見出し画像

一生ケアラー

ヤングケアラー支援とは?


ヤングケアラーという言葉が子ども福祉領域への旋風を巻き起こした昨年。

研修や事例から、私の中の答えは「ヤングケアラー」だからといって、何か特別な支援が入るわけではないし、課題のある家庭介入できる権限は誰にもない。

ただ、『本人』だけではなくて
「ケアラー」「養護者」「介護者」に光があたった、そんな捉え方を今私はしています。当たり前ですがケアラーの世代によって、その課題は異なります。

ダブルケアラーのAさん

(個人特定されない配慮のため、年齢や性別、事案の内容は変更していますが、課題は伝わるようにしています)

あるケアラーとしての人生を送られるひとりの女性Aさん。父からの被虐待環境で育たれ、今は30歳になられます。無職です。

弟はパーソナリティ障害を併せ持つ軽度知的障害、発達障害。
母は脳梗塞発症後、言語障がいと右手の不自由さがありますが、家で生活できる程度です。ただ、高次脳障害があり、ワガママな子どものような発言があり、Aさんは困っています。
父は母と離婚後、疎遠となっているようです。

Aさんも仕事をしようと何度かチャレンジされるのですが、弟から職場にTELをしてきたり、訪問されたりで仕事にならず、続きません。
その上、母に介護が必要となったわけですが、訪問介護をいれようにも、弟がすぐに断ったり、女性ヘルパーに対して恋心を抱き、トラブルを起こしてしまうので、事業所が安定しません。
施設に入ってもらうことは母親のことが好きな弟が反対しており、施設と弟間のトラブルも予想されるため、難しいだろうとAさんは想像しています。

今は生活保護受給で生活を成り立たせておられるので、Aさんに、就労するよう、市から指導があります。
もしかしたら画一的にされるものかもしれませんが、そのたびに心を痛め、罪悪感で死にたくなるそうです。
友達といえる友達はいない、飲みに行ったり、ランチをしたり、そういった世界とは無縁に生きておられます。

レスパイト支援は消えたのか


ケアラー支援ってなんだろうなと思った時、Aさんには正直寄り添うことしか思いつかないし、それだけが支援か?と、簡単に自立を勧められない支援者にジレンマがおそいます。

まだ人生、この先長いAさんを軸にしたとき、ケアラー支援をするためには、結局「レスパイト」の仕組みを公的に再考されないと、在宅での共同生活は難しいのではないでしょうか。

私が初めて介護保険にであった2000年、当時はまだ「レスパイト入院」という仕組みが堂々と残存していて、精神疾患の夫の介護者、妻が「もう限界です。1週間くらい休ませてほしい」と事業所にSOSをされ、そして、ご本人は1週間、まずは緊急レスパイト入院を経て、自宅に戻られました。

今の介護保険でも、介護者負担軽減という、これは考え方としてはまだ何とか残っているので、まだ良い方かと思いますが、Aさんのような複合的な課題を抱える家庭への支援について結局「無」になっているような気がします。
家族のことは家族で。
この家族神話が根強いのも感じます。

居場所や細やかなサービスメニューが増えることを否定はしませんが、それが直接的にケアラー支援になる、という勘違いは、ソーシャルワーカーとしては絶対にしたくないなと思います。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?