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好きな言葉は「群盲撫象」http://d.hatena.ne.jp/Rootport/ 作家・マンガ原作者。TIME誌「世界で最も影響力のあるAI界隈の100人」選出。

最近の記事

AIは敵か?/人類と機械の未来

★お知らせ★ この連載が書籍化されます!6月4日(火)発売! 「ヒトよりも知能の高い存在が現れること」は、そんなに恐ろしいことか? この記事では、超知能AIへの懸念がどれくらい妥当なものなのかを考察しましょう。AIを「正しく恐れる」ことはできるでしょうか?  高性能なAIに対する恐怖は、大きく2種類に分類できるでしょう。  具体的な恐怖と、漠然とした恐怖です。  たとえば無人の攻撃ドローンが誤作動により間違った人物を殺害したり、自動運転車が事故の瞬間にトロリー問題(トロッコ

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    • 超知能AIが人類を滅ぼす…?

      超知能AIの暴走リスク このブログではAIの歴史と現在、そして近未来について考察してきました。  今回の記事では、もう少し先の未来――AIが人間と同等かそれ以上の知能を身に着けて、「超知能」となった時代の話をしましょう。  超知能AIの暴走は、サイエンス・フィクションでは定番のテーマの1つです。  たとえば映画『ターミネーター』は、自我に目覚めたAI「スカイネット」が人類に反旗を翻し、機械の軍隊で襲い掛かるという設定でした。映画『マトリックス』は、人類は薬漬けで眠らされて、

      • AIの歴史と現在の問題

        ジョン・ヘンリーの教訓 19世紀の都市伝説に「ジョン・ヘンリー」という人物がいます[1]。  彼は屈強な肉体労働者で、ハンマーを振るって岩に穴を開ける達人でした。ところが蒸気機関で動くドリルの登場により、彼は失業の危機に瀕します。そこで彼は、人間は機械よりも優れていることを示すために、穴開け競争で蒸気ドリルに戦いを挑んだというのです。  伝説によれば、ジョン・ヘンリーは(驚くべきことに)僅差で勝利を収めたとされています。しかし、あまりにも肉体を酷使したために、勝利の直後にその

        • インターネットの夢と現実

          インターネット時代 ネットスケープが株式上場し、『Windows 95』が発売されてから、約30年が経ちました。この30年間は、まだ歴史を語れる状況ではないと思います。時代が最近すぎて、何が重要なできごとなのか取捨選択できないからです。  たとえば1999年に登場した『iモード[41]』は、その後の『EZweb』や『J-SKY』とともに、ゼロ年代の日本人にとって重要なインフラでした。しかし、それが世界の歴史の中でどのような位置づけになるのか、まだ分かりません。かつてのフランス

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          インターネットが生まれるまで

          徒歩よりも遅かった ローマ帝国時代後期、ローマ支配下のエジプトの法的文書には、暦日と在位中の皇帝の名前が記載されていました。当時はローマで新しい皇帝が即位しても、それがエジプトに伝わって法的文書に反映されるまでにタイムラグがありました。このタイムラグを調べると、古代における情報伝達の速さを推測できます。また、近世に入った1500年頃の情報伝達の速さは、ヴェネチアの商人たちの日記から推測できます[1]。  その結果を見ると、平均時速はほとんど変わらず時速1・5キロメートルほどだ

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          パソコンはいかにして発明されたのか

          コンピューターの商業化 時代は少し前後します。1946年3月31日、ジョン・プレスパー・エッカートとジョン・W・モークリーはムーア・スクールを退職しました[45]。知的財産権の放棄を迫られたからです。彼らの経歴なら、他の大学やIBMなど再就職先には困らなかったでしょう。しかし、2人はビジネスパートナーとなり、エレクトロニック・コントロール・カンパニーを創業しました。1948年12月には株式会社化し、社名をEMCC(エッカート・モークリー・コンピューター・カンパニー)に改めまし

          パソコンはいかにして発明されたのか

          コンピューターの誕生

          どこで「現代」を線引きするか 前回までで、歴史紹介を終えてもいいと考えていました。  18世紀後半から始まった産業革命により、人類文明は「発明が発明を呼ぶ」という状態になりました。この発明の連鎖は、現在でも終わっていません。数万年〜数百万年というスケールで見れば、トレヴィシックやスティーヴンソンが蒸気機関車を走らせていた時代と、現代とは、同じ時代区分に含めることができると私は考えています。  ダーウィンの著作を読むと、その思考が現代的であることに驚かされます。あるいは、世紀の

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          「豊かな社会」を作る方法

          出遅れた国々:インドの場合 京都大学の文化人類学者・梅棹忠夫は、1955年5月~11月にインド・パキスタン・アフガニスタンの調査旅行を行いました。このときに目撃した凄まじい貧困の様子を、彼は『文明の生態史観』のなかで次のように報告しています。  当時のインドでは、物干し竿を購入するよりも、男2人を雇うほうが安上がりだったのです。木製やゴム製のハンマーを購入するよりも、(時間がかかっても)素手で叩くほうが安上がりだったのです。18世紀後半の時点で、インドではジェニー紡績機を購

          「豊かな社会」を作る方法

          なぜ産業革命はイギリスから始まったのか?

