眠れない!

不眠に悩んでいる。非常につらい。
不眠といっても、睡眠導入剤などを用いて寝ることはできるので、私は恵まれている方だ。しかし今まで眠りに関してなんの悩みも抱かなかった人生で、初めてそれに直面し困惑しているのは紛れもない。

夜寝れなくなったのは、一人暮らしをはじめてしばらくした頃だった。もともと、真っ暗でかつ全くの静寂の中でしか基本的に寝れない性分で、眠りに関して繊細な方ではあったと思うが、4時や5時になっても、どこかの住人の生活音や外でトラックが走る音、エアコンが外気温との差で鳴らす「パキ」という音で「ウワァ!!!」と驚いてしまい、せっかく手繰り寄せたわずかな眠りの端をみすみす逃すというのはなかなか精神にくるものがある。

そして、眠れなくなると「今日は眠れるだろうか」という不安まで抱くことになってしまう。「今日は外に出て1日活動したから、流石に眠れるだろう」とたかを括っていると、やはり眠れないという結果に「クソ!!!!」と苛立ってしまい、余計に眠れなくなるという悪循環まで背負うことになる。

そういうわけで、最近はほとんど睡眠薬に頼りきりで、むしろこれがより自然な眠気を妨げているんじゃないか?という気づきを避けつつ常用しているわけだが、この睡眠薬がくせ者で、服薬してしばらくすると視界が溶けるように歪み幻覚が見える。他の睡眠薬を飲んだことがないので、もしかしたらこれが睡眠薬というものなのかもしれない。基本的には部屋にあるものが妖精のように魂を持って踊っているように見える。この薬の特徴なのか、私が思いのほか意識外にメルヘンな世界を持っているからなのかはわからない。加えて、服用したあとは奇行をしてしまう上に記憶が翌朝朧げにしか残っていない。以前友人と泊まった際にも服用したのだが、「昨日なんかが見えるって喋り出して怖かったよ」と言われ、私はそんな記憶はあるがそれは夢だと思っていたので戦慄した。また、寝る時毎回服用するとなれば大量に必要になってくるわけで、出費もかさむ。ずっと飲み続けるわけにはいかないので、なんとか自然に眠りにつきたいがどうしてもかなわないので泣く泣く服用しているという現状である。

「夜 寝れない」と調べると、「うつ」と出てくる。「お!うつだ!」と思い、ああこれはうつなんだ、最近そういえば気分も落ち込んでいるし、食欲もないし、昔からこういうことはよくあるし、俺はうつなんだ!正直もって、自分がなにかしらの障害を持っている可能性に少しばかりほっとした。

しかし本当にうつなのか?うつを軽く見積りすぎではないか?「ツレがウツになりまして」では、うつ病と診断された堺雅人が繰り返し風呂場で自殺を図り、宮崎あおい(二階堂ふみかもしれない)が必死に止めていた場面が印象的だ(しかもちょっと鬱が治ってきたというときにするので、かなりハラハラして「見せたい客層に見せていいもんじゃねえだろ」と思った)。

私は自殺しようとなどしない。確かに消えたいとかどこかにいきたいとかは思うが、それは誰しもが抱く願いだ。「死にたいわけじゃないけど、明日が永遠に来なければいい」という主旨のツイートいっつもバズってるし。とにかく私は「私はうつです」と宣える可能性を閉ざされたのだ。

いやいや、困る。マジでうつじゃないと困る。だってうつじゃなかったら、俺は病気でもないのに家から出れなくてバイトも飛び、「明るくなれるかもしれない」と考えて突然髪を赤色に染めだすただの頭のおかしい奴になってしまうではないか。それで人生でなにも成し遂げられず、死に際に「人生でなにを頑張りました?」と冥界の番人に質問され、「ああ、えと、ウェブライターとかしてました」と言って地獄に突き落とされるに違いない。とにかくこんなことになって、うつじゃなかったら困るのだ。うつの人には申し訳ないが、俺にも俺の事情がある。一端の焦りを持ちながら、近くの心療内科を検索した。

「『私みたいな人が行ってもいいのかな?』『こんなに軽いのに行っていいのかしら?』と感じたら、一度受診してみてください。そういう方がたくさんいらっしゃいます。」一番近い心療内科にあった文言である。

助かった!まさに今の私だ!とりあえず行ってみてもいいんじゃないか!勇気を出して電話をかけた。

「はい、〇〇クリニックです」
「あ、ちょっとみてもらいたいんですけど、初めてなんですけど」
「はい、どのような症状ですか?」
「夜寝れなくて、、、」このとき泣いてしまった。というか電話をかけた時点でほぼ泣いていたのだが。
「ウゥッ!辛くてェ!外に出れなくてェ!ッスね。」
自分の辛さについて、しっかりと言葉に出したことがなかったので、「私は今自分が辛いということを、人にしゃべっている」という事実に半ば驚いて、そして自分が泣いているという事実にもう一度驚いたような形で、かなりキショい泣き方をしてしまった。電話口の女性が
「ウン、ウン、そうですかァ」
と、慰めるように相槌を打ってくれた。
そして
「今予約の関係で、早くても1月の診療となってしまいそうなんですが...いいですか?」と言われた。

は?いいわけねえだろ。今俺は藁にもすがる思いで電話をかけたのに。俺は知らない番号は全て自動的に着拒するアプリをインストールするほどには電話が嫌いだ。そんな俺が、自ら電話することを選択し、さらには初めて話す相手に「自分は辛いんです」と訴えるという羞恥の極みを舐めたにも関わらず、俺を切り捨てるというのか。

「ちょっと確認してまた電話します」
と言って電話を切った。マジでなんなんだよ。ふざけんなよ。てか心療内科の予約が来年までいっぱいなの日本終わってんだろ。イーロンマスクのせいか?もっと心療内科作れよ。医者を増やせよ。ていうか、「頭がいい受験生が一番偏差値の高い学部を選ぶと必然的に医学部になってしまう」みたいな問題って、別に自分で選んでんだからいいだろ。東大医学部で恋人に子供堕ろさせたのって河野玄人か水上颯かどっち?うつじゃねえわこれ。

良い睡眠法とかあったら教えてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?