ある地方のビジネスホテルが車メーカーの社員寮に
前職がホテル業界だったため、「ホテル」のニュースはつい目がいってしまう。上毛新聞によると群馬県太田市のビジネスホテル(以下、ビジホ)がスバルの社員寮として運営されるとのこと。
・コロナ禍で経営環境の悪化
・従業員住居の効率化
需給の思わくが一致しているところが面白い。
スバル側は今回のホテル含め3軒を社員寮として契約を進めている。
企業城下町である太田のビジホはスバルと運命を共にすると言っても言い過ぎではないはず。地方都市にはこういったケースがよくある。とある地方都市(人口10万程度)のビジホで店舗運営していた経験から言うと工業都市で中心的な存在である大企業の工場があれば、年間の売上をある程度想定することが可能で、この需要に応えることで安定運営ができる。
自動車メーカーということですそ野は広い。太田駅前に位置するスバル群馬製作所に日参することで宿泊需要も旺盛だったはず。
例えコロナ禍とはいえ、北米向けの輸出が堅調なスバルが存在する以上、需要の落ち込みはそれほどないと想像するが、実際はリモート化が進み、出張需要が激減しているのだろうか。
ここで、太田周辺のビジホ事情を覗くのに楽天トラベルで太田限定で検索すると、ルートイン、東横イン、R9ヤードのホテルチェーン勢と独立系が出てくる。商圏を伊勢崎、桐生、館林まで拡げると、上記チェーンに加えABホテル、APA、セレクトイン、OYOが表示される。中でもルートイン、東横イン、コンテナホテルで急成長中のR9ヤードが3店舗、OYOが2店舗と複数展開。ここ数年で、新規開業も見られたため、『大手ビジホチェーンVS単館独立系』の競争は激化していたはず。
思わくが一致したとはいえ、ビジホの“社員寮化”は果たして旨みはあるのか。
今回記事にあったグレースイン太田(160室)のケース。
あくまでも推定ですが。
1月26日現在すでに販売休止しているが楽天トラベルの価格で素泊まり4,500円。朝食付きで5,500円。価格も変動しているようには見受けられない。そこでADR(税別)を約4,000円、OCC(稼働)を80%と仮定。
・最大年間提供数:160室×365日=58,400室
・想定売上:58,400室×0.8(稼働80%)×4,000円(ADR)=186,880千円
このうち、稼働の想定が大幅に崩れたのだろう。
稼働下落→売上悪化→固定費は変わらず、としたらこのまま倒産の憂き目に合うよりは一旦ホテルの看板を下ろすこともマイナスではないのかもしれない。
社員寮化することで、ホテル側から見ると、
・全館契約で経営も安定
・広告費、送客手数料等が不要で経費が削減
・予約業務やセールス業務が不要で人件費削減
・食事がフル提供となり人員配置転換
等の影響が予想される。
今回の太田のケースは地方でのビジホ経営にヒントを与えてくれる。
全館ではなくとも、一部でも社員寮としての利用をしてもらうだけでも有難いはず。今までの宿泊利用の法人契約に加えて、社員寮として、又期間の多様化(ウィークリー、マンスリー、年間)提案、サブスク利用などが考えられる。
頑張れ、ビジホ業界。