前から乗るバス
結婚式に呼ばれた。
招待状に書かれた会場は東京だった。
迷ったけれど、行くことにした。
日帰りではとても行けない、遠い街だ。
Googleマップで会場を調べて、東京の郊外に住む兄の家に泊めてもらうことにした。
はるばるたどり着いた兄の家の最寄駅は、深夜だと言うのに沢山人がいた。
22時をすぎて、コンビニのレジが3台体制かつ列に並ぶなんてことは、私の町ではありえなかった。
人の多さに面食らいながら、迎えに来てくれた兄にならってバスに乗る。
前から乗って、先にお金を払って、後ろの扉から降りる。
わ、東京だ。
話には聞いていたけれど、前払い制のバスに新鮮な驚きを感じた。
交通系ICカードでそつなく乗れた。
交通系ICカードは田舎者の味方だ。
よく分からない乗り物も、大抵これをかざせば乗れる。
いくら払ったのかもよく分からないまま、バスは出発した。
細い道を、大きな車がなかなかのスピードで往来する。
バスに乗る兄の横顔は、まるで知らない人のようだった。
暗闇を進んだバスは、私たちを目的地で解放し、静かな住宅街に溶けていった。
ロン204.