タイ語の翻訳小説「824 月明かりのロンド」ができるまで⑤
◎タイは乗り物が楽しい
●バイクタクシーは手軽で便利
「824 月明かりのロンド」に登場するタイらしさについて。今回は、モデルのミーナの恋人である真面目な青年、サンタットが毎日乗っているバイクの話題。
東南アジアの光景によくあるように、タイの人々は手軽な足として多くの人がバイクを利用する。残念ながら、若者の事故も絶えないのだけれど。
私はバンコク在住時、「バイタク」と呼ばれる、道端でお客さんを待っているバイクをタクシー代わりとしてよく使った。誰が被ったかわからないヘルメットを手渡され、また、見知らぬ男性の腰のあたりをつかまなければならなず、何より自動車よりも事故にあったときの危険が高いので、バイタクは躊躇する友だちがほとんどだった。が、私は手軽で、車が渋滞していても、すいすいと自動車の脇をすり抜け、目的地まで、わずか数十円で行けることもあるバイタク、随分利用した。
●バイタクは爽快で気持ちがいい
バンコクは暑い。歩いて10分ほどのスーパーまで、徒歩で行くのが厳しいときもある。わざわざタクシーを待って高い料金を払うのも癪だ。そんなとき、バイタクはとても重宝。
小説では、好青年サンタットが好意を抱いているミーナを後部座席に乗せた初めてのデートで、渋滞にはまった、とある。私はさすがに、田舎で乗る以外、長距離にバイタクを使うことはなかった。けれど、身体で風を切るバイクが爽快で気持ちよく、バイタクが大好きだった。バンコクでは近距離を、田舎ではバイタクのお兄ちゃんのガイドでいろいろな場所に連れていってもらった。もちろんスリや事故には気を付けて。
●乳がん闘病中最も恋しかったのがバイタクだった
バンコクで乳がんになり、日常生活もままならなかったとき、1番恋しいと思ったのがバイタクだった。「あぁ、もうバイタクに乗ってふらりと自由気ままに移動することができないのか」と寂しくて情けなくてたまらなくなった。
残念ながら、駐在後半では体力も戻らず、バイタクに乗ることはできなかったが、帰国し、病気が回復したのちタイに遊びに行ったときには、また大好きなバイタクに乗り、爽快感を味わった。
小説では優しいサンタットが、ミーナがバイクに乗る前に、座席をさっときれいにしてあげる、という光景が描かれている。
バイクはいい。
使いまわされているヘルメットを被るのは少々勇気がいるが、タイに行ったらバイタクもおすすめだ。
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