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第六十二話 いざ、バリ島へ


 日本の中古フェリーに乗り、ジャワ島からバリ島へと向かう。船には乗客の他に、車や動物、食べ物も運び込まれる。
船の上ではバリ人達と仲良くなり、食べ物を分けてもらう。バリの人も親切だなぁ。
 
 どれくらいの時間が経過した頃だろうか?暫くすると皆の動きが慌しくなる。
そうか。いよいよ、あのバリ島へと到着するのか。僕も荷物をまとめ、下船の準備をする。
 
さあ、遂にバリ島へと到着だ。
 
 フェリーが港に着くと、まずは車から上陸。そして車も降り切らないうちに、人々も下船する。野菜や果物、そしてアヒルなども下りていく。そして僕も上陸する。
 
おや?なんだろう?
何かが違う。何かがおかしい。
空気が違う。
 
直ぐに、今までの島とは違うという感覚に気づく。
 
確かにマレーシアからインドネシアに入った時も違和感あったけど、これはまた、全然違う。

今まで色々な島々に上陸してきたが、ここバリ島はそれとはまた別の独特な空気を持っている。島が独特な空気に囲まれている。

良い悪いなどは何とも言えないが、何か大きな力を感じる。この島に着いてから、僕の方向感覚というか、センサーが壊れたように、何か大きなものが邪魔をする。
 
何とも言えない得体の知れないものを感じながら、僕は乗り合いタクシーに乗り込み、街へと向かいました。
最初に目指した場所は、先輩のサーファー達がよく話していた場所、「クタ」。

途中の車から見える景色は、田んぼに案山子など日本の田舎景色のそれとよく似てる。どこか懐かしい感じがする(と言っても僕は東京生まれ東京育ち、父方の先祖も江戸からずっという東京という事で田舎が無く、田んぼが広がる景色自体がもの珍しいのですが)。
 
クタに近づくにつれ車も増え、道路も混雑してくる。今までの田んぼばかりの田舎道と違い、沢山の観光客、そして店、物売り、大きなホテルもあり都会的だ。

僕はバックパックを背負い、まずは安宿を探す。海岸沿いで出会ったオージーのサーファーが海沿いに良い宿があると海帰りに案内してもらう。確かになかなか良い感じだ。先ずは今日の宿は、ここで決定。
 
船で出会ったバリ人とこの辺りのバリ人は違い、何というか擦れてる。観光客慣れしている。
そんな感じのせいか、僕はここの空気には馴染めなかった。
 取り敢えずはバリ島に着いたとの事で、先ずはビーチ沿いを散歩すると「全部1000円」という道の物売りと、「ミチュアミ(みつあみ)」とか「マニキア」と言ってるおばちゃん達がいる。この手の押し売りは他の国と大差ないんだなあ。
 
他の国と比らべると、簡単に引き下がってしまうので、逆に対して面白くない。
 
なので僕は逆に彼ら、彼女らに積極的に話し掛け、現地の情報や、彼らの生活などを聞く。

しかし彼らも生活があるので、商売にならない相手とみるとすぐに次へと行ってしまう。面白くない。。
 
僕はここで日本語がとても上手な一人のバリ人の青年に出会う。
現地では「ビーチボーイ」「ジゴロ」と言われていた連中だ。
お互いに対してやる事なのないので、僕らは、日に日に仲良くなる。
中でもBMXっぽい自転車に乗っていた「マデ」と言うコとは非常に仲良くなり、彼の家にまで案内される。
 
「どう?この家、日本の友達に買ってもらったんだよ。」
 
「マジで?!これ、自分の家?」
 
「そう。両親の家も、もうすぐ別に建つんだけどね。ちょっと待って、写真があるんだよ。」
 
そう言って、彼は自分の部屋から「日本の友達」というコの写真を持ってくる。
 
「これはこの前来た、友達。これは来月くる友達。それでこれがその友達が送ってくれた手紙。」
 
「ちょっと待て!これ、全部女のコじゃん!?友達?」
 
「うん、友達ね。でも、このコとは結婚するかもしれない。日本で凄くお金持ち。それで僕も日本に住むかもしれないんだ。」
 
なるほど、彼らはこうやって生計を立てているのか。全員で10人くらい。しかも彼は年間スケジュールを立てまくっていて、それぞれ他のコとの予定が重ならないように、上手くスケジュールを組んでいる。
そのウチ6人から仕送りまでしてもらってるという。
一人につき最大で月6万円(日本のある大手企業に勤めるOL)の送金をしてもらっていて、それが6人なのだから、なかなかだ。
この金額がバリ島での価格となったら、一体彼は幾ら稼いでいるんだろう。
 
「稼ぎ方、教えて下さい。」
と僕。
 
「え?だって君は日本人じゃない。日本で働けば、直ぐでしょ?」
 
「家建てるなんて無理だよ。無理無理。絶対に無理」
 
「そうなの?それよりこれから昨日会った日本人の女のコ達を会う約束をしてるんだ。一緒に行かない?」
 
「ぜひ行きましょう。マデ先生。」
 僕はガシッとマデと握手をする。

「先生は何?なんで先生?」
 
「いや…なんとなく…」
 
浅野さんと別れ、インドネシアに来てから、考えてみたら一度も日本人と会ってない!
ここクタで、久しぶりに日本人と会う事となったのでした。

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