小沢健二の新譜について
聞いた。
一聴しての感想としては「曲はいい」「歌詞がうるさい」「歌が下手」といったところ。
特に歌詞については「遠いところに行ってしまわれたな」という印象。小沢健二の年齢を考えれば当たり前とも言えるが、そこにキラキラとした恋愛の歌はない。それを求めていたのかと聞かれればそうではない気がするが、かといってこれを求めていたわけでもない。
イヤホンから街を歩く私にささやかな高揚をもたらしてくれた曲達とは明らかに違う今回のアルバムの感触に寂しさを覚えたのは事実だ。
それはおそらく、「曲はいい」からなのだ。
「曲は」、そして鳴らされている音たちは、あの頃の小沢健二をあまりにも思い出させてしまう。
そして彼の音楽家としての正当な進化を感じさせてくれる。
ポップで、キャッチーで、耳障りがよく、それでいてひねくれていて、ユニークで、変な曲たち!
歌い手の楽器としてのポテンシャルを無視してまで音楽的な快感を追求したような曲たちはどれも魅力的だ。
ドライブをしながらアルバムを5周はしただろうか。
私の車のスピーカーがお世辞にも高音質とは言えないせいもあったかもしれない。いつのまにかうるさい歌詞についてはほとんど気にならなくなっていた。そして曲の良さは聴くほどに鮮烈さを増すようにすら感じられた。
歌の下手さについては自分と助手席の彼女の歌声でごまかすことができた。