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漫画とロックスターと、80年代を漂う私。 『上條淳士展 LIVE』

思春期に出会った強烈なモノやコトって、生涯に渡りずっと自分の宝物になるような気がします。
歳を取るとますますそれを実感。あの頃好きだったモノやコト、大人になった今でもずっと好きですよね?(思い出補正もあるけれど)

自分の人格形成に多大な影響を与えてくれたモノ。
私にとってそれは『漫画』、そして上條淳士先生でした。


漫画家を目指した子どもの頃

幼稚園の頃から絵が好きで、小学生低学年の時には落書き帳にコマ割りして鉛筆漫画を描いてました。
中学に入るとさらに熱が入り、ペン入れした本格的な漫画を描き出します。

80年代に入ったあの頃。まだ『オタク』という言葉が出てくる直前だった気がします。

さてそんな自分の愛読していた「少年サンデー」に現れたのが!!
上條淳士先生
初連載の『ZINGY』(原作・雁屋哲)でいきなり心を鷲掴みされます。

40年経った今でもこの見開きは忘れられない

大友克洋を彷彿とさせるタッチ、核戦争後の地球という設定(この頃は『北斗の拳』の大ヒットで核戦争後&世紀末ブーム)、今までにない、本当に「新世代の漫画」がスタートしたんじゃないか!!と、魂震えました。
連載第1回目のキャッチコピーは「NEW WAVE KIDS COMIC」です。まさに。

そして『ZINGY』の後に始まったのが、大ヒットとなる音楽漫画『To-y』
なんと、連載第2作目にしてとんでもなく「絵」が洗練されている!
無駄のない、1コマひとコマがまるで1枚の「イラスト作品」のような仕上がり。真っ白な紙の中、どこかにある「正解の線」を追求して追求して、たどり着いた純度100%に近い線描。

「絵から音が聴こえてくる」のよね

もう、メロメロになりました。毎号、サンデーから『To-y』をカッターで切り取って、絵を真似て。そして『To-y』から様々なカルチャーを知り(パンクにはまり、雑誌『宝島』を愛読し始める笑)、思春期の自分の世界がどんどん(偏った方向に)広がっていきました。

その後『SEX』『赤×黒』『8 エイト』と、その後も先生の絵はどこまでも研ぎ澄まされていきます。


上條淳士展へ行く

すみません、前置きが長くなりすぎました。
近年、漫画よりもイラストのお仕事イメージが強かった上條先生。
画集も出され、ギャラリーにて原画展を開催されるようになります。
そしてついに昨年9月末より今年の1月26日まで約4ヶ月間、東京の弥生美術館にて『画業40周年記念 上條淳士展 LIVE』が開かれました。

あれだけ好きだったくせに、歳のせいで行動が鈍くなったのか、期間の長さからか、終了ギリギリになって急いで行ってきました。

東大のそばにある弥生美術館、こじんまりとした、趣のあるレトロな美術館です。入口にはアンニュイなTo-yが描かれている展覧会パネル。

会場に足を踏み入れた瞬間、一気に「中学〜高校生」の頃の自分に戻りました。涙腺が緩みます(歳のせい)。

生原稿をガラス越しに、舐めるように、食い入るように眺めました。
静かな興奮が、呼吸を荒くさせ、心拍数が上がります(変態)。

通常、黒味(ベタ)の多い画面の中に白い部分を表現したいときに漫画家は白くしたいところをホワイト(修正液等)で「消して」表現するようですが(一般的にそうすることがポピュラーかと)、上條先生の場合、「原稿が汚くなるので」白い部分は、白い部分として初めから「紙の白地を残して」描くと、インタビューで読んだことがあります。

それだけ手間もかかりますが、そのアナログにこだわる姿勢はやはり生原稿の価値を上げているなあと感じるのです。


生原稿の強さ

1枚いち枚、ため息と震え(歳のせいじゃない)が止まらない、至福のひととき。少し黄ばんだ原稿用紙、鉛筆で走り書きされた指示や、スミベタのムラ、本当に手で描いているのが信じられないくらいの、バイクの金属感や、金網、俯瞰で見下ろした街並み、そして人物の輪郭線の美しさ。

デジタルがどんどん進んでいる昨今、もちろん漫画もデジタルで描かれているものが増えてきています。

でも。こうして生原稿を目にすると、本当にいい。そこに在る。触れることができるモノ。

やはり自分がグラフィックデザイナーとして印刷物や紙が大好きだからなんですよね、きっと。

想像してください。原稿の、そのインクの盛り上がりを、ガラスに鼻がくっつくくらいに近づいて、見つめ続ける中年の姿。このシーンを映像化するとしたら、中学生の学ランを着た少年(私)がオーバーラップ、という演出とかになりそうな笑。

そうして漫画を描いていたあの頃を思い出し、その当時の色々な出来事を思い出し、しばしタイムスリップしていた時です。

スタッフの方が入って来て「今から上條先生がおいでになりますので、サインご希望の方はどうぞ」という案内。

先生に!!会える!!サイン!!

映画のワンシーンのような

ロックスター登場

誰もがアイドルやミュージシャンに憧れたり熱狂的なファンになったりするのと全く同じで、先生は自分にとって憧れのロックスターなのです。
デビューされてから40年、ずっとファンで居続けている。

それほど広くはない会場に、ダメージジーンズにロックなブルゾン、黒いマスクで先生の登場です。
40年、憧れ、尊敬してきた方についに接するという、この気持ち、、、

言語化できず!

きっと今の若い子も、例えば米津玄師ファンは30〜40年後にも米津玄師を追い求めて居たりするんだろうな、とか、想像します。
それぞれの自分の青春時代の「好き」はそのままずっと続いていく。

サインする対象は画集、と指定されていました。当然、発売日にとっくに購入しています。

ですが、ここは当然「買う」一択。
書いてもらいたい言葉(もちろん自分の名前)をメモ用紙に添えて、ついに先生とご対面。

声が上ずるという失態がありつつ、先生と一言二言会話して、その時間、約1分くらいか。

その後はどこかふわふわした足取りでまだしばらく作品を観続けながら、ようやく帰路につきました。
正直その日は戻って仕事もそれほど集中できず、画集を眺めたりコミックスを読み返したり、余韻に至っておりました。

50周年、60周年と、お体に気をつけていただきながら、これからの先生の益々のご活躍を心からお祈りしています。

そしてなんと、福岡、大阪でも展示開催が決定しましたね(追加公演、っていう言い方が洒落てます)!
行ってこようかなあ!!

おまけ
翌日展覧会を観た感想をXで呟いたら、なんと上條先生に「いいね」をいただいて興奮&感動でした(泣)!ありがとうございました。



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冨貫功一
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