千葉を喰らえ!!大学内レストランへの挑戦
私は実に千葉に縁が深い。
父の転勤で年長から小4迄を千葉市で過ごした。
当時の記憶ははっきりとあり、自然豊かだが大企業の集合住宅が立ち並ぶ街で、毎日友達と日が暮れるまで遊び、帰ったら勉強をして夕食を食べて藤子不二雄のアニメを観てという日々を楽しく送っており、千葉に対する郷愁の様な想いは少年から青年になる迄ずっと持っていた。
それもあり大学進学の際は千葉大学を選んだが見事に失敗、、、、翌年は東京への憧れが強くなり都内の大学へ進んだ。
SARUを開業して数年後、大学時代の友人から彼の義理の弟を紹介したいと言われ出会ったのが三崎雄也だった。
彼は千葉市に住んでおり、市内のカジュアルイタリアンの料理長を経験していて、SARUの生産者を大事にする環境に興味があると言う。
「通うのにめちゃくちゃ大変だけど大丈夫?」と確認したが、「やりたいです!」ということで、丁度大手町店の開店に併せて入社して貰うことにした。
(※大手町店は2018年2月にオープンしましたがコロナ禍の中、2020年6月に閉店をしました)
大手町、白金で、毎日2時間掛けて出勤をし経験を積んできた。
また、一緒に多くの生産者様との出会いも積み重ねてきた。
そんな時、1通のメールが会社の代表メールに来て私と話をしたいとの事。
お会いしお話を伺うと、
「千葉大学の医学部キャンパス内に学内レストランを作るという計画があり、そちらは千葉県産の食材を使い、学内だけでなく学外に開放し皆さんが集うお店にしたい。うちの店舗を偶然使った時に食材を大切にしている姿勢が伝わったので、ぜひうちにプロデュースと運営をお願いしたい。」
と言う内容だった。
今まで東京でディナーを中心としたレストランを運営しており、全く違うアプローチで商売として成り立たせられるのか、そこが焦点だった。
何度も立地調査に行き周辺環境をチェックした。千葉駅から20分くらい、どこにも近隣駅が無い小高い丘の上の立地。バスか車でしかこの場所へは来れない。周辺は飲食店が全くにない・・・。更に夜は人が全くいない・・・・。
プラス材料としては、日中の千葉大学病院への来院者が相当の数で、院内のコンビニ売上は千葉県一番だという。お医者さんや勤務の方も来てくれそう。
オファーが来た原因でもあった、教授の方や病院関係の方が学会など打ち上げをしたり、お客様をおもてなしするスペースが全くなく、それが欲しいというニーズ。大箱なので団体パーティーで夜のマイナスを埋めることが出来ると判断した。
そして何より地元に住む三崎の存在がありこの話を受けることにした。
原生林の様な木々に囲まれた環境、天井高くテラスもある解放的な空間、そこでモクモクと煙が立ち込めるお料理を楽しんで頂く。
木の「もく」と煙の「モクモク」をかけてMOKUという店名にした。
千葉県といえば農業に加え畜産も盛んな地域、様々なお肉をシンプルに楽しんで頂けるグリル料理、赤身が美味しい経産牛のパテを楽しんで頂くハンバーガーを中心に、デザートまで県産の卵や果実を楽しんで頂く。
2020年4月1日の開業に向けて採用も進め準備をしていた。
そんな中来たのがまさかのコロナ禍。2020年年明けから騒がしくなり3月には蔓延し始め当社の既存店も2月から客数が明らかに落ち始めた。その様な中で開業できるのか・・・・交渉し、開業は6/1にずらして貰った。
開店時、地域の方の期待の大きさを感じたがいかんせん、医療機関の中でもあり本当に難しい開店となった。
その後も何度も緊急事態宣言が出され、夜は当然ながら売上0。
テラスもあり大箱の為スタッフ人数も抱えなければならない、当初お客様によるスマホ注文を試みたが当時は上手くハマらず運用がスムーズに出来ない、外部採用し抜擢した店長はスタッフの信頼を得られず3ヶ月で退社、、、
開店1年目は大大大赤字となった。
救いはアルバイトスタッフが支えてくれた事。
開店時からホスピタリティ、目配り心配り、動きともにピカイチだった通称アッコさん。慣れない育成や管理業務にも取り組んでくれた。
