悔しかったけどね。
早くも中学生にして没頭してますね、、
人との関わりはどうだったんですか。
うーん、浮いてたな、今思うと。あんましゃべらなかったし。
小学校から中学に上がったときに、学区で分かれるじゃん。おれが行った中学が、知らない小学校からの生徒が大勢いて、、友達作るの得意じゃないから、、、今でも記憶から消したいもん。
今でもそれに対してコンプレックスみたなものはあるんですか。
今でもそれは引きづってて、最初に仲良くなりにくいっていう意味では今もあるね。最初人と何話していいかわからない。
でも、同じ趣味とかあると、仲良くなれるってのもわかってたから、技術とか野菜作りでもいいし、ボランティアもやってたな~。
それは友達とやってたんですか。
そうそう、限定的だったね。心地いい範囲で。
卒業までクラス全員の名前覚えなかったもん。全員と仲良くしようと思ってなかった。それは高校も同じかも、、、。
今と全然人間関係が違うと思うんですけど、振り返ってみてどうですか。
うーん、その頃は、、、、自分が大したことない人間だって思っていた節があって、おれができることはみんなができるだと信じていた。けど大人になって、人間てみんな能力が違うんだ、ってことがわかったね。笑
だからおれ自身もできないことがあっていいじゃんって思えるようになったね。
高校の話を聞かせてください。
総合学科がある高校に行ってね、、科目を選べる制度があって。作るってことに対してすべてに興味があったから、プログラミングを習ったね。楽しかった。言語とかは古いCOBOLとかBASICから始めたね。
あとは、ゲームもやってたし、ポケモンとか遊戯王のカードゲームもやってた。自分で考えたデッキを構築して勝てたときは嬉しかったな。
相変わらず作るや生み出すことに対して制限なく触れてたんですね。
そう。だから中高でアニメもどっぷり見てたな。
アニメは知らない世界を作れたり知れたりできるから、、、
それをみんなで話すのも好きだった。あとはラノベもよく読んでたね。
それってクラスみんなで盛り上がってたんですか。
というよりは、気の合う仲間とやってたね。高校は図書委員会に入ってたんだけど、そこでも気があっておもしろくて、文化祭で演劇やったし、ポッキーの日にいろんなポッキーの味比べイベントもやってた。みんなで何か作り出すことが面白かった。
限定的とか、気の合う仲間とか、人間関係作りが苦手だけど、それはなんで仲良くなってたんですかね。
今思えばだけど、人との間に共通言語があったからだと思う。野菜作りとかプログラミングもそうだし、ボードゲームもアニメも。それがあったから話し易かったね。
ここまでいろんなものに興味を持って生み出したり、遊んだり、触れていたまなさん。文字に起こすと本当に多くのもの作りに向き合ってきたと驚く。そして継続・一貫している。一方で、人間関係は限定的で心地よい範囲に留めていた気質も聞くことができた。
高校卒業後は蒲田にある日本工学院に進学し、アニメ制作を学ぶ。その後アニメの制作会社→別のアニメ制作会社→現在の鞄製作会社に至る。見事にすべてもの作りに関連している。
世界を変えたコロナで草加とつながる
次に大人まなさんのこと聞きたいです。
アニメの仕事は楽しかったよ。けどずっと働くことへモチベとかその先のビジョンとかが見えなかったんだよね。一回同じ業界で会社変えてみたけど、歳を重ねってても、人をマネジメントするより、現場で作りたかったから。
このままだともの作り嫌いになりそうってところまできたんだよね。
そこから鞄の会社に転職してますけど、なんで鞄だったんですか。
そう、アニメって夢を与えたり、知らない世界を作り出せるから好きなんだけど、今度は形に残るものをやってみたいなって思ったんだよね。
どうせやるなら人の生活に寄り添うものが作りたくて、、部屋見渡したら、鞄があったのよ。鞄は出かける時に必要で、一緒に思い出を蓄積してくれるから、よし鞄にしよう。ってなったね。
その鞄の会社が草加にあるんですか。
いや会社は足立区なのよ。草加は近くて通いやすいじゃん。だから家買ったんだよ。2019年くらいかな。
割と最近じゃないですか!
