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「日本の【中国人】社会」を読んでみた

●ここ数年、住宅地である私の住い近辺で中国語を聞くことが増えた
ここに来て、インバウンドの方々が増え、東京の繁華街に行くと飲食店や街には海外客が目立つことは実感していたが、それよりもっと前から、住宅地を歩いているときに中国語で会話している人たちとすれ違うことが増えたことにずっとどういう現象なのだろう、という疑問を抱いていた。
比較的若い人が多いので留学生だろうかと思っていたが、そうでない人も多い。
また私がこれまで仕事をしてきた派遣先やWEBを学ぶ職業訓練校でも中国籍の人が一定数いて、彼らはもちろん日本語は堪能。ITリテラシーに至っては私よりも数段優れており、長い間東京近郊で暮らす中国人が多いことはうっすらと私の意識下にあった。
そんな思いから手に取った話題の本、「日本の【中国人】社会」中島恵著。
著者は中国、中国人についてのルポルタージュを長年にわたり発表しており、この界隈では著名な方。

●私のこれまでの経験から中国人はどこにでも住んでいるし、仲間意識が強いことはわかっていた
私は40年以上まえからバックパッカーとして世界中を旅してきたが、当時、アフリカの田舎街には和食店などなく、私は旅行中、現地食、マックなどのファストフードに飽きると、醤油が恋しくなり、世界中のどこにでも必ずある中華料理店に行った。その頃はまだ中国ではみな人民服を着ているような時代だったが、本当に中国人は世界中に散らばっていることをありがたく思いながら、ちょっと懐かしい料理で心身癒されたことを思い出す。
またNYの大学で語学留学をしていたときにも中国人留学生がたくさんいたが、彼らはきまって夕食時には同朋の仲間たち数人と鍋を囲んでいた。私たち日本人もグループになってせっかくアメリカに行っているのに日本語ばかり、という思いもあったが、中国人の持つ仲間意識とはまた少し色が違い、彼らの結束の強さにはいつも感心させられていた。
またその後の5年間の台湾生活で中華系の人々の持つ、例えば組織にいるよりも自分で会社を作りたくなるという点やとにかく、とりあえずご馳走をしてもてなしてくれるといった気質のようなものは理解していた。

●見えてくるわかってくる、日本に暮らす中国人の実態
読み進むうち、私の感覚が間違えでなかったことがわかり、またなぜそうなったのか、という裏付けを、取材をもとに解き明かしてくれる。興味深かった点がいくつかありご紹介したい。
まず彼らは今、SNSグループにいくつか属しており、そこで我々日本人が知らない情報をキャッチしているという事実。中国は広く、地域によって料理も言語も異なるため、中国というひとくくりはあるものの、地域ごとのグループ意識も高いらしい。そしてそこでは日本に暮らしているときのちょっとした困りごと、もっと大きな相談、人材紹介なども活発に行われているという。
また大国ならではの競争力で、勉強熱心だし、大変努力するという。中国でトップの大学に進学するのは至難の業。ならば日本で、というケースや、
親が裕福な人が多く、せっかく日本で学んだのだから500万円出すので起業してみたら、というケースも少なくないらしい。
また本書を読んで改めてわかったのは、中国人は焦って結果を出したがる、という点。台湾でも、組織に入ったばかりの私でさえ、もっと準備をしてから独立をしたほうがいいのでは?と思うのに、社長という肩書が欲しいなどという気持ちが先走って会社を興し、結局うまくいかなかった例をいくつも見て来た。

●これからの移民問題についても考えさせられる一冊だった
本書は中国人についてのルポルタージュだが、これから日本の移民問題はどうなっていくのだろう。関東近郊には、パキスタン人、インド人、ブラジル人、ベトナム人が多く住むエリアもある。また私が大好きなタイ料理やタイマッサージの店も多く、そこで働く人々も増えた。介護施設での受け入れも増加している。昔から日本と馴染みの深いフィリピン人は、かつて生活保護施設で働いていたときに、日本人夫との結婚に敗れて行く場所がないフィリピン女性と子どもも多くいた。
異国の人が故郷を離れて暮らすのは容易ではない。
おかげさまで駐在だったこともあり、もちろん本音はわからないけれど、私の肌感覚では、台北とバンコクでの暮らしでは現地の人とも楽しく交流させてもらった。
難しいことだが、その国らしさを失うことがなく、うまく世界と交わっていければいいな、と考えさせられる一冊だった。


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