『 ITエンジニアのための「人生戦略」の教科書』を読んで。
『 ITエンジニアのための「人生戦略」の教科書 ~技術を武器に、充実した人生を送るための「ビジネス」と「マインドセット」~』
著:平城寿 著
マイナビ出版
2023年1月20日読了。
■読んだ目的
・著者である平城さんが海外ノマドになった経緯と秘訣(要点)を知りたい
・プログラミングで独立するための最短コースを知りたい
・どのように開発技術を得て、アピールして、仕事を取ってくるのかを知りたい
■感想
人生が変わるほどではないにしても、自分にとって非常に大きい実入りがある1冊になった。
平城さんが紆余曲折多くの経験をしてきていること、初期はインフラをがっつりやっていたことなどはインパクトがあった。
平城さんの、行動開始タイミングが非常に早く、そして結果を出すまでの期間も非常に短いのに驚かされる。
学生の頃から既に「大きく稼ぐ」という明確な意思があるのも凄いし、迷っているような回り道もほとんどない。
失敗経験も公開されていたが、それぞれの失敗が失敗に感じられない。
例えて言えば、成功への道につながるドアが複数あって、それを順番に開けてみる(=トライしていっている)ような印象。
失敗経験も成功までの道から外れていなくて、確実に糧になるような道を踏んでいるようだ。
自分を振り返ると、
大学での魔法文化の研究やカフェレストランでのアルバイト、バンド時代、介護時代、旅人時代と色んな経験をしてきているが、
そのどれもが「お金を稼ぐ」という目的に合致しない。
お金を稼ぐという目的であれば、どれも絶対に選ばない選択肢だ。
それというのも、自分は幼少期から長い間、
「幸せとはお金を稼ぐことではない」
「お金に執着すると生き方に余裕がなくなり、人と揉めたり、人を恨んだり喧嘩することが増え、見た目の言動も醜くなる」
という認識を強く持っていたから。
(なお今は「そうとも限らない」と考えている。)
おそらくこれはうちや身近な家庭状況を見て育ってきた経緯から醸成されたものなのだろう。
一体どのタイミング、どういう理由からマインドに差が出来たのか。
平城さんの幼少期の環境が気になった。
本書について重箱の隅をつつけば、
各章や項のタイトルが煽情的な割に文章の中身自体は若干ズレていたりする。ごく若干。
また、文章がこまめな改行なしに書かれていたり、同じ内容が他の章で複数回登場したりするため、
文章に長さ、重さを感じる。
ただ、それでもエピソードが面白いのでほとんど気にならない。
本人の半生を通しての実経験が元になっているため、
ビジネス書や自己啓発書のようなカテゴリーに該当すると思われるが、
小説のようなストーリーとして読んでも面白い。
■読書メモ
■Total Chapter 人生設計を考える
エンジニアが独立起業するための4つのステップが明確で参考にしやすい。
■Chapter1 会社に依存しないマインドセット
ステージ1:本業[正社員]+副業[受託案件]
〇1-3 ひたすら牙を磨く
★まだ誰もやっていないことを自ら先行し、独自の分野を開拓することで成功のチャンスが生まれる
→これは「独立のためには武器を用意すること」
「ブルーオーシャンを目指すこと」と要約できる。
〇1-4 勉強するな、アウトプットせよ!
・資格取得のための勉強は必要か?