          鉄道はすべてを変えた 1836年10月、チャールズ・ダーウィンが5年におよぶ世界一周の旅から帰宅したとき、屋敷で彼を出迎える人はいませんでした。時刻はすでに深夜で、家族も使用人も寝静まっていたのです[1]。この時のダーウィンの移動手段は主に馬でした。時刻表通りに運行する鉄道とは違い、馬車は所要時間がまちまちです。そのため正確な帰宅日時が分からなかったのです。  それからわずか6年後の1842年、ロンドン近郊のダウン村に屋敷を買ったとき、ダーウィンは物件選びの条件の1つに、駅か

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          『種の起源』と科学の独立

          ⑤チャールズ・ダーウィン『種の起源』(1859年)科学と宗教が未分化だった時代  17世紀、ニュートンもハレーも自分たちが(現代的な意味での)「科学」を研究しているという自覚はありませんでした。なぜなら、当時は科学と他の諸分野が分離していなかったからです。たとえば「Scientia est potentia」というラテン語の格言は、「知識は力なり」と和訳されます。ラテン語の「scientia」は英語の「science」の語源ですが、もともとは「知識」全般を意味する単語だった

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          小説が「人権革命」を起こした

          ④サミュエル・リチャードソン『パミラ、あるいは淑徳の報い』(1740年)死刑が大衆の娯楽だった時代  ヨーロッパの歴史における大きな謎の1つは、身体刑の消滅です[22]。  前近代の世界では、ヨーロッパに限らず世界のどこでも残虐な刑罰が当たり前に存在しました。罪人の手足の骨を鉄棒で叩いて粉砕し、ぐにゃぐにゃになった腕でカラダを車輪に括り付けて、腹を引き裂いて内臓を露出させ、ゆっくりと時間をかけて殺害する。あるいは、手首や足首を縛った縄を、数頭の馬で別々の方向に引っ張って八つ

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          印刷がもたらした「科学革命」

          アイザック・ニュートン『プリンキピア』(1687年)回っているのは地球か、太陽か  印刷技術がなければ、「科学革命」も違った姿になっていたことでしょう。これは17世紀のヨーロッパで生じた科学知識の急速な発展のことです。中でも天動説から地動説への転換は、最も劇的な進歩でした。  ヨーロッパでは、長らく天動説――宇宙の中心に地球があり、他の天体がその周囲を回っている――という宇宙モデルが信じられていました。これは紀元前400年ごろにプラトンが考案したモデルに基づいています[1

          印刷がもたらした「科学革命」

          カネと宗教と活版印刷

          印刷が世界を変えた「世界を変えた印刷物」のリストを作るのは難題です。人文学が専門ではない私ですら、思いつく限りに書名を上げていけば数百~数千冊のリストになってしまうでしょう。私の本業である物語創作の観点でいえば、シェイクスピアやディケンズの著作はすべて世界を変えたレベルで重要です。しかし本書の趣旨からは離れるので、ここでの紹介は避けましょう。  また、ホッブスやロック、ルソー、モンテスキューなどの小中学校の社会科で習う思想家の著作をわざわざ紹介しても、学校の勉強のおさらいとい

          カネと宗教と活版印刷

          活版印刷:破壊的イノベーションの代名詞

          国王から貧民まで 活版印刷は、まさしく「世界を変えた発明」でした。  火薬や羅針盤など、国々の趨勢を決め、歴史を変えた発明品はたくさんあります。しかし、戦場や航海に出ない人々がその威力を味わうことは難しかったでしょう。一方、印刷物は国王から貧民まであらゆる人が手にします。社会のすべての階層に影響を与えて変化をもたらしたという点で、印刷技術は特別です。  活版印刷の特徴は、あらかじめ「文字を刻んだ小さなハンコのようなもの」を大量に作っておく点です。このハンコのようなものを「可動

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          ゼロから「文字」を発明する方法

          ⾒返りが労働と格差、そして戦争だとしたら、 なぜ⼈々は狩猟採集から農業に乗り換えてしまったのだろう ⼤ヒットしたマンガ『ゴールデン・カムイ』(集英社)の功績は、(マンガとしての誇張はあるとはいえ)アイヌ⺠族を「豊かな⽂化を持つ⼈々」として描き、そのイメージを広めたことでしょう。  かつての狩猟採集⺠族には「常に飢えと隣り合わせの貧しい⼈々」というイメージがあり、⼈類は農耕定住⽣活という素晴らしい発明によって、その貧しさから脱したのだというストーリーがまことしやかに語られていま

          ゼロから「文字」を発明する方法

          「言語」はどこから来たのか?

          ⽂字の不思議 私は⼈の顔を覚えるのが苦⼿です。⼦供の頃からクラスメイトの名前と顔が⼀致するまでに時間がかかりました。⼤⼈になった今でも変わりません。初対⾯の編集者とたっぷり2時間の打ち合わせをして、帰りの電⾞の中ではすでにどんな顔だったか思い出せなくなっている……なんてことが珍しくない。そして2回⽬の打ち合わせのときに「そういえばこんな顔だったかなあ?」と思い出すわけです。  私のこの⽋点は、私が作家であることと関係があるかもしれません。  というのも、脳の読み書き能⼒と顔認

          「言語」はどこから来たのか?