僕がその人に初めて会った記憶があるのは小学校に上がった頃だ。 母が言うにはそれよりも前に会っていると言うが、僕は幼すぎて分からない。 スラリとしていて、制服をきちんと着て、格好いいなぁと思った。 コツコツと革靴の音が大人の男って感じで。 母と二人で居るところを見かけたのは、姉に無理やり買い物に付き合わされた時。 スーツ姿でカフェの窓側に並んで座って、ぼんやりと外を眺めながら穏やかに会話していた。 そして、ゆっくりと立ち上がって、エスコートされて店を出ていった。
今日は並々ならぬ覚悟で出掛けた。 あの人に会うために。 念願叶って。 約束は。 水曜日に、と。 午後1時から3時の間に。 僕は1時を少し回った頃に伺いますと返事した。 その日は、お気に入りの黒のパンツにカーキのブルゾンを羽織って出掛けた。 シューズは誕生日にもらったnorthfaceのハイカットスニーカー。同じブランドのヒップバッグを斜め掛けにして。 待ち合わせの場に着くと、その人はもうそこに居て。 こんにちは。 と。目を細めて僕を迎えてくれた。 コツリと革靴を
社内人事で昇進した。 本当のところ、お祝いして。 みんなでケーキを食べたいところだなぁ。 4ヶ月前、子供を連れて婚家を出た。 色んなことが積み重なり、そこにはもう居られない状態だった。 20年ほど耐えたが。 それが モラハラと言うものだと後で知った。 モラハラ夫はアマゾンが好き。 これは弁護士に聞いた話。 かつて請け負った事案でのモラハラ夫というものは。 毎日のようにアマゾンからお届け物が来る。 我が家もそうだった。 子供に影響が出るかと思ったけど、 幸い、今、元
私の会社の取引先のおじさん。 ほぼ右腕のような存在。 G2。 私よりひとまわり年上。 見た目ふた周り年上。 おっちょこちょいのところがあり。 心配になることしばしばあるけど、 きちんと仕事をしてくれる。 この髪が少ないG2は。 愛されキャラで。 イケメンとはかなり縁遠い。 中年のメタボリックシンドロームど真ん中で、Yシャツの一番下のボタンが度々外れていて。 メタボあるあるですよ、なんて。 広いおでこに汗をかいて。 恥ずかしそうにする。 それと 中身が何とも言えず可愛い
母から腕時計をもらったその日。 僕が新しいスタートを迎える日になった。 母は小洒落た可愛らしい時計は好みでなく、陸海空と持っていけるような男性がよく使うものが好みだ。 その時計はよくつけていたのを知っている。 今はもっと高くてカッコいいやつをメインに使ってる。 背が高くてスタイルのいい母はすっとしていて、よく似合う。 僕に譲ってくれたその時計は、高校生の頃に祖父から奪ったという。 その表現が何とも勇ましいと思った。 聞く話によると、高校進学の際に腕時計を贈るのが
背の高いあなたを意識したのはいつだったのか。 ハッとした記憶を繋ぎ合わせれば答えなんて出るんだろうけど、出したくないのは。 惚れたほうが負けだと言う俺の性か。 いつも冷ややかな視線をぶつけるあなたに、切込み口を見出だせなくて。 かわいくない。 なんて思いながらも。 私物のスマートなコーヒーカップの隣にサンプルでもらった様子のぽってりとしたマスコットが見上げている。 さらりとした整った顔に笑い顔が幼く見えて。 男まさりな性格のくせに。 可愛くて綺麗だなどど常々思う
今日もお疲れさまです。 Gについて。 実は少しやさしいエピソードがある。 異動してしばらくして。 多忙な職務で家族への時間を作り出せない状態になっていた私に。 家族の都合でどうやっても社内の大切な会議に出ることが出来なくて。 プライベートで仕事に支障を来すことをまだ許せかった私は。 何とか遣り繰りしようと必死になっていたが、どうしようもなく。 自分の心も折れそうで。 家庭内の詳細を晒したくないが、誠実に理由を話すため Gの元へ謝りに行った。 いつものカッコつけたスー