緊急事態宣言が明けてディナーを始める際に当初は掛け持ちとして入ってきた通称ねえさん。
この二人を代表にアルバイトの方が店を支えてくれた。
チャンスは2021年初めて迎える桜シーズンに来た。
コロナもやや落ち着いた中でたくさんのお客様にご来店いただきお店の知名度が一気に上がった。しかし夜はまだ宴会NG。赤字状態はまだまだ続いた。
打開するため、夜ダメなら昼を伸ばそう、病院関係者など働く方達の来店頻度を上げるため、日替わりメニューを始めた。弁当やデザートテイクアウト始め、やれることはなんでもやろうと取り組んできた。
全て手作りで出来合いのものなんて一切ない全て手作り、お店が広くお客様に気持ちよく過ごして頂く為に人手が必要、しかし売上はお昼しかなく夜はない、更に専用駐車場がない為週末の売上が安定しない・・・・
この事や本来の優しい性格故に人間関係に悩んだ三崎が心身ともに病んでしまった・・・。
頑張っても頑張っても黒字が見えない、三崎にとってもスタッフにとっても幸せな状況でない、これで事業を継続する意味があるのか。
私は昨年忙しくなる春を迎える前に一度閉店を決め、三崎を始め主要スタッフに伝えた。
一度は泣きながら皆受け入れたが、それから数日後、三崎、アッコさん、ねえさんの3人が、「どうしてもやらせて欲しい、継続してほしい」と伝えて来た。
三崎の体調も不安だったし、一度大学含め退店を伝えた事をひっくり返すということは、ある意味退路を断つという事、その覚悟があるのか3人に聞くと、「やらせてほしい!」
その言葉を信じ、大学側に退店を撤回させて貰い会社としても退路をたった。
今まで細かい人間関係など些細な事でも私に連絡が来たり、指示されないと動けないチームの弱さがあったが、3人を中心に話し合い、問題解決をすることができるようになった。
ストレス源が解消でき三崎の体調も回復し、コロナも明け徐々に夜の貸切も増えて来たがまだあともう一歩、黒字転換が出来なかった。
どうしてもネックになっているのが原価率、人件費、水道光熱費の高さ。
この3点を問題解決しないと今の売上で黒字化出来ない。
幸い、三崎始めスタッフの頑張りのおかげでお客様は定着しファンも多く店のイメージは良くMOKUブランドも地域で出来ている。
私は問題解決を一気に進める思い切った判断をした。
具体的には年明けからの業態変更。オープン以来、店の中心であったグリル料理をやめパスタをカテゴリー化しメニュー数を増やし、ハンバーガー、パスタを中心としたメニュー内容とする事。
ご注文を開店当時目指した、お客様自身にスマホでご注文頂く事。
グリルを辞めることでガス代が1/3に減り、且つ原価率が一気に改善した。どうしても肉、魚は原価が重くなるがパスタが安定を産んでくれた。パスタは三崎の得意分野であり魅力的なアイテムも投入してくれた。
肉、魚はウィークリーメニュー化し金額を時価とし
グリルを辞めてもお肉やお魚をお楽しみ頂けるようにした。
DXの進歩でスマートオーダーがお客様にストレスを与えずにできるようにな理、予約システムでピーク時A I対応やWEB予約を受け賜る様にした。そして6、7人ピーク時必要だった人員が5人で営業できるようになった。
そして遂に黒字転換へ。
閑散期である2月を黒字で着地することができ、3、4月はなんと今まで想定しなかった20%を超える利益、年間を通しても安定した黒字経営が見えてきた。今まで収益面で社内で脚を引っ張る存在だったがこれからは利益貢献できる店舗に育った。
これから課題は更にお客様を驚かせ楽しんで頂く仕掛けをしていくこと。
千葉の中でMOKUがわざわざこれ食べたい!!と目的持ってご来店いただけるお店に成長させる事。
皆で力を合わせてこれからも頑張っていってほしい。
2024.5.22 猿田伸幸
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