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Char 2020 Mustang part1

※2020年1月2日に公開した記事を加筆修正したものです。

Introduction

2019年9月21日、1964年に続くオリンピックイヤー2020年を見据えてフェンダーとCharさんが組んだChar 2020 Mustangがリリースされました。

波乱のオリンピックイヤーはなんと1年の延期を経て。全く予想しない形になったわけですが、僕らはいつかこの先の未来で「失われた〇年」みたいな表現をするんでしょうか?20年、21年と巣ごもり状態になった世の中でギターは売れたらしいですが、このギターの売れ行きやいかに?

Concept

今回のムスタングをリリースするにあたり、日ごろスペックとかの話に「興味ない」モードを貫いている(笑)Charさんが、けっこうなレベルで詳しく話してくれています。Player誌2020年1月号でのインタビューはかつてないくらいのサービス度だったと言えるのではないでしょうか。

同じく2019年に全国で行われたワークショップ(Zicca Ax Presents : Char Work Shop Tour “SINGING GUITAR 2019”)では、このムスタングを使いながら参加した人とセッションする様子が公開されています。お世話になっている音もだちも多数?出ています^^。検索してみてください。

福岡会場の様子。

この中で語られたコンセプトは、本来の「スチューデントモデル」に立ち返った、初心者でも手に取りやすい「新しいムスタング」をリーズナブルな価格で抑えられるように日本製で、というものでした。同時にオリンピックイヤーの2020年にひっかけて「オリンピックホワイト」というカラーリングについても言及されていました(実際にはムスタングのカラーリングにオリンピックホワイトはなく、白)。話の中で印象的だったのは「次世代が使える(扱える)ムスタング」というところです。

ムスラトかストラングか。ESP Char model

今回の話に至る経緯として語っておくべきなのは、やはり元祖シグニチャーESP Charモデル。

2004年にシンコーミュージックのJapan Vintage誌の企画で、ESP Charモデルについての取材をしましたが、開発当初に関わった人は既に独立され、残っていませんでした。だから細かいところに突っ込み始めると頓挫するんです。残ってる人はわからないし、離れた人は言えない^^;苦しかったですね。

当時はそういうわけで直接お話を聞くことは叶わず、残されている資料をもとに検証していったわけですが、Charさんが開発にあたりお店とやり取りしていたのは、基本的には今と変わらず「ムスラト」「ストラング」、つまりムスタングとストラトの「いいとこどり」を狙ったコンセプトでした。このあたりはJV誌に書いた通りです。古本屋で探してください^^

おさらいがてら書くと、出来上がったESP Charモデルはムスタング寄りのストラト。ムスラト。つまり「ダイナミックビブラートは残し、ロングスケール(25 1/2インチ)を採用する」。ピックアップレイアウトも当初はストラトのフロントとリアの位置取りだったから、ここはストラトに寄せていた。ただ、どうやらCharさんは見た目が気に入らなかったらしく、ダブルスラントのムスタングレイアウトにし(この理由はのちに確認した話です)てから(実質上の2号機:白いCharモデル)使うようになったことで、以後ピックアップはムスタングレイアウトでパワーを上げる方向に移行します(Char IIのビルローレンスL-250やChar IIIのダンカンホットレイルなど)。ご本人は、あくまで見た目(色)重視(笑)だったとのことですが、それでもビルローレンスはクリーンも出るしパワーもあるしで気に入っていたようです。

ストラトではCharさん、ピックアップのパワーがあると使わなくなっちゃうんですよね。長年使ったマスターグレードはかなりパワーが抑えめ。メインのバーガンディもヴィンテージタイプのが採用されているということで。カリズマもたぶんパワーありすぎって感じてるんだと思います。Apple Juiceみたいにパワーコードの曲でしか使わなくなりましたからね^^;。一方太くてもP-90はお気に入りのようで。Funichar(D-616)以降「ミディアムスケール」で作られるようになったCharモデルでは、P-90のようなシングルだけどちょっと太めな音のピックアップが採用されています。

Fender Cyclone

ムスタングシェイプのシンクロナイズドトレモロ搭載といえば、90年代の終わりごろ(1997年)リリースされたサイクロンがあります。当初フェンダーメキシコから発表されました。驚くべきポイントはギブソン(ミディアム)スケール(24 3/4インチ)が採用されていたこと。その昔(1980年代)、ジャパフェン発足時に成毛滋氏がどんなに希望しても許されなかった(らしい)ギブソンスケールが採用されたのは、フェンダーなりの危機感だったのでしょうか?サイクロンはその後何度かモデルチェンジやプロデュースもののような変遷をたどります。Charさん関係では2000年にUSサイクロンというのがフェンダーUSAから発表されました。Charさんには当時のマスタービルダー、アートエスパーザ作のカスタムショップ製2本が提供されます。RIZEのステッカーが貼られるところまでは行きましたが、ライヴで登場することはなかったと思います。

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US cyclone。

ギブソンスケールは、日本人なら成毛氏でなくても希望者は多かったはず。実際、僕だけでなくChar仲間で買った人も少なくありませんでした。ところがいくつかのポイントで引っかかることに。

ひとつめ。ボディの厚みがストラトのまま。重い。当初ものすごく好意的に解釈して、ボディの鳴りをストラト的にする狙いだろう、とか思っていました。今でこそすぐにわかりますが、これはシンクロナイズドトレモロのイナーシャブロックをボディに収めるためには、同じ厚みにしないとはみ出してしまうからですね。最初からこれを手にした人はそうでもないと思うけど、ムスタングから乗り換えた人は違和感があったと思います。

ふたつめ。これが致命的でした。ボリュームの位置が遠い。この点は、今回のリリースにあたり、Charさん自身が言及されています。ムスタングというギターは意外に、というと失礼ですが、やっぱりよく作られていて、ダイナミックトレモロならそのボリュームの位置はギリ遠くないんです。いわゆるボリューム奏法が「やりやすくはない」けど「できなくはない」。当時Charさんは、ムスタングでNice Changesをボリューム奏法を駆使して演奏していました。それをサイクロンでコピーしようとして気づいたんです。あ、このレイアウトでは弾けない。ボリュームの位置がブリッジの位置よりもかなり後ろになるんです。手首が逆に曲がらないと弾けない(笑)。で、やむなくこのギターを手放しました。今回インタビューを読んでCharさん自身がこのことを感じていたと知り、間違っていなかったというか、Charさん自身がライヴで使わなかった理由を想像して、納得したり嬉しかったり(笑)。

改良点。

今回のChar 2020 Mustangは、「ムスラト」「ストラング」コンセプトにフェンダーが答えを出したもの、ということになりますね。今回は「ストラング」、つまりストラト寄りのムスタング。なにより最大の特徴であるダイナミックトレモロが消えている。スチューデントモデルと言いながら、スチューデントがダイナミックビブラートをちゃんと扱えるようになるのは、かなりな経験と根気がいると思うのです^^;。音色的にも、構造的にも使いづらい。結果使わなくなっちゃうためにアームが欠品したヴィンテージの多いこと(笑)。

もうひとつ、Charさんがムスタングを初心者に、という理由として「ボディサイズが日本人に合っているから」と言われていました。ここは納得です。

では、スペック表を見ながら書いてみます。ボディはバスウッド。ムスタングと言えばボディ材はポプラ(オリジナルとジャパンのMG65)ですが、ジャパフェンのムスタングはもともとバスウッドだったので原点回帰的。リリース直後から、いろんな人の印象を聞いていますが、最も多いのは「軽い」というものです。これはボディ材のせいなのか厚みを削っている分なのか?現在では廉価版に採用されているバスウッドですが、80年代はそうでもありませんでした。時代がヴィンテージ志向になるにつれてアルダーが復権し、バスウッドは安くなった感じ。掘削しやすいという話をよく聞きます。塗装はポリウレタン。ポリの一番いいところはギリギリまで薄くできるところ。へんなラッカー塗装よりもはるかにマシという業者さんの話も何度か聞きました。このムスタングはそういう意味でかなり薄めに塗られている(クリアトップコートが薄い)ように思います。

ネックは昨今のフェンダーではよく採用されている9.5インチR。フェンダーは本来7.25インチRなのでややフラット(数字が大きくなるほど指板がフラットになる)。Charizma、Free SpiritsともにこのR。グリップは若干細い印象です。ナット幅はやや狭い41.02ミリ。Charizmaが42ミリだからそれほど狭くはない。一方グリップの丸み(厚み)はいちおうChar's "C"とは記載されているものの、Charizmaより細く感じます。この辺は初心者を意識している感じですね。スケールはムスタングに合わせてショートスケール24インチ(610ミリ)。フレットはヴィンテージタイプの細いもの。ここはこだわりなのでしょうか。

ピックアップはSingle-Coil Mustang。現在のフェンダームスタング標準のもののようです。スイッチはオリジナルのスライド式から3点式のトグルスイッチへ。昔から「スイッチに触って音が出なくなっちゃう」ということで、ミニスイッチにしたり、あれこれやってましたから、ここは必須だったのでしょう。最新のフェンダーアメリカンパフォーマームスタングにもこれが採用されています。スイッチの位置は、コンペティションバーガンディやESP Charモデルではもう少し角の方に寄せていたものの、現在のモデルに合わせているようです。

そして今回の目玉が新開発のシンクロナイズドトレモロ。一見ふつうのユニットですが、イナーシャブロックが通常のストラト用のものより6ミリダウンサイズされている。ムスタングのボディ厚に合わせるとはみ出してしまう本来のブロックをボディ厚に合わせて短くカットしています。通常ちっちゃいやつだったり、ジェフベックモデルみたいに薄いタイプにしたりというところを厚みは替えずに長さだけ切ってあるんです。材質はダイカスト製のようです。キャビティはいわゆるカリズマ彫り(笑)。要はブロックの厚みがあるのでフローティングさせるとキャビティの壁に当たる(ジェフベックはこの部分をブロックを薄くすることで解決している)ので、ここを彫ってある。この彫り方がマスターグレードとカリズマでは違うのでマニアはここの彫り方にこだわるんです(笑)。ふたつめの特徴はサドル。前述のPlayerで公開された特徴は「オリジナルピッチのサドル」でした。いわゆるストラト用のサドルは「材質」と「弦間ピッチ」くらいの差で選んだり気にしなかったりという感じ。音は変わるのでこだわって替える人もあればまったく気にしない人もいます。なんとこのムスタングはこれ専用の弦間ピッチで開発されています。通常は10.8mmピッチと11.2mmピッチなんですが、どうも11ミリ。Playerでは書かれていませんでしたが、ムスタングのサドルピッチに合わせたのか?なんて推測がささやかれています。真相はどうでしょう?

さて。これをふまえて自分好みの味付けをしていきたいと思います。今回Char友だちのご協力を得て、いくつかのアイディアをPart 2で展開してみたいと思います。

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