お疲れ様です。 今日もよく働いた。 今日のGはみんなのフォロー係。 新しいプロジェクトの初回反省会。 年若い次期社長のジュニアが(Jと呼ぶ)リーダーシップを取り、 各部所の担当に次につなげるためのコメントをそれぞれ出すことになった。 Gはダメ出しに対してなぜ我々がその対応を事前にできなかったのかの理由を理解している。 そのため、その都度フォローを入れる。 なんだこれは。 ばかばかしい反省会だと思った。 Jの成し遂げたいことは分かる。 その他の偉い人が、ひどい。 G
休憩を取るために通用口へ向かうと、ふとパンプスの足音が聞こえて。 振り返るけど。 期待していたシルエットは見当たらなく。 あの快活なアルトボイスを思い出して。 かつての記憶を辿った午後3時 その気持ちに気付いた時。 あなたは手の届かない存在で。 それでも気持ちは止められなくて。 めったに感じない気持ちに胸が苦しくなり、 困ったなぁと。 ぼんやり思った。 初めて会ったとき。 背が高いと思った。 顔が小さくて手足が長くて。 抜群のプロポーションに。 仕事間違えてない
お疲れ様です。 私の仕事に関わる8割はおじさんと呼ばれる人たち。 会社のフロアも、取引先の営業も。 中におじいちゃんもたくさんいる。 気難しいひと握りを除けば大体会話を合わせておしゃべりができる。 まぁ、ほとんどの人たちがうまく対処できると思っているけれど。 ちなみに。 私はこのおじさんに対して結構図々しい。 まずひとり、結構偉い人。 会社では取締役と呼ばれる経営陣のおじさん。 冒頭の気難しい一握りに私はカテゴライズしている。 還暦まで数年、老眼がひどく、四苦八苦をし
いつも助けて下さってありがとうございます。 2月。 チョコレートを渡された。 ちょっと冗談を言いながら。 いや、笑えないし、と思いながら頬が緩んでしまった。 それはあなたの言葉のせい。 中身は俺好みの。 オーレの生チョコ。 美味しそうだ。 夕飯の後に食べよう。 もう一つ、小さな箱の中には重なったアラカルトチョコが入っていた。 やさしい落ち着いたブラウンの箱。 かわいいなぁなんて。 去年は確か、少し高いチョコだった。 あまり味は覚えていないけど。 コーヒーを飲も
今日も一日が終わったと。 職場から靴を履き替えて駐車場までの道を辿る。 この数分が、俺のスイッチを切り替える。 仕事モードから。 俺モード。 俺は仕事とプライベートを分ける方だ。 そのほうが何かと都合がいい。 ストレスも溜まらないし。 それでも、たまに来るあなたからのメッセージで、境が曖昧になる。 元々プライベートの時間を邪魔されることがあまり好きじゃないけど、あなたからのアプローチは気に入っている。 ガツガツ働く、ハンサムなあなたとの、 ちょっとだけ気の抜けたオ
男の戦闘服はスーツとか。 意気がってる年下の取引相手がほざいた。 そうだなぁと。 まぁ、大体はかっこ良く見える。 じゃ、女の戦闘用は。 格好つけてる割りにアラが見えるスーツ姿に、えらく下に見られたな、と。 あぁ、マウントを取りたいのか。 若さだなぁと思ったランチタイム。 おじさんばかりの部所で働くと、同化する事なく、女であることを有利に、卑怯にならない方法を探すことに少し労力を使う。 内勤はYシャツと黒のスラックスとカーディガン。 靴はREGALのブラウンのポストマ
無気力をポリシーとして生きる気持ちが芽生えたのはいつだったか。 幼い頃は天真爛漫だった。 皆そうだと思うけど。 母は俗にいうキャリアウーマン。 この言い方は好きじゃないけど、働く母。 がっつり。 ガツガツ働いて。 母、妻、嫁、会社員の何役か分からないけど、こなして。 とにかくあまり家に居ないタイプだ。 でも、料理が上手で、美味しいご飯にいつもありつけた。 小さい頃、甘えん坊で良くおぶってもらったことをうっすら覚えている。 母の性格は神経質なのに、急に雑だったりするから
初めてnote。 ドキドキします。 マカロンを貰ったときもドキドキしました。 甘いもの、あまり食べないのに嬉しくて。 sweetなひとときを過ごして。 幸せな気分になったのは。 あなたも幸せな時間を過ごせたのでしょうか。 きっかけは何だったかもう覚えていない。 その人のことはかなり前から知っていったのだけど、 深くは知らない。 お世話になったお礼をするために思いついたのがチョコレートだった。 ちょうど世界はバレンタイン戦闘が始まって。 giftにぴった