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藤井聡太と井山裕太


〜人間とAI〜


 あたりまえのことなのだが、NHK将棋・囲碁の準々決勝での解説を聞いて
棋士たちが人間とAIのちがいを理解して勝負していることに思いを馳せた。

 将棋は藤井と佐藤康光九段の戦いで、解説者は永瀬九段である。
佐藤の手番で銀が戻った。永瀬は驚く。意味がわからないと。しばらく考えて、この銀の一手は、おそらく藤井もわからないと思う。しかし佐藤はこれしかないと判断した。永瀬の解説である。「これは世代のちがいです。佐藤さんの時代には、このようにかたちを重視して指してきた。藤井さんや私たちは意味のあるかないかを考えます。佐藤さんは将棋とはこうあるべきものという鍛錬を同世代の人たちと積み重ねてきた。」AIも活用している世代とAIを知らなかった世代の生み出すものはなんであるのか。

藤井の打ち方が最近変わっていると永瀬はいう。

 昨年の伊藤匠との叡王戦で藤井聡太がAIメソッドを使わないことがあった。藤井の強さは、終盤の読みの正確さである。しかし、藤井はそれでは面白くないと考えたのではないか。将棋に必要なのは構想力であり、ダイナミズムを味わうことである。むしろAIに対立する考えが必要ですらある。藤井はそのことをずっと考えてきた。人間は、いつも決められたルートに従うことには耐えられないので、違うルートを試してみる。たとえそれが失敗でも、新しいことに挑戦する。それが人間の生き方だから。

 囲碁の準々決勝は一力遼NHK選手権杯者と井山裕太王座の戦いである。解説者は三村智保九段である。序盤から井山は一力を攻めさせる展開となる。
井山の読みが鋭く一力の攻めは上手くいかない。盤面で五分であり、白番の井山が優勢に進めている。中盤から終盤に至るところで、AIがある手を打てと示すが、両者とも全く違うところをうち続ける。
解説者の三村が説明する。「AIが示すところを井山が打てば勝負は決まります。しかし、そのAIの手は王道ではありません。棋士たちは勝ち負け以上に王道をいくことを考えています。」なるほど、当たり前のことに改めて気付かされました。


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