→国家資格に受からないとそもそもその仕事に就けない職業ならともかく、独立起業して成功したいと考えるのであれば資格取得のための勉強はいらない、というのが著者の持論。
→シンプルだが、明確な一言だ。
今の自分はSES企業に在籍しているため、資格取得が大きなメリットになる立場にいるが、独立が主目的となった段階では資格取得を捨て去る決意が必要になる。
自分は資格取得のための勉強によって体系的な知識を得ることが出来ることには大きな意義を感じているため、意見を異にする。
個人的には「効率のいい学習方法の一つとしての資格勉強 + 実践として手を動かしてアウトプットする」という形式が最も理解と知識を身につけて成長するのに良いと考えている。
これに関してもやはり「目的」が違うからこの思考の違いが生まれているのだろう。
自分の目的は「学び」や「成長」であり、
平城さんの目的は「稼ぐこと」なのである。
目的を「稼いで成功する」に据えるのであれば、資格勉強はしないというのが最適解に違いない。
→耳が痛い。いかんせん自分は勉強がとにかく楽しく、生産活動が後回しになりがちだ。ここが自分が変われるかどうかの分水嶺であり、起点でもある。
■Chapter2 独立起業に必要なマインドセット
→この章は独立起業に関する基本的な考え方。
■Chapter3 一生食えるようになるマネープラン
ステージ1:本業[正社員]+副業[受託案件]
〇3-1 我々は、「安定的に」搾取されている⁉
・第1の搾取 経営者からの搾取:内部留保
・第2の搾取 できない社員からの搾取
・第3の搾取 業界からの搾取:業界の給与水準
→資本主義の仕組みと企業経営の仕組みからしてその通り。
第3の搾取として、業界の給与水準というものを取りあげた視点はなかなか興味深い。
本来の資本主義の形であれば、業界よりも給与水準を下げれば競争力は上がり、また逆に給与水準を上げれば、GAFAMのように優秀な人材を獲得できて有利だ。
結果はこの2点の境目で給与水準は落ち着く面はある。
その陰で、日本の給与水準が他の先進国と比較して低く、かつ業界内で横並びとなっている要因として、ある意味で日本らしい、共助や「出る杭は打たれる」社会である片鱗が見て取れる。
起業家精神が日本で育たないのは、社会的な生育環境が大きいだろう。
落合陽一さんの主張する、日本人は"欧米"の真似をしないでアジア人としてのメンタリティを踏まえた生き方、社会づくりをしていく考え方を盛り込んで考えたいところだが、
アメリカ式資本主義が展開されている現代日本社会では理想論になってしまう。
どのように平城さん的なビジネス思考、起業家マインドを若いうちに獲得・発揮できるか、その教育方法や社会構築という面も別途考えていきたい。
〇3-3 ”平城式”独立の方程式
・残業代が100%出る会社で稼げるだけ稼ぐ
・副業して収入を増やす
・徹底的に節約する
→ロバート・キヨサキがいうように、「結局みんな運動せず食事制限せずにダイエットをしようとするから痩せない。金持ちになるためにやるべきことから逃げていたら金持ちにはなれない」という主張の通りだ。
大きく稼ぐという目標を達成するためには、助走として仕事を増やしたり徹底的に節約するアクションが必須となる。
さらに言えば、それはほぼ間違いなく、家族を持つ前に達成しないといけないものである。
家族を持った上で残業や副業のためにオフの時間を全力投入することは家庭円満の妨げになってしまう。
如何に20代など若いうちにこれをできるか。
消費の誘惑、作られた「幸福の形」が容赦なく洗脳してくる都会やSNSほど、その邪魔をするだろう。
■Chapter4 ビジネス思考に転換する
ステージ2:本業[受注型フリーランス]+副業[受託案件]
〇4-4 「マネーファースト」という考え方
これをやったら確実にお金になると思うことをやる。お金になるやり方を選んでやる。
→これに尽きると言えよう。
■Chapter5 稼ぎを倍増するための営業戦略
ステージ2:本業[受注型フリーランス]+副業[受託案件]
〇5-2 稼げるエンジニアになるための近道とは?
→技術を追求するのが好きであり性でもあるエンジニアがこのマインドを獲得するのは心理的ハードルが大きい。
〇5-3 顧客から絶大な信頼を得て仕事を獲得する3つのルール
・ゼロベースで顧客の立場に立って考える -顧客志向
・「できない」は死を意味する -「できない」と言わない
・相談された仕事は必ず受ける -顧客の期待に応え続ける
→これはビジネスの上で、常に心に留めおきたい。
自分はビジネスにおける対等関係やワークライフバランスを重視しているが、Win-Win関係を持続的に「向上」させていくためには、「生産価値 += 1」が必要となる。
そのために、無理する必要がどこかで出てくるだろう。
■Chapter6 主導権を握るための顧客対応術
〇6-3 見積の極意[実践編]
→この項の鉄則やノウハウはそのまま役に立つだろう。
この場での公開は控える。
■Chapter7 自由の羽根を手に入れろ!自社ビジネスモデル構築
ステージ3:本業[受託案件]+副業[自社ビジネス(B2C)]
〇7-5 「狩猟型」のビジネスと「農耕型」のビジネス
農耕型ビジネスの典型、「サーバビジネスのビジネスモデル」
→レンタルサーバビジネスが当たり前にある現代においてサービスの開発を踏まえてサーバビジネスをする、という具体的なモデルケースをもっと知りたい。
これはアンテナを張っていこう。
■Chapter8 自社ビジネス専業で長く成功するための意識改革
ステージ4:自社ビジネス専業
〇8-1 お金の稼ぎ方と遣い方の意識改革
→「勉強するな」の言い換えと受け止める。
→技術をある程度身につけた後に、その技術から卒業しビジネスへとシフトチェンジすべしということだ。守破離の概念にも半分共通する。
以上