生きること、学ぶこと
英語ができるようになりたい人のために
言語脳学者の酒井邦嘉の英語を習得する方法「勉強しないで身につく英語」を読む。
これまでも英語習得について、渡部正和、勝又美智雄、今井むつみを読んできたが、酒井を含め言語習得のための共通していることがあるので、それを整理した。
schemaから学ぶ英語とは
https://note.com/ron870/n/nf677d1360780
global人材教育に英語は必須ではない?
https://note.com/ron870/n/n1cf040169eeb
使える英語を身につける方法
https://note.com/ron870/n/ndf65089a1403
日本人は本当に英語が下手なのか?
https://note.com/ron870/n/ncc8ee5f8f6ab
その1
語学習得は、いわゆる学校教科で習う「勉強」方法によっては習得できない。
数学や社会の教科などとは違い、論理的思考などによって脳で理解して学ぶものではない。言語は行儀作法と同じでどんなに教わってもだめ。自分で身に付けることである。反復練習によって覚える音楽、sportsと同じ方法でしか身につかない。
基本は教わるのではなく身につけるということである。
「学習者中心の学びである。自分の能力を引き出す学びであり、自分で学んでいける能力をつけることにある。英語の3要素はmotivation、正確さ、流暢さであるがこの3つは関係性があって、そのbalanceを維持しながら成長しなければ上達しない。目標はnativeに違和感のない英語である。」(渡部)
その2
文脈から学ぶということが大切である。
「英語習得は、「ことばの意味」「文法」の学びに偏っていて一番大切な要素である「文脈」での理解をこれまでの英語教育では全くと言っていいほど無視してきた。この「文脈」で考えるということが何より大切である。」(渡部)
「sceneに応じて話すこと(すなわち聴くこと)の戦略を覚える。例えば、議論というsceneではpostulation, hypothesize, extrapolate, speculationが基本的なtipsになる。」(同)
「外国人には、これが一番難しいschemaである。母国語の人は、「文脈」によって判断する。「文脈」による判断とは、本当に難しい。でもhintはある。対象に関して個別のことを言いたいのか、その集合体のことを言いたいのかを考える。とはいえ、defaultで決まっているものもある。」(今井)
「単語ではなく文で考えることが何よりも重要。全体を把握することが最初であり、意味などわからなくてもいい。いずれわかるだろうと楽しむ気持ちがないと上手くならない。」(酒井)
その3
音声を聴くことが始めとなる。
英語の文章や文法から学ぶことは自然言語の習得に反する。酒井や今井らの言語学者は脳には生得的な言語習得能力があることを研究している。脳は最初に音声を理解して、単語、文章、意味などの理解に繋げていく。
「私たち人間は、推論によって知識を自分で増殖していく力がある。子供は大人に母語を教わらないでも、自分の力で学習できる。analogyを使うとき、それまで蓄積した知識を使う。この知識は記憶として存在しているというよりも意識下にある。schemaである。言語習得のために、schemaは鍵となる。」(今井)
「音楽の演奏技法において、音の形を整え、音と音のつながりに様々な強弱や表情をつけることで旋律などを区分するArticulationやphrasingが英語習得に必要です。」(酒井)
その4
Nativeの音声の学び方は?
英語は母国語ではないので、nativeから学ぶ必要がある。その教材が音楽や映画やnativeの話す諸々の素材になる。
「大切なことは、1はアクセントの位置、2は母音の質、3は文のリズムである。」(酒井)
「翻訳しないでその言語で考える。その言語脳を作ること。look forward reading/ listening 常に先を想像してきくこと。わからない単語や言葉で止まらないこと、」(渡部)
「音読に慣れる、英語2-3行を10秒で音読できること。Abraham Lincolnのa few appropriate remarks 270語を3分でLincolnは読む。このspeedで話せないとnativeは聴けない。さらには、話す主張を持つ人間になっていること。英語は最初の2.3文が重要なので、そこに集中すること。日本語に訳さないこと。」(勝又)
その5
好きな素材を繰り返して聴く方法、さらには覚えた文章を文脈に応じて意識して使う方法を試すと良い。
好きな英語の音楽は大体覚えてしまう。その時に、日本語の意味など考えないで歌っている。英語脳が働いている状況である。好きな芝居や映画を観ると気になる言い回しを覚える。その文章、言い回しを使えるようになると、文法などを意識内でもnativeの文法ができるようになっている。理屈で考えている限りはまだ身についていない。
いろいろな調査によっても、日本人は英語が上手くないことは確かであろう。2つの要因が議論されてきた。始めるのが遅いこと。「入試英語」という英語があること。
酒井はいつ始めるかは重要ではない、という。脳にはmulti言語習得の機能があるので、環境があれば最初から複数の母語を覚えるのが良い。
一方、「入試英語」だけは百害あって一利なしと言う。中学から「入試英語」を始めて6年間の時間を使い、たった数日の入試が終わると無用になる。そこから、nativeに通用する英語を身につけるのはものすごいenergyが必要になる。6年間の「入試英語」の弊害が大きい。難解な単語を覚えたり、ほとんど使わない構文や文法を覚えたりしたことを脳は記憶する。
渡部、勝又、今井、酒井4氏の教えは毎日実践していて楽しい。
因みに、今の素材はHarry Potterである。