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どうもこうも
昔々、あるところにどうもという医者とこうもという医者がいた。二人はともに日本一を競う名医であった。そうしていつも、我こそが日本一の名医だと自慢していた。
あるとき、二人はどちらが正真正銘の日本一であるか医療の技術で勝負することになった。二人の勝負を見ようと大勢の人々が集った。どうもはまずこうもの腕を切り落とし、それを繋いでみせた。治療は完璧で、切った跡はまるで残らなかった。拍手喝采である。
「そんなことくらい、俺にもできる」こうもは乱暴な口ぶりでそう言うと、すぐさまどうもの腕を刀で切り落とし、調合した妙薬を使って繋ぎ合わせた。やはり跡は残らず結局勝負はつかなかった。
そこで今度は、首を切り落として繋げることになった。どうもは迷わずこうもの首を切り落とした。流石に観衆の間にもどよめきが走った。しかしこうもの首が繋がるのに時間はかからなかった。完璧に繋がった首を擦りながら「まあ、大した怪我じゃなかったからな」とこうもは言った。当然のことのようにこうももどうもに対して同じことをして観衆を喜ばせた。
しかし、二人の医者は不満だった。こんなことでは、一向に勝負がつかない。どんな病気や怪我の治療も二人にとっては難易度が低すぎるのである。そこで二人は、交互ではなく同時に首を切り落とし、同時に繋ぐという勝負をすることになった。
互いに真剣を握りしめ合図と共に同時に首を切り落とした。
緊張と沈黙、固唾を飲む観衆。
しかし、そこには二人分の死体が転がっているだけだった。二人同時に首を失ったのだから、繋ぐ者がいない。こうして、二人の名医は死んでしまったのである。
さて、これを見ていた観衆は切り離された首を呆然と見つめるだけで何もできなかった。
その頃から、どうにもならないことを「どうもこうも」というようになったと伝えられている。
ー了ー
読んでくださってありがとうございます。実際の民話を私なりの言葉で軽くアレンジしつつ書いてみました。実はこの話を書くのは二度目なのですが、前の原稿を紛失してしまったので新しく書きました。小学生の頃に知ってから何故かずっと惹きつけられているお話です。