そうだよ!鞄職人だったのに、草加が革産業で有名なんて全く知らなかったんだから。
じゃあ草加を知るきっかけって、、、
やっぱりきっかけはコロナだね。
コロナで鞄を作りたくても、作れない状況がずーっと続いて、かなりフラストレーションになったよね。
外出自粛の雰囲気で外に出ない人が増えたら鞄はいらないじゃん。
会社で生き残るために色んな試行錯誤して、最終的に布マスクつくってたよ。
その時は作ることができない不安とか恐怖がめちゃくちゃあって、、、、。それを抱えながらマスク作ってたね。
そのころからオリンピックも中止で家にいてもやることないじゃん。つまんねーなってなって、どこか遠くに行くより自分の身の周りに目を向けてみたら、住んでる町のこと全然知らなかったのよ。そこから色々調べてたのがきっかけかな。
リノスクと出会い加速した「ひと」の輪
まちを知るのに何から始めたんですか。
何かないかなって調べてたら、旧街道沿いにリノスク案件のお店があるって記事を見つけて、嫁と一緒に行ってみたんだよね。そしたら、素敵な店がいっぱいあってさ、、、その中のひとつ「つなぐば」があって、話聞かせてほしいってメールしたらみのりんとなおさんがいて、、、
今の仕事に対する不安とか、草加を知らない現状とかを全部話したんだよね。したら「谷塚家守塾」に応募してみたらって言ってくれて出したら審査通ったんだよ。
すごい行動力、、、、
谷塚家守塾に参加してからよっしーとましもっちに会ったんだよ。
2人には特別な思いがあるね。そこから本当に色んな人に出会えたからね~
谷塚家守塾・・・
谷塚駅のポテンシャルを再発掘する取り組み、リノスクの前進
なおさん、みのりん・・・
シェアアトリエつなぐばを運営しているお二人
リノベーションスクール(リノスク)・・・草加市で過去7回(草加4回、谷塚3回)行われた「まち作りの短期集中実践型スクール」。内容は公共空間や遊休不動産、実際のビジネスプラン等を題材に、地域経営課題を解決する事業計画を3日間かけて作成し公開プレゼンを経て事業化へと目指していく。まなさんは2021年の第1回やつかと2023年の第3回やつかに参加している。
ここからまなさんは、多くの人と関わるようになり、自分のやりたいを実現していく。あまりにも登場人物と内容が濃すぎるので凝縮して紹介します。
・第1回リノベーションスクール@やつかに参加し「谷ッツカー」結成。
└ エチゴヤ市vol.3で国産レモンを入れたクラフトコーラと
ポテチを作成し販売。
└ LENTOと一緒に畑に老若男女みんなで藍の種まき開始。
「ヤツカノアイ」
→収穫し谷塚不動産で藍染め体験開催。
└ 第2回草魂祭で伊藤産業と一緒に革を使って ヘアゴムやバッジを作るワークショップ実施。
・「ヤツカノアソビバ」主催
└ いろんな場所でボードゲームを開催。
野菜とお酒のバル【スバル】、 谷塚不動産、
さいかいちどブンコ、草加煎餅まるそう一福
・第3回リノベーションスクール@やつかに参加し、、、、
youtubeでプレゼンの様子が見れます!
