第二十四話 サイヤ人の戦い
当時の写真が見当たらないので、見つかり次第、写真を入れ替えていきます。
さて、話しは戻って、レイク インレーより。
早朝、すごい物音で目が覚める。何かを叩く大きな音。
それがずっと続くのです。
「何だ?一体?」
非常に悪い目覚め。
僕は無理やり起こされたその音の真相を確かめようと、部屋の扉を開ける。
「誰だよ!?騒いでいるのは。。?」
眠そうな眼で廊下を確かめる。
すると廊下には昨晩、不機嫌そうだったユダヤ人の彼が、鬼の形相である扉を「殴る」「蹴る」していたのです。
僕に気づく彼。彼の表情はまさに修羅そのもの。
僕はそのままそっと扉を閉める。
(鍵もかける)
「なんだ今のは??!」
「どうしたの?」
武三くんが蚊帳の中から、眠そうな顔を出す。
「武三くん、ヤバい!起きた方がいいよ!ヤバいって!まじでヤバい!完全にべジータだよ!サイヤ人が暴れてる!ヤバいって!」
ヤバいしか言ってない僕を見て、何を言ってるんだろう?という怪訝そうな表情をする武三くん。
再び蚊帳の中に戻り、寝てしまう。
僕も一歩たりとも外には出れない状況なので、テラスで音楽を聴いている。
「いつ出れるんだろうか?」
よく状況が飲み込めない。
音楽も耳に入ってこない。
しかし一時間以上も続くその音。テラスから隣のイタリア人と話す。
「廊下のあれ?知ってるよね?」
と僕。
「勿論」
と頷く、彼。
「どうする?」
と僕。
「困ったよね」
と呆れるイタリア人。
暫くすると、今度は大人しくなるどころか、激しさを増す。
ドカッ!ガン!ボコッ(ボコッ??)!ガツン!!ドーン!!
僕は再び、恐る恐る扉を開ける。すると扉を叩いていた彼と、なんとあの例の帰ってきていなかったもう一人のユダヤ人とが、殴り合いの喧嘩をしているのです!
狭い廊下で激しい殴りあい。(カカロットとべジータだ!)
壁にぶつかり血を流す。すると今度は階段を組み合いながら、転がっていく(ここは二階)。
戦いは一階のホテルのレセプション前へと移る。
武術をやっていた僕にはすごく興味深かったのですが、これは最早、実践の戦い方。戦地での戦い方。
レベルが違う。凄まじい。
流石、軍人は違う。
血まみれで殴りあう。
もう一時間以上殴りあっている。掴んで、投げて、マウントポジション。それを跳ね返して、また殴り合い。
少し疲れたのか、その場で座りながら、口げんかになる。(現代ヘブライ語なので、よく分らない)
その日の朝、到着し、ホテルに泊まりにきた欧米のカップルも、レセプションに近づけず、バックパックを背負ったまま呆然と立ち尽くす。
お互いに少し回復したのか、再び、殴り合いが始まる。勿論、こんな戦いは誰も止められない。壊れるホテルの備品。従業員もただ、ただ見守る。僕も階段に座り込み、戦いの終わるのを待つ。
再び長時間の戦い。その後、口げんかになり、二人は別々の方向に分かれる。(ようやく終わった。。)
しばらくすると夜まで帰りを待っていた彼は先に荷物をまとめ、出て行く。お金の支払いはしていないけど、もう誰にも止められない。
「お前とはこれっきりだ!」たぶんこんな言葉を残し、何故か船を借り、自分で漕いでどこかへ行ってしまった。ガンジャマンは船に乗る彼に罵声を浴びせる。
いやー、イスラエルという国の強さがわかる気がする。そんな激しい戦いでした。
そんな朝からのトラブルの後、ホテルも平穏な空気を取り戻す。そして僕は、もう一人のユダヤ人、ガンジャマンと一緒に街を探索する。(事の真相も知りたくて)
「なんであんな争いに?」
と、いきなり聞く僕。
市場で買ったブドウをビニールから取り出すガンジャマン。
大きな口を開け、房ごとブドウを口に入れる。ブチブチッと房のみ口から出し、皮ごとムシャムシャと、全部食べてしまうガンジャマン(豪快だなあ。。)。
モゴモゴしながら口を開くガンジャマン。
「あいつ、俺が朝起きなかったせいでバスに間に合わなかったと、言いがかりをつけてきやがるんだ。」
「(いや、それは言いがかりではなく、事実では。。。?)そうか。それで喧嘩になったんだ?」
しかし離れた部屋でも物音で起きた僕らや、他の観光客。しかしその扉を叩かれていた張本人は、目が覚めなかったってすごい。
「あんな奴は、もうどうでもいい。」と彼。
「しかし昨晩はどうして帰ってこなかったの?」と聞く僕。
実は彼、ガンジャ採集に馬に乗り山まで出かけたのは良いのですが、山で馬に逃げられたとの事で(昨日は国境警備隊でラクダも馬も俺には問題ないと豪語していたのですが)、そこから一人歩いて帰ってきたとの事でした。そしてホテルに到着したのは明け方の三時過ぎ。
「あのバカが。。」
馬に八つ当たりも始めるガンジャマン。
あながち間違いではない。
「馬鹿」って日本語だと、「馬」と「鹿」だしね。
僕はそんなガンジャマンを見送った後(彼もその日の午後にバスでどこかへ去っていきました)、武三くんと自転車を借り郊外へ行こうと話しに。ちょっと足を伸ばし、気分転換でもという事になりました。
僕は、彼の様な豪快な性格の人間が好きで、結構仲良くなったりするんですよね。
僕はドラッグもやらないし、吸わないけど、どうにも規格外の行動する人間達とは仲良くなりがちだった。
まあ、それのせいで、面倒な事もありますが。
さて、僕らはそんなわけで、自転車を借りる。
しかしこれが日本の大昔の自転車のように、ギアが重い。重すぎる…。
何はともあれ、それでインレーを出て、ひたすら外へ外へと向かったのでした。馬だと逃げられちゃうしね。
そして今度は、観光では絶対に見る事ないであろう場面に遭遇する事になるのでした。