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私の「俺にしかわからない」こと
別れ際の捨て台詞ほどダサいものはないと思う。それまで尊敬していて、大好きで、どこか名残惜しいけど、勇気を出して別れを切り出したのに、そんなこと言わないで欲しい。
あなたは言ったね。
「お前の良さは俺にしかわからないのに」
それはあなたの傲慢だ。
あなたが褒めてくれた私の部分はいくら足しても私を再構成しない。あなたと喧嘩になった私の部分はいくら足しても私を再構成しない。そして、そのどちらもを混ぜても私にはならない。
私の良さは確かにあなたにしかわからない部分があるのかもしれない。でも、私の親友にしかわからない私の良さもあれば、私の母親しか知らない私の良さだってあるはずだ。私の魅力をあなたが見える断面だけ語って欲しくなかった。私の「しか」なんて人ぞれぞれなんだ、魅力なんかじゃない。
あなたはよく先を見通したことを言っていた。いつだって、前を向いて歩いてた。でも、私は過去のことをグチグチと考えてしまう。だから、あなたに憧れもしていた。
ただ言われたわかったのは、あなたにはそれしかない。私はあなたと過ごした日々が好きだった。未来の事じゃない、過去のことを大事にして欲しかった。あなたはきっと初めてのデートで食べたご飯のことも、私に告白したの場所もどこも覚えてないんじゃないの?
……ここまであなたを悪く言っても、どこかであなたを美化している自分がいる。別に恋愛なんてお互いの自己満足をすればいいものだ。でも、あなたは極端すぎた気がする。
ずっと前を見ているって言ったけど、それはいつだって「あなたがしたいこと」であって、私はそこにいるオマケだ。
きっときっとそれを良い所だって言う人もいると思う。主体性がない人が多い世の中だから。私だってその主体性に惹かれたのかもしれない。でもね、主体的に自分しか思えない人と主体的に自分以外も思える人は、天と地ほどの差があるの。
全部全部あなたが悪いとは思わない。私はそういうあなたが好きだったし、自分の知らない世界を見せてくれたことにはすっごく感謝してる。でも、ごめん私はあなたの思うような謙虚な人間じゃない。
最初の方はあなたが供給してくれる知らない世界が嬉しくて、あなたに自分のしたいことを望むのは求め過ぎだと思ってた。だから、我慢してた。でもね、あなたが私のために私の知らない世界を見せてくれたわけじゃないことに気が付いてからは魅力を感じなくなった。
長く続くカップルって些細な気遣いに気付けるかどうか、なんじゃないかな?
私はあなたの自分勝手でも私の知らない特性が好きだった。でも、それは気遣いじゃない。そこにはあるのは自分自身への陶酔だ。私の知らない世界を見せたいという思いやりではない。
私はあなたの前を見続ける性質が好きだった。でも、それは気遣いじゃない。そこにはあるのは自分のための未来予想だ。私たちの未来のためじゃない。
だからのあなたの捨て台詞はあんなにもダサかったんだと思う。あなたが少しでも人を思うことが出来たのならって今でも思う。
……未練がましい私もあなたのことをダサく思ってるのかな。
私が惹かれたあなたの特性もあなたの性質も、私だけのモノだけじゃない。きっと他の誰かも気付いて、惹かれて、失望する。もしかしたら、既にそういう人もいたのかもしれない。
私が好きなあなたの一面は私「しか」のものじゃない。それが悔しいね。何よりも悔しいのはあなたは「俺しか」って自信満々に言えたのに、私には「しか」なんて言えないから。
写真:思い出は少ない方が良い、私にとって思い出が多すぎる場所