https://www.youtube.com/watch?v=HBgdCRxPDEE
今思えば拠点がないことが逆に良かったと語ったまなさん。
ひとつのことをやっていると飽きてしまう性分を自負しつつ、
拠点がなかったからこそいろんな場所で好きなことをできたのは、偶然だけど幸せだった。と振り返る。
怒涛の勢いで草加と交わえたのはリノスクでの出会いが大きすぎますね。
ほんとそうで、、、
谷塚不動産でLENTOきょうこさんと藍染めをするありえないことも実現できたし、スバルさんでのボードゲームはすばるさんが普段しないことを常連さんに楽しんでもらいたい想いに共感したからやりたかったし。つなぐば市でボードゲームをやったときは、普段集まらない人達が同じごはんを食べながらゲームしてて、、、
ボードゲームを通じて、普段交わらない人が交わり、お互いが好きなっていくのは、何か新しい出会いが生まれることって素敵だなって思った。うまく言葉にまだできないけど、、。
けどここにきていきなり人の名前とか場所の名前が出ましたけど、
なんでそこに関心や好意が産まれたんですか。
やっぱり、リノスクに参加して価値観が変わったね。
自分以外の様々な価値観に触れられたこと。これが一番得られたことだね。
そこから他人の価値観を共有できるようになった。
リノスクのあの、いろんな価値観が、本気でぶつかり合うのを体験できたからこそ、他人に対して本音をぶつけて、気持ちの共有ができるようになれたな。だからリノスクのみんなには本当に感謝しかない。
実はインタビュー中に本編にも出ているよっしーやましもっち、第3回リノスクで一緒のユニットだったこじまるといった仲間たちが近くにいたり、一緒に話を聞いたりしていた。そこでまなさんは必ず本人を目の前にして感謝の言葉を口にするし、活動の話で関わった人に対して「あの人好きだな~」「ほんっっっっっとに感謝しかない」と、「ひと」に対しての感謝や好意の気持ちがとっても滲んでたし、もはやそのパートは終始涙目だった。
小中高専の青春時代での話で「ひと」に感謝なんて一言も聞かなかったぼくからすると、とてつもなくびっくりしながら目の前の感謝モードまなさんに圧倒されていた。と同時に、ここまで話をしてくれたまなさんに好意すら抱いていた。(最初は自分も苦手だなと思ったのに、なぜか今は話をもっと聞きたい自分がいる!!)
めちゃくちゃ熱い話です。ほんとに。
ぼくからしたら他人を受け入れないまなさんが今、人にめっちゃ感謝してるって。。けど、コロナ禍で自分を見つめ直して、地域と向き合って行動した結果って考えたら、自分で作ってるんですね。すごいです。
そうかもしれないね、、、照
最後にまなさんの今後について、聞かせてください。
少し話戻っちゃうけど、コロナで人間て脆いなって思ったんだよね。たとえば目の前にあるスマホはさ、中身の部品が揃ってても自分で組み立てられないじゃん。そんな感じて自分で使ってるのに自分で作ったり直したりできないことが恐ろしいなって。
きっと文明がない時代の人たちは自分たちで使ってたものは自分たちで賄ってたんだよ。だから、今後はいろんな事を知りたいし、自分でできるようになりたいかな。それを多くしていきたいし、生きる力って感じがする。だし、幸せになると思っている。
だから物のルーツとかも気になるし、調べようとも思うよね。
それは今の鞄についてもですか。
もちろん、、ふと思ったときに自分が作っている鞄ってなんなんだってなって、そもそも素材の革ってどこから来てるんだろうって思って調べたよね。
革製品を作るために動物を殺してるって思われがちだけど、食用で食べた皮を腐らないように加工する昔の人の技術が今も活きてているわけで。
そうやって普段から徹底的に調べるんですね。
そう、だから今着ている服について興味がでるのよ。身近だからね。
これって化学繊維で染められてるけど、昔は植物由来で染めてたの。
日本の伝統的な植物由来の染め方は藍染めがあって、なんと江戸時代が一番多いんだよ。なぜなら藍は庶民の色だったから。蓼藍(たであい)を育てて、防虫効果もあったから、人気だったんだけど、時代が進んで化学繊維が入ってきて廃れちゃったのよ。
そこで今回のリノスクの「藍」につながるんですね。
そう。別に化学繊維を否定している訳ではなくて、その歴史を知ること自体に価値があったから、今回藍を育てて、周りに共有することでその価値がつながると思ったんだよね。自分が良いと思ったことを人と共有したいし、人が良いと思ってることを知れるって、なんかおもしろいし、楽しい。
それは同意です。だしきっとまなさんは、自分の好きをこれからも周りの人と共感してって、その輪がどんどんまなさんの周りでつながってイメージです、、、今日は貴重なお時間いただきありがとうございました!
こちらこそありがとうございました!
-まなさんインスタ-
根っこっこ×〇〇
「谷塚」に焦点をあて、
ゲストの原動力、原体験、展望を掘っていくことを目的としたメディア。
媒体は現在、インスタライブとnoteとペーパーの3種類。
試行錯誤しながら手作りで進めていくこの感じも併せてお楽しみください!
TVファシリテーター/noteライティング:リオ
ペーパーライティング:アユカ
・Rootsの日ごろの活動はこちら
https://www.instagram.com/roots_yatsuka/