月と北極星、鳳仙花の花
君は夜に生きている。
見上げれば、寄り添いながらそっとついてくる。君は月のような人。そしていつかは新月のようにいなくなってしまう人。
僕は昼に生きている。
だけど君の太陽にすらなれないねって言ったら
君は笑いながらこう言ったんだ。
太陽になれないのなら北極星になってね。
いつでも私が迷わないよう、目印になるように。
そう言って君は照れ隠しに島唄を歌うんだ。
「ゆるはらす ふにや にぬふぁぶし みぃあてぃ」(夜漕いでいる 船は 北極星が目印)
「わんなちぇる うやや わんどぅ みぃあてぃ」(私を産んだ 両親は 私が目印)
悲しくて美しい倍音は南の海のように優しく揺れて。僕の鼓膜の舟を揺らす。君はとても歌がうまいね。
もしも、本当に僕が君の北極星になれたらとして星の光だったなら、僕は何光年も前から君と会うことを約束していたことになるのかな。
だけど、君はいつかは帰ってしまう人。感情が満ちる度に君といられる時間が欠けてゆく。
群れる星々の中で君が歌うたった一つの北極星。
いつか見た映画の台詞を今、君に伝えたい。
この広い世界の片隅に僕を見つけてくれてありがとう。