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政策論集2 役職「定年期」制

 まず最初に断っておくが、この提案は比較的大きな組織(大企業か公共機関)などを前提としている。
 「役職定年制」というものがあるらしい。
 一定の年齢に達したらマネジメントからは外れるというものである。
 組織の新陳代謝をはかり、高くなりすぎた給料を下げるためとのことらしい。
 そして、年金制度の都合から定年の延長が努力義務になる中では、この役職定年制をいよいよ公共機関でも導入する可能性が出てきており、企業でも導入ケースが増えそうである。
 しかしながら、これと日本企業特有の「マネジメント層になるために10年単位の長い期間かけて能力評価を行う」というシステムが重なると、最悪の結果を招く。
 それは、若年から中年までの間に病気などによって一度躓くと事実上マネジメント職になる期間が短縮され、それどころか上位のマネジメント層になる機会を失い、その状態で定年延長された期間延々と働くことになるということである。
 となるとどうなるかというと、一度躓いた人間はかなり早い段階から仕事のモチベーションが落ちた状態が発生する可能性が高くなる。
 そのうえ、中途採用で遅めの段階でその組織でのキャリアをスタートさせる場合や、晩婚化による遅めの時期での出産などでマネジメント層にこれからなるという段階で仕事以外にエネルギーを割かなければならなくなる状況が発生するなどといった理由でも出世が遅れるということは十分ありうる。(出産に関してはそのような扱いを禁止するという方法もあるが、そうなるとずっと独身を貫いて人生のより多くのエネルギーを仕事に割き、組織にとって都合のいいタイミングで使われるコマとなったやつと比較して不平等となる)
 となると、定年延長性と組み合わせて解決する方法としては、「役職定年制」はあまりなじまないことになる。
 そこで私は、「役職定年期制」を提案する。
 これは、「マネジメント層になってからの年数」によって定年と同じ要領でマネジメント層から降りるという仕組みである。
 たとえば、「管理職になってから15年」「上位の管理職になってから5年」といった具合である。
 この制度の利点として
 ① 中高年になってからのチャレンジがしやすくなり、モチベーションが維持できる
 ② 組織の新陳代謝が図れる。(なにも新陳代謝で新しく入ってくるものの年齢が若い必要は必ずしもない。)
 ③ 管理職の年功序列による給料削減を避けられる。
 ④ 比較的高齢の段階で中途採用した人材にもある程度の能力査定の機関を設けてから管理職にすることができる。
 ⑤ 早い段階で役職から定年で降りた人で、年下の人間が扱いかねる人材(つまり若い管理職の言うことを聴かない元役職者)に対し、出世が遅いがために年齢が高い管理職を当てるという選択肢が生じる。
 などの利点がある。
 さらに、この制度が広がった場合、以下のような利点も加わる。
 ⑤ 早い段階で役職定年期制によって役職定年になった人材が不満を覚えた場合、「役職定年が早すぎた」(=有能なので出世が早すぎた)という堂々たる肩書を得て転職活動ができる。

 一方、欠点としては、役職定年制と比べて社員の履歴を長期にわたって管理しなければならないという欠点があるが、年金制度に不信感が漂う原因となった紙による長期的履歴管理をしていた時代ならいざ知らず、現在のテクノロジーであれば十分に可能である。

 「公平で誰も取り残さない社会」のために、特に公共機関においては、「役職定年制」ではなく「役職定年期制」を取り入れるべしと提案